12月31日、大晦日。夜の冷たい空気を震わせるように、街は年越しの準備で賑わっていた。
陽は澪を誘って、近くの神社へ初詣に行く約束をしていた。
とはいえ、年越しを一緒に過ごすのは初めてで、待ち合わせの神社の前では、どちらも少し緊張していた。
「澪、待った?」
「ううん、私も今来たとこ」
寒さに頬を赤らめた澪の笑顔を見て、陽も自然とほほえむ。
二人で並んで境内へ歩き出した。
参道は人で賑わっていたが、不思議と陽と澪の間だけは、穏やかな時間が流れていた。
手をつなぐわけでもない。ただ、隣を歩くだけ。
それでも、心がじんわり温かかった。
鐘の音が響き、年が変わる瞬間が近づいてくる。
「……陽、今年も、来年も、ずっと一緒にいてね」
澪が、少し恥ずかしそうに言った。
「当たり前だろ。……オレは、ずっと澪の隣にいるって決めたんだから」
陽のまっすぐな言葉に、澪は胸がいっぱいになる。
カウントダウンが始まり、そして――
「……あけまして、おめでとう」
「おめでとう」
ふたりは小さな声で言葉を交わし、そっと笑い合った。
境内の片隅、賑やかな人ごみの中でも、ふたりだけの静かな世界。
新しい一年が、またこうして始まった。
手を伸ばせば、きっと届く距離に、あなたがいる。
それだけで、どんな未来も、怖くない――。