side若井
元貴がお風呂から上がってくる。ドライヤーしたての髪はサラサラとしていて、ダボついてるTシャツに短パン姿というとてもラフな格好だ。
元貴「若井はお風呂使う?」
若井「いやっ家で入ってきたから大丈夫。」
そうと元貴は言うと、水を飲みに行く。
話し方や態度はいつも通り。違うのは触れてきてくれないということだけ。
今度いつ元貴とオフが被るかなんて分からない。
このままの状態だと俺たちはダメになっちゃう。
今日でどうにかしないと。
今思えばこの時の俺は、元貴の気持ちを知ろうとせず、ただ前みたいに触れ合いたいという気持ちだけが先行していたように思う。
俺はキッチンにいる元貴に後ろから抱きつく。
元貴はビクッとして体を固まらせる。
元貴「……どした?若井?」
引きつった顔をして問いかけてくる元貴を正面から抱きしめる。
いつもの流れでそのままキスしようと、顔を近づかせると元貴が俺の胸をぐいと押す。
元貴「ごめん疲れてるから。」
もう幾度となく聞いたセリフに俺は少しイライラしてくる。
若井「いつもそればっかじゃん。明日はオフなんだし、今日くらい…ね? 」
俺は元貴の腰に手を伸ばし、太ももを撫でる。
すると、元貴は嫌悪感を帯びた目で、俺を睨みパシッと手を跳ねのける。
元貴「お前もしつこいな!疲れてるって言ってんじゃん!!」
強めの言葉で責められ、俺も今まで我慢していた不満が溢れ出す。
若井「はぁ?しつこいって何??俺と元貴は恋人同士だろ?触れ合いたいって思って何が悪い??」
売り言葉に買い言葉で言い返すと、元貴ははぁ〜と溜息ついて前髪をかきあげる。
元貴「……はぁ…だる…。」
元貴の態度に俺の堪忍袋の緒は切れた。
若井「お前いい加減にしろよ!」
俺は元貴の肩をつかみ、壁に押し付ける。
元貴「いった…。大きい声出さないでよ。」
若井「…っごめん。でも元貴何か思うことがあるなら教えて欲しい。俺たちこのままじゃダメになる。」
俺は冷静になろうと心を落ち着かせる。喧嘩したい訳じゃない、俺は元貴と話をしたいだけ。
元貴「…お前にはわからないよ。僕の気持ちなんて。」
元貴は吐き捨てる様にそう言った。
”お前にはわからない”と一言で俺の気持ちは、完全に切り捨てられた。
なんでこうなっちゃったんだろう。大好きな元貴と楽しく過ごすはずだったのに。
こんな事になるなら、今日だって我慢するべきだったんだ。
情けないながらも、俺は両目から涙を流していた。
それをみた元貴はバツが悪そうに目線を逸らす。
そうやってまた見て見ぬふりをするんだね。もういいや、疲れちゃった。
俺は荷物を取り、玄関へ向かう。
元貴「…どこ行くの。この後雨降るし、もう暗いよ?」
後ろから着いてくる元貴。なんで優しくしてくるの。冷たい態度取ってきたのはそっちなのに。
若井「別に元貴には関係ないでしょ。」
そういって部屋を出る。ドアを閉める時に元貴の悲しそうな表情が見えた。
真夜中の街はとても静かで、世界に俺1人だけのような気分がする。
俺は行く宛も無く、ぼーっと歩いていた。
するとぽつぽつと水滴が額に落ちる。そしてすぐにザーーッと雨が降り注ぐ。元貴の言っていた通りだ。
傘を持たない俺はずぶ濡れになるが、そんな事を気にする気持ちの余裕はなかった。
雨に打たれながら歩いていると、後ろから聞き覚えのある声がする。
藤澤「若井…?ねぇ若井でしょ?どうしたの…ってずぶ濡れじゃん!!」
涼ちゃんが俺に駆け寄ってくる。心底驚いた様子で目を見開いてる。
若井「ちょっと散歩してたら降られた。」
藤澤「散歩ってこんな夜中に?」
訝しげに涼ちゃんに見られると落ち着かない。
俺が黙っていると涼ちゃんに手を取られる。
藤澤「まぁいいや。若井僕んち来て!着替えるよ。」
そういえばここら辺だっけ涼ちゃんの家。
俺は涼ちゃんの傘に入れてもらい、涼ちゃんの家でお風呂に入らせて貰う事になった。
コメント
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ただ大森さんと触れ合って幸せな時間を過ごしたかった若井さんが辛いなぁ……若井さんが泣いてるところをみても何も言わない大森さん…何を考えていることやら… 心が疲れ切っている中で優しい涼ちゃん登場…!!二人が家で何を話すのか…楽しみすぎる~~~!!
よくあるすれ違いと言えばそうなんでしょうけど…これは大森さんが頑張ってもらわないと… 言わなければ分からないものね〜… 若井さんは藤澤さんの優しさに甘えちゃうかな?