横浜中華街通りから右に入ると
坂を上がり、暗いところまで来た。朝方であるが
栃木県日光から運転をしたクルルはクタクタだ。
建物の間から見える
紫に近い雲を見上げて、サーフィーは声を上げた。
「都会の空は狭いね〜。だけど、綺麗だ!」
「日光も中々だろ。けどまぁ、ここは都会か。」
クルルは坂の上から見える中華街を覗いて言った。
下では赤い中華を感じさせる橋が
日に照らされてオレンジ色に輝いている。
川もキラキラとしていて美しかった。
神聖さを感じて、息を呑んだほどであったが
目の前に依頼者の家が見え始めた。
洋式の家でとても綺麗である。
清潔と言えば清潔。
庭も整っていてハーブを植えていた。
手紙の溜まったポストが印象的で
すぐに目に止まった。
クルルは車を停車すると、家の前に行き
手紙をすべて叩き出した。
ゴッという鈍い音を立てて
雪崩のように手紙やらなにやらが出てくると
サーフィーも急いで降りて
それらを腕の中にぎっしりと詰めた。
鍵は空いていたのでタックルをして
家に侵入すると「はぁ〜」と息を吐いて
腰を掛ける。
「多いー!何書いてるの?これ。」
「気になるなら開けてみろ。」
「わかったぁ。」
手紙を開いて開けてみると仰天。
恨みや妬みがギッシリと詰まっていた。
どの手紙もそうだ。しかも、一定の人物である。
そして、どれにも「後悔」というサインが
ロシア語で書かれている。
本名は書いていない。
この摩訶不思議なサインなんか霊に聞くしか
方法なんてないだろう。
クルルは霊に見せつけて言った。
「こりゃなんです。
сожалеть(後悔)だなんて…」
「…分からない?誰かも分からないのですか?!」
どうやら慌て始めて
クルルは手紙をすべて写真を撮った。
裏面にあるアルファベットも撮ると
(これは後にしようか)
と手紙を端に退けると、部屋に侵入をする。
部屋はとても綺麗で血一つない事件現場。
サーフィーは見渡して言う。
「やっぱ掃除されてるか。かなり前なのに
ホコリがないって…怪しいなぁ。」
「そうだな。それに、なにか匂いがする。
酸っぱい匂いだ。まるで大麻のような…」
言いかけてクルルは止まった。
サーフィーも体制を低くして
床をよく見る。
「…粉状のヘロインだ。若干臭うと思ったら…」
「とんでもねぇ!棚がギッシリだ…」
ヘロイン詰め放題かよとクルルは呆れた。
サーフィーは不思議そうな顔をしてこう言う。
「一時的に気持ちよくなるよねぇ〜これ。」
「けど切れたらとんでもないほど苦しいらしい。
………最悪、死に至るってね。」
「お前、殺人じゃないとか言うんじゃないだろうな?」
「自殺だと思うよ?」
「死んでも尚、注射したいのかなぁ。」
後ろを振り返り
カッと睨みつけた。
「法律で一度でも使えばアウトだって定められてる。
それに、分かるよ〜薬物に溺れたい気持ちは。
けどさ…それやったら試合終了じゃない?」
「クルルの言った体の異臭はヘロインだ。
説明つくし辻褄が合うね。」
「麻薬及び向精神薬取締法なんかもある。」
そう言うと霊は震えだし
姿を現した。髪の短い女で頭を抱えて
ブツブツと呟いている。
「薬…あれがないと私は……あぁ…薬薬薬薬」
震える手でサーフィーの服の裾を掴んだ。
「薬をぐれぇぇぇぇ?!」
「床でも舐めてろ!!現実から目を背けるな!」
「グガァァァァァ」
女は叫ぶと
体が粉々になり風の前の塵に同じく消え去った。
サーフィーは全てのことをなしたような
晴れやかな笑顔で「帰ろう!」と言った。
すると、クルルは首を横に振って
こんな怖いことを告げたのだ。
コメント
13件