いつも同じような日々だった親の言うことを聞いて育ってきた。
逆らったりなんてしたこと無かったし親に対して『嫌だ』なんて言ったこと無かった。
別に親が怖いとかじゃなく、ただ親の言うことに逆らう必要がないと思っていたから。
だから親の言う通りに過ごしてきた。『レウ君はこの軍部学校に行くんだよ。』
『レウ君は軍部学校に行くんだからこれを毎日欠かさずやるんだよ』
『レウ君はいつも頑張ってるね、じゃあ次は勉強をしようか。軍に入ったら資料を
しないといけないからね』『レウ君勉強で分からないところがあったら図書館に行って
自分で調べるんだよ』『レウ君この軍部学校に行けて良かったわ頑張ってね』
『レウ君寮に行ってもお母さん達が考えたトレーニング欠かさないのよ』
『レウ君はいいこだからきっと出来るわよね』
ずっと従ってきた。トレーニングだって欠かさなかった。そのおかげで体が強くなったから。
勉強だってずっとしてきた。そのおかげで分からないところが無かったから。
でも、俺に友達は出来なかった。俺は異端だったらしい。人には無い身体能力
鍛え上げられた肉体。人には無い広範囲の戦闘専門的知識、
俺の全ては軍に入ることのだめだけにあった。だから誰とも仲良くなれなかった。
みんなが好む物が分からなかったから。人とまともに喋ることも出来なかった。
教わらなかったから。『はい』しかいったこと無かった俺は『いいえ』『分からない』
が言えなかった。だからよく虐められた。でもそんなに痛くなかった。手を出されても
あっちが勝手に殴って勝手に痛がってるし、『大丈夫?』って聞けば去っていく。
だから気にしてなかった。暴言吐かれても俺は元々自己肯定感が低いから
『そうなんだよね』って言えば去っていく。
だから次第には誰も近づいて来なくなった。勉強とトレーニングをするだけの日々。
いつも通りだった。卒業まであと2年。1年が過ぎて2年生になった。
この学校は3年の3月で終わり。あとは軍に入るだけ。
2年生になってから1年生の時に有名だった4人と同じクラスになった。
4人は問題児指定されていて1年の時に問題を起こした人達だ。
先生からは厄介者扱いされていたけれけど、生徒からは尊敬されていた。
彼らの名前はらっだぁ、緑色、金豚きょー、コンタミと言った。
彼らは異種族で人より圧倒的に強く、高い身体能力を誇っていた。
強い彼らは最初は皆から遠ざけられていたが、1年生の時の全クラス合同チーム対抗模擬戦で
圧倒的戦力差を見せ、生徒を圧倒した。
その次の日から彼らは『4種族の鉄壁』と呼ばれるようになった。
俺も彼らの連携プレーを見ていたが1番目に着いたのは実力ではなく、
彼らの楽しそうな顔だった。
どうしてあんなに楽しそうに戦ってるんだろうって思うばかりで俺には分からなかった。
でも、少しだけ羨ましかった。
あんなに楽しそうに戦う彼らが、、、、、。
俺もあんなふうに笑いながら楽しく戦えたらな、、、、
いいなぁ、、、、、、。
そう言えば今日は模擬戦だっけ、、、個人の、、 、はぁ、、、
また誰も組んでくれないよ、、今日も見学かな。
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「ねぇ、君。」
「はい?」
「模擬戦、、、しないの?」
話しかけてきてくれたのはあのらっだぁさん。びっくりして顔に出しちゃったけど
まぁ大丈夫だろう。
「組んでくれる人が居ないんで。」
「じゃあ俺とやろうよ!俺今フリーなんだぁ。暇だからさ」
「あ、じゃあ、、、、、」
《おっ!レウクラウド!やるのか!》
「はい。らっだぁ君が対戦相手してくれるので、、、」
《らっだぁか!強いが頑張れ!》
「はい」
《ではいくぞ!よーい、、、始め!!》
この模擬戦のルールは簡単。武器を相手の手から落とした方が勝ち。
もっと簡単に言えば、武器を地面に落としたら負けだ。
どこから来るのかな。あ、右
「、、、、、、、、ここだぁ!!」
その場から消えたかと思えば、いきなり攻撃を仕掛けて来たらっだぁは、レウクラウドの思惑通り右から現れた。
「、、、、、、」
右から来ることが分かっていたレウクラウドは、しなやかな動きでらっだぁからの攻撃を避けた。
「えっ!?」
まさか己の攻撃を避けられると思っていなかったらっだぁは驚き、思わず体勢を整えるために初期位置に戻った。
戻った。なら、、、俺の番
ニコリと笑ったレウクラウドは、攻撃を仕掛けにその場から消えた。
「!!ははっ、、、」
その移動速度の速さにらっだぁは思わず声笑った。
““タノシイ””
笑った、、、彼の領域に入っただろうかまぁいいや。
レウクラウドは気配を消したままらっだぁの後ろに回った。しかし、
「、、、、、ここに居るのは分かってんだぁ!!」
らっだぁにはバレていたらしい。身体を翻してレウクラウドの方に向きながら後ろに跳び下がった。だが、“そちらの方が好都合だ。”
「まぁそうだよね」
その言葉に、らっだぁは疑問を覚える。
先程まで、レウクラウドが持っていたナイフが手元から1つ無くなっている。
「、、?え、うわぁぁあ!!!」
らっだぁがレウクラウドの言葉に、行動に、疑問を持った時にはもう遅かった。上から一つ、ナイフが物凄いスピードで落ちて来た。あのらっだぁでさえ、気づかなかったようだ。ガキンッと音を立ててらっだぁの構えていた剣に当たり、剣はカランと言う乾いた音と共に地面に着いた。
「、、、俺の勝ちだね、、らっだぁ君」
“楽しい”
「、、、今の何!?」
「簡単だよ俺がまず君の死角から短剣を上に投げる。その後君の方に行って攻撃した後俺の元の位置に行くように誘導する。つまり時間差での攻撃だよ。結構ハイリスクだけど成功した時はリターンが大きいからね。」
「、、、、、すごい!!みどり!ばど!!コンちゃん!こいつ凄いよ!!」
「お疲れ様〜らっだぁ」
「おつかれ〜らっだぁ負けるとかダッサww」
「レウクラウド君強インダネ」
「お前人だよね?」
「、、、ううん。実は俺は異界の種族なんだ。」
「え?そうなの?」
「うん。俺はネザー界の長、ガストの化身なんだ。」
「え!まじで!?初めて見た!ネザー界のやつ!今度連れてってよ!」
「いいよ。」
「あ!俺も一応自己紹介しとくね!俺はらっだぁ。獄界の長、青鬼の化身だよ」
「ほら!お前らも!」
「おう。俺は金豚きょー。天界の長、天使の化身や。よろしくな。」
「緑色。地獄の長、ゴーストの化身。よろしく。」
「俺はコンタミだよ〜。overWorldの長、精霊の化身だよ〜。詳しくはイカだけど。
よろしくね〜」
「うん。よろしく。」
その日から俺の日常は明るいものになった。その日から暇さえあれば毎日話しかけてくれて、
俺からも話しかけに言って、たのしかった。本気で笑いあえて、
自分の事を話し合って、プライベートでも一緒に遊んで、お互いの好きなものを教えあって、
悩みを打ち明けて、慰めあって、誕生日だってお祝いしあった、模擬戦だって彼らと一緒で、
たのしかった。3年生も彼らと同じクラスで、時が過ぎるのが早い気がした。
気づけばもう3年の秋。そろそろ卒業が近づいてきていた。
そんな時に親から連絡があった。『レウ君、そろそろ卒業よね。おめでとう。それで、
卒業後の事なんだけど、お母さんがいい軍を選んでおいたわ。その軍はエリートが
集まる軍で有名なの。レウ君は優秀だからその軍に行けば必ず実力が認められると思うの。
行ってくれるわよね?』そう言われた。
俺は『うん』と答えてしまった。
らっだぁ達のところに戻ると丁度、軍の話をしていた。らっだぁが国を作るみたい。
3人はもちろん着いていくと言っていた。レウは?と聞かれたけど
俺はなんて返せばいいか分からなかった。母さんにはもうその軍に行くと言っているし、
今更やっぱり嫌だなんて言えないから。
「俺は、、、、」
くぐもった回答をしていたらみどりくんが言った。
「もしかして、もう決まってた?」
当てられた俺は心底焦った。
どう返せば彼らを傷付けないだろう、そんな考えが頭の中で駆け巡っていた。
その時コンちゃんに言われた。
「ほかの軍に行っても敵には絶対ならないから全然言ってくれても良いんだよ?」
「レウの人生はレウの物だから、決めるのはレウだしね。」
らっだぁがコンちゃんに続けて言った。
「こいつの軍に来るともしかしなくとも苦労すると思うで。」
「はぁ〜??、、、まぁ確かに。」
その一言で、俺は考えが変わった。
今までどうしてこんなに親に従って居たんだろうか
俺にはこんなに大切な友達が出来ていたのに。親に従ってばかりの人生は楽しくない。
らっだぁ達が教えてくれた。なのに、なんで俺は今でも親に従っているの?
あの人達はただ、俺が優秀な息子であって欲しいだけ、俺を変えてくれたのは、、
本当の俺を見てくれたのは、分かってくれたのは、、、、、、いつだって
、、、らっだぁ達だった。
俺の人生は、俺の物、、、、だったら、俺はらっだぁ達と一緒に居たい。
死ぬまで、彼らと笑い合いたい。話し合いたい。離れたくない。
あぁ、、、俺はこんなにも欲深かったんだ、、、、。
「ちょっとごめん」
「うん。」
「〈プルルルッ〉〈カチャッ〉あ、もしもしお母さん」
『どうしたの?レウ君』
「ごめん。やっぱ俺お母さんが推薦してくれた軍行けないや。」
『えっ?ど、どうして!?』
「ごめん。でも、着いていきたい人が出来たから。」
『そ、そうなのね、、、』
「ごめんね、お母さん。」
『いいえ、貴方が決めた道なら、お母さんは応援するわ。
だって、貴方からの初めてのお願いなんだから。』
「ありがとう。お母さん」
『レウ君。これだけは忘れないで欲しいの。』
「うん。なに?」
『お母さんはいつだってレウ君のことを大切に思っているわ。』
「うん。ありがとう。お母さん。それじゃあ。」
『次帰ってくる時は、お友達を連れて遊びに来てね。』
「うん。絶対いくよ。」〈プッ〉〈ツーッツーッ〉
「話は終わった?」
「うん。、、、、らっだぁ」
「ん?なに?」
「俺は、らっだぁについて行くよ。」
「、、、え!?マジで!?」
「うん。ついて行きたい。」
ありとがう。らっだぁ、みどりくん、きょーさん、コンちゃん。
俺を『従う』という鎖から解き放ってくれて。これからもよろしくね。
これが、俺が初めてお母さんに逆らった日だった。
コメント
37件
神以上の神ですか?
レウがレウがかわいいぃぃぃ!!
最高…レウ最高…