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『痛みを負った心には愛の癒しを』〜愛情は特効薬〜
第12錠 漂う恐怖と親近感
『……。』
夜の庭で散歩をしていた。
夜は好きだ。真っ暗な闇の中。暗い私をそのまま飲み込んでくれるから。
ガサッ
『っ!誰…!』
『おや、すみません。驚かせてしまいましたか?』
現れたのはピンクの長い髪に三つ編みをして包帯を巻いた執事。
『ラト・バッカと申します。初めまして、主様。』
ニコニコと屈託なく笑うその笑顔に…不気味を覚えた。
『は、初めまして。』
『……。その包帯、貴方も私と同じく自傷を?』
『ど、どうして…。』
『ふふ、私も傷だらけなのです。腕だけではなく…ここも。ここも。この心も。』
『っ…。貴方も私と同じく誰かに…?』
『……えぇ。まぁもう何十年も昔の話ですよ。』
『……。』
(こういう時、なんて声をかければいいかなんて私には分からない。だけどひとつ言えるのは…。)
ギュッ。
私はラトを抱き締めた。
『…どうかしましたか?』
『…ううん。ただこうしたくなったの。』
一人にしては行けない。それだけ。
『ラトは…こんな夜に何してたの?』
『あぁ…私はパセリを食べに。』
『ぱ、せり?』
『えぇ。私はパセリが好きなんです。あそこの畑で採集を。』
『パセリが好きなんて珍しいね。』
『えぇ。毎日パセリしか食べません。』
『えぇ!?流石にそれは栄養が偏るよ。』
『ロノ君もミヤジ先生も同じことを言ってましたね。』
『それはそうだよ……。』
『ふふ、分かりました。主様がそう言うなら気を付けます。』
『そうして。』
ひゅ〜。
『っ、寒…。』
『風が出てきましたね。そろそろ戻りましょうか。』
『そうだね。』
私とラトは屋敷へ戻る。
『部屋まで送りますね。眠れなければ読み聞かせしましょうか?』
『だ、大丈夫だよ。』
『そうですか、フフ、残念です。』
『おやすみなさいませ、主様。』
ふぁさっ。
私をベットに寝かせ、毛布をかけてくれた。
『ありがとう、ラト。』
『えぇ。』
『すぅ、すぅ…。』
『……。』
(私と同じ…。ですか。いいえ。貴方の方が私よりは清いですよ。私は…過去に沢山罪を犯しましたから。)
『…このままずっとこの世界にいてください。帰らせません。貴方を傷付ける世界には。』
主様をぎゅっと抱きしめた。
次回
第13錠 綺麗に着飾りたい