『痛みを負った心には愛の癒しを』〜愛情は特効薬〜
第11錠 暖かい灯火のような
『昨日は楽しかったな…。ラムリと星を見て、ナックと屋敷を探検して。色んな話をしたり…。』
私は昼過ぎに屋敷の庭を散歩していた。
すると、どこからか美しい音色が聞こえる。
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『この音……。ヴァイオリン?』
(なんて綺麗…。)
私はその音に導かれるように屋敷に戻った。
『……。』
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ギィィ…。
『あ、あの人が弾いて……。』
真っ暗な部屋の中、いくつもの蝋燭の灯火が
その人を照らしていた。まるで、夜の中月の
演奏者のようだ。
『…ふぅ。おや?誰か来たのかな?』
『っ!あ、えと…』
『その声は…もしかして主様かな?
今灯りをつけるね。』
パチッ。
『暗くて驚かせてしまったかな。』
『う、ううん…。』
(ツギハギ…?)
その人の顔にツギハギがある。
『私の名前はミヤジといいます。この屋敷のマナー指導と音楽担当をしているよ。よろしくね、主様。』
『う、うん。』
『おっと、怖がらせてしまったかな?
この顔の傷は…昔色々あってね。気にしないでくれ。』
『怖くないよ、むしろ私の方が…包帯だらけで怖いよね。』
『……。』
(この方がルカスとベリアンが言っていた…。)
そっと主様の頬に触れる。
『!』
ぴくんっと身体が跳ねる。
『……主様は確か男性恐怖症…だったかな?大丈夫…なのかい?』
『…ここの屋敷の人はみんな優しいって分かったから。怖くないよ。』
『そうか…急に触れて済まなかった。
少しでも安心出来るようにと…。』
『ううん。いいんだよ。ルカスに治療してもらって薬も飲んでるから。』
『っ、主様。その腕の傷…。』
『あ、これは…。』
(もしかして、ラトくんと同じ自傷の…。)
『気にしないで。これは…生きてる証だから。』
『……っ。』
(ラトくんと同じことを…。)
『生きてるっていう…実感が欲しかったの。私はずっとあの檻に閉じ込められて……。死ぬ物だと思っていたから。』
『主様…。』
私はぎゅっと主様を抱きしめた。
『もう…そんなことさせないから。ここにいれば何も怖いことは無いからね。』
『ミヤジ…うん。ありがとう。』
一方その頃。部屋のドアの外。
『ミヤジ先生と…あの方が主様ですか。…ふふ。私と似たような香りがします。話すのが楽しみですね。』
次回
第12錠 漂う恐怖と親近感
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