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賢者「行ってきます!
えと、今日はどこに行くんでしたっけ?」
レノックス「まだ誰も踏み入ったことがない地です。
何があるか分からないので…
賢者様、俺から離れないでください」
賢者「分かりました!
では、ファウスト、レノックス、よろしくお願いします!」
ファウスト「ああ」
レノックス「はい」
賢者「だいぶ奥の方まで来ましたね…」
レノックス「そうですね…
賢者様、大丈夫ですか?」
賢者「はい、私は大丈夫です」
ファウスト「レノ、僕はあっちを見てくる」
レノックス「ファウスト様、単独で動くのは危ないかと…」
ファウスト「僕は大丈夫だ、賢者を頼む」
レノックス「…分かりました」
賢者「あれ?ファウストは…」
レノックス「あっちを見てくると…」
賢者「大丈夫でしょうか…?」
レノックス「恐らく…
…少し見てきてもよろしいですか?」
賢者「はい、私も心配なので…
お願いします。」
レノックス「申し訳ありません、すぐに戻ります」
賢者(…ファウスト、大丈夫だったかな…)
とんとん
賢者「わっ!」
???「うわあっ…びっくりした…」
賢者「(子供?!)ごめんね驚かせちゃった…
どうしたの?迷子?」
???「…道、分からなくなっちゃった…」
賢者「そっかそっか、怖かったよね…
もう大丈夫だよ、一緒に帰り道を探そう!」
???「うん…!」
賢者(とはいえ、私もここのことは分からない…
レノックス、ごめんなさい…)
レノックス「…ファウスト様!」
ファウスト「…レノ?!
お前、こんなところで何をしているんだ」
レノックス「ファウスト様のことが心配で…
賢者様にはすぐ戻るとお伝えしています」
ファウスト「…すまなかった
だが、賢者を1人にするのは危険だ、早く戻るぞ」
レノックス「はい」
賢者「…うーん…だいぶ歩いたはずだけど…」
(帰り道、わからない…)
???「おねーさん、大丈夫…?」
賢者「(だめだ…)うん!大丈夫だよ」
???「わっ、おねーさんみて!」
賢者「うん?…わあ!綺麗なお花だね」
(この森にこんな場所が…)
???「ねえおねーさん来て!みてみて」
賢者「ちょっと待って!危ないよっ…
捕まえた…!」
???「おねーさん、捕まえた」
賢者「え…?っ、いたっ…」
ファウスト「レノ、賢者は?」
レノックス「先ほどまでこちらにいらしたのですが…」
ファウスト「…賢者の気配が消えている…
レノ、探すぞ」
レノックス「はい、全力で」
賢者「?!」
(体が小さくなってる?!)
???「初めまして、賢者様
僕の名前はノス」
賢者「あなた何者…?!」
ノス「あははっ、賢者様、さっきまで頼もしいおねーさんだったのに
小さくなっちゃって、可哀想だね
…僕も魔法使いみたいなものかな?
血を媒介としておねーさんの体を借りたよ」
賢者(…吸血鬼みたい…)
「っ、私の体を返して!」
ノス「ムリだよ〜!おねーさんに何ができるの?
そのちっさい体で、魔力も持たないくせに」
賢者「…っ」
ノス「とりあえず、騒がれるとめんどくさいから大人しくしてね」
賢者「…っ、やめ…」
ノス「アローン」
賢者「…!」
(喋れなくなった?!)
ノス「じゃあ、おやすみ。おねーさん」
賢者「…っ」
(だめだ…意識がっ…)
ファウスト「賢者ー!」
レノックス「賢者様」
ファウスト「…賢者?賢者の気配が…」
ノス「2人とも!勝手にいなくなってごめんなさい…」
ファウスト「賢者!無事だったのか?」
レノックス「賢者様!」
ノス「はい、大丈夫です!」
ファウスト「では、今日はこの辺で魔法舎に戻ろう、特に危険そうな場所もなかった」
レノックス「分かりました、賢者様も戻りましょう」
ノス「はい!」
アーサー「賢者様!レノックス、ファウスト、おかえりなさい」
レノックス「戻りました」
ノス「ただいま戻りました〜」
ファウスト「アーサー、調査に行ってきたが、特に危険そうな場所は見当たらなかった」
アーサー「そうか…
では今週中に報告書をまとめて、上にあげておこう」
ノス(…この男は、アーサー
ふわふわがファウスト、黒髪がレノックス…)
アーサー「…賢者様、何かありましたか?」
ノス「あっ、いえ!大丈夫です」
ネロ「おーい、晩飯できてるぞ」
アーサー「ネロ!すぐに行く」
ノス(水色の髪がネロ…)
「ありがとうございます、すぐに行きますね!」
ブラッドリー「おお、今日は鹿のソテーか、美味そうじゃねえか」
ネロ「当たり前だろ、冷めないうちに早く食え」
ノス「…
(なんだこれ…いい匂いがするけど…)」
アーサー「賢者様?どうかされましたか?」
ノス「あっ、いえ、なんでも」
ネロ「んじゃ、いただきます」
ノス「(いただきますってなんだ?何の儀式だ…)
…いただきます」
ネロ「どーだ?賢者さん」
ノス「あっ、美味しいです!」
ネロ「ははっ、そうだろ」
アーサー「…」
賢者(…ってて…、?
うわっ、そうだった…ここどこ…)
(暗くて不気味だな…)
「 (…?あそこ、何か光ってる…?
怖いけど、行ってみるしかない…)
(わあっ…!綺麗な花達…
そうだ、さっきノス…と、一緒に見に来たっけ…)
(レノックスとファウストは…
多分、ノスと魔法舎に帰ったのかな…)
(この花…食べられるかな)
(お腹は空いたけど食べられるものはなさそうだし…
花の蜜くらいなら害はないかも)
ノス(飯は無事に終わったけど…
僕の部屋はどこ…)
アーサー「賢者様?お部屋の前でどうされたのですか?」
ノス「あ、ごめんなさい、少しぼーっとしてしまって」
アーサー「お疲れかもしれません、今日はゆっくり休んでください」
ノス「ありがとうございます、おやすみなさい」
(ここが僕の部屋、ってことだな…)
賢者「…もうすっかり夜…
うっ…寒い…」
「月が…眩しいな」
「明日は帰り道を探して…
とにかく、みんなのところに戻らなきゃ」
カイン「賢者様!おはよう!起きてるか?」
…
カイン「賢者様?(こんなに寝る人だっただろうか…)」
「賢者様、開けるぞ」
「賢者様…?」
ノス「あ…おはようございます」
カイン「大丈夫か?ぼーっとしてたようだが」
ノス「大丈夫です。ごめんなさい、すぐ支度しますね」
(…部屋から眺める朝って、こんないいものなんだな…)
賢者(…ん…
あれ、いつの間に…)
(晴れてる…よかった、雨は降らなさそう…」)
(はあ…
ごめんなさい、少しだけ蜜をくださいね…)
…
「 (よし、少しは動けそう)
(ひたすらに道を探すしかないよね…)
カイン「うわっ、オーエン」
オーエン「…なに」
カイン「それ…またミスラとやり合ってきたのか?」
オーエン「別になんだっていいでしょ、もしかして心配してくれてるの?」
カイン「そりゃ心配くらい…」
オーエン「ふーん、騎士様は優しいね
そういう偽善も大好きだよ」
カイン「お前な…」
ノス(…なんだあいつ…
急に現れたかと思えば…)
オーエン「なに?賢者様」
ノス「あっ、いえ、すみません」
オーエン「僕の血、綺麗でしょ
媒介にはさせないけど」
ノス「あはは、そうですね…」
(なんだこいつ)
アーサー「オーエン、賢者様には刺激が強い。とりあえず手当てを…」
オーエン「ちっ、面白くない
手当てなんか自分でできるからいい」
カイン「あっ、オーエン!」
「ごめんな、賢者様」
アーサー「賢者様、大丈夫でしたか?」
賢者「大丈夫ですよ」
アーサー「…」
(賢者様、やっぱり何かおかしい
こんな光景を平然と…)
「カイン、少し話がある、いいか?」
カイン「どうした?」
賢者(…っはあ…
おかしい…
絶対に一周したはずなのに…
見知った道が一向に出てこない…)
「…っ、(泣きそう、だめだ…
泣いてる場合じゃない…)」
(絶対に帰らなきゃ…
…ん…?)
(これ…
私がいつも着てるベストのボタン…?)
(もしかして、この道が…)
バサバサッとカラスが飛んでいく
(もう陽が落ち始めてる…
だめだ、動かずにこの辺りで休まないと…)
帰れなくなる、私はそう直感した
カイン「賢者様が賢者様じゃない…?
どういうことだ、アーサー様」
アーサー「分からないが恐らく…
いつもの行動から、なにか違和感を感じる…
恐らく、あれは賢者様じゃない」
カイン「中身が何者かに入れ替わってるってことか?」
アーサー「ああ…
となると…
考えたくはないが、本物の賢者様も今、魂が何か他の生き物に憑依しているはずだ」
カイン「つまり…」
アーサー「かなり危険な状態かもしれない」
カイン「…っ、すぐに探しに行かないと…」
アーサー「ある程度の場所の目星はついているが…
無闇に飛び込んでは私達も無力となるだけだ」
カイン「じゃあどうすれば…」
アーサー「明日、私があいつと話し合う。
何かあればカインに協力を頼みたい。」
カイン「…分かった、もちろん、協力するさ」
賢者(…朝だ…)
(よかった、ボタンもある…)
(この道を進まなきゃ…)
ネロ「今日はエッグベネディクトだ」
ノス「わあ、美味しそうですね」
…
(あいつは、無事なんだろうか…)
(っ…いやいや、こんなこと考えるな
せっかく手に入った自由の身だ…)
(…にしても、こいつの飯、美味いな…)
賢者「…っは…はあ…」
(この道だ…!)
(帰らなきゃ…っ)
アーサー「今日も魔法舎は平和だな…
賢者様の件を除いては…」
「ん?」
賢者(やっとここまで来れた…)
(…!アーサー…!)
アーサー「子供…
この辺りでは見ない顔だな、どうしたんだ?」
賢者(…っ、声が…でない…)
アーサー「…もしかして、喋れないのか?
よく見ると、ボロボロだな…」
賢者(うんうんうんそうです!!!
さすがアーサー!!!)
(あ…!あれはわたし!!!)
ノス「アーサー…、!!」
(こいつっ…なんでここまで…!)
賢者(私の体を返して!!!
※というふうに目で訴えています)
ノス「っ…」
アーサー「この子、喋れないみたいなんです。
にしても、かなり賢者様が気になってるみたいですね」
ノス「あはは…
なんですかね…」
賢者(…っ、ベストのボタン…)
アーサー「…これ…」
ノス「!!!」
アーサー「…賢者様。
貴方に剣を突きつけるなど以ての外ですが…
重々承知の上、尋ねます」
ノス「…」
硬い金属の音と共に、鋭い銀色の光が目の前を通り過ぎていく
アーサー「お前は何者だ、名を名乗れ」
賢者(…!)
ノス(…ここで終わりか…)
「僕の名前はノスだよ」
アーサー「…
賢者様の体を返せ」
ノス「やだ」
アーサー「では、戦うしかないようですね」
アーサーに目配せされたのを感じる
(賢者様、少し後ろに下がっていてください)
目は笑っていたが、禍々しい雰囲気を感じた…
アーサー「…パルノクタン・ニクスジオ」
ノス「アローン」
アーサー「賢者様!
…安心してください、なるべく傷をつけないように戦いました。
今は少し気を失っているだけです」
賢者「…っ」
声は出なかったが、視界が歪んでいくのを感じた
アーサー「…賢者様、気づくのが遅くなり申し訳ありません。
こんなにボロボロになるまで
1人で戦ってくださって、帰ってきてくださり、ありがとうございます…」
「賢者様は、よく頑張りました」
賢者「…っ」
アーサーの言葉にほっとして、大粒の涙が流れた
正直、このまま帰れないんじゃないか…
そんな考えばかりだった
小さい体をアーサーにぎゅっと抱きしめられながら
私も小さな体で強く抱きしめた
アーサー「パルノクタン・ニクスジオ」
賢者「っへ…あ、声…!」
アーサー「声が出るようにと…
あとは、少しですが綺麗に…」
賢者「ほんとだ…
ありがとうございます、アーサー」
アーサー「どういたしまして。
では…
ノス、賢者様に体を返してくれるか」
ノス「…」
賢者「わっ」
アーサー「よかった…
賢者様、おかえりなさい」
賢者「ただいま…アーサー」
アーサー「カイン、少しの間賢者様を頼めるか?」
カイン「ああ。賢者様、こっちに」
アーサー「ノス、何故こんなことを」
ノス「お前たちみたいに、裕福な暮らしをしてるヤツらにはわかんないだろーね」
アーサー「…?」
ノス「あの賢者様と、ファウスト、レノックスがあそこの森に来た日
絶好のチャンスだと思った」
「あの森に捨てられて…
それからずっとひとりぼっちだった」
「何年かぶりに、人の気配がした」
「あそこに綺麗な花が育ってんだけど、捨てられてからはずっとそれを心の拠り所にしてたんだよ」
「俺の体も…
ほとんどそれでできてる。」
「だから…
ここに来てからこんな美味い飯があるんだって初めて知ったし
部屋の窓から見る外はあんなにも綺麗なんだって」
「…まあ、結局それをあの賢者様を誘導するために使ったんだけど。」
アーサー「…
私は、お前の気持ち全部は分からない」
「だが、私も幼い頃に捨てられた」
ノス「…ふーん」
アーサー「それからは、オズ様という方とずっと一緒に過ごしてきた…
オズ様と一緒に食べるご飯、見た景色
全部が美味しくて、綺麗で、嬉しかったんだ」
「だから、お前の気持ちもすこしは分かる。」
ノス「…で、何が言いたいの」
アーサー「…あの森を、必ず発展させる。
ひとりぼっちなんてことが、無くなるように」
ノス「…っ、ふーん
バカみたい。
…まあでも、そんなに言うなら頑張ってよね」
アーサー「…ああ、私も遊びに行きたい。」
賢者「っ…ノス!待ってください!」
ノス「っ、なに、次から次へと…」
ぎゅっと、賢者の体温がノスに伝わっていく
ノス「っ…、ちょっと、軽々しく触らないでよ」
賢者「…もう、ひとりぼっちじゃないです。
また、遊びに行きます」
ノス「…」
賢者「あの、綺麗な花、見せてくれてありがとう。
他にも色んなところ、案内してくださいね」
ノス「…偽善っぽいけど、嫌いじゃないよ
またね、賢者様」
賢者「うん…またね」
アーサー「…にしても、賢者様
本当にお優しい方ですね」
カイン「だな…
優しいというかもはや寛容すぎるな…
オーエンなら容赦なくやってるとこだ…」
オーエン「なに?僕の悪口?」
カイン「うわっ」
賢者「…ふふ」
数年後
アーサーの言った通り、あの森は発展していた
賢者「…!ノス!」
ノス「賢者様…
あんた、また来たんだな」
賢者「もちろん、また遊びに行きますって言いましたから。」
ノス「ほんと偽善っぽい…。
着いてこないと、置いてくよ」