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任務中――異変
吹雪の中の前線拠点。
任務自体は順調だった。
だが――隊員たちは、隊長の異変に気づいていた。
呼吸が、荒い。
鎧越しでも分かるほど体温が高く、
剣を振るうたびに動きがわずかに鈍る。
隊員A
「……隊長、少し休まれた方が」
カ「問題ない。任務を続行する」
だがその直後。
魔物を一掃したあと、
カピターノは膝をついた。
荒い呼吸。
指先が震えている。
隊員B
「これはまずい……早くドットーレ様の所へ」
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スネージナヤ・医療区画
扉が開いた瞬間。
ドットーレは振り向き、
そして――笑った。
ド「……ほう。思ったより早かったな」
カ「……何を、した」
ド「質問の前に診察だ。立てるか?」
カ「触るな」
だが。
次の瞬間、
カピターノの身体が大きく揺れた。
ドットーレは即座に腕を掴む。
その瞬間――
カ「っ……!」
ド「……反応が過敏すぎるな」
鎧越しですら、
触れられた部位がびくりと跳ねる。
ド「体温上昇、呼吸数増加、神経過敏……」
ド「――薬の残存反応がピークに入った」
カ「……任務に支障はない」
ド「あるさ。今の貴様は――」
ド「触覚刺激だけで戦闘判断を誤る」
沈黙。
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診察室・ベッド
鎧を外し、上半身に包帯が残る。
以前の重傷は治っている。
だが――治りすぎている。
ド「異常な再生速度だ。通常の三倍以上」
ド「そして問題はこっちだな」
指先で、
首筋に触れる。
カ「……っ!」
呼吸が一気に乱れる。
ド「やはりな。神経興奮が長期残存している」
ド「簡単に言えば――」
ド「触れられるだけで過剰反応する身体だ」
カ「……治療法は」
ド「ある」
間。
ド「だが完全に治療するには抑制ではなく――発散調整になる」
カ「却下だ」
ド「最後まで聞け」
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暴走
その時だった。
カピターノの呼吸がさらに荒くなる。
体温は異常域。
額に汗が滲む。
カ「……っ、は……」
ド「ピークが来たか」
カ「……薬を、打つな」
ド「今回は違う。抑制剤だ」
だが――
身体が限界を超えた。
視界が揺れ、
ベッドに手をつく。
ドットーレが支える。
その瞬間。
カ「……離れろ……」
だが手は、
無意識にドットーレの腕を掴んでいた。
強く。
離さない。
ド「……理性と本能が衝突しているな」
ド「面白い」
カ「……実験対象にするな」
ド「安心しろ。今は医者だ」
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抑制処置
ドットーレは静かに言う。
ド「呼吸を合わせろ」
カ「……」
ド「いいからだ」
ゆっくりと背を支え、
呼吸のリズムを誘導する。
触れるたびに、
カピターノの肩が震える。
だが――
逃げない。
ド「神経暴走は恐怖でも増幅する」
ド「落ち着け」
カ「……お前に言われるとはな」
ド「光栄に思え」
注射器を取り出す。
カ「……それは」
ド「抑制剤だ。今回は興奮作用はない」
カ「……信用できん」
ド「なら暴走し続けるか?」
沈黙。
やがて腕が差し出される。
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投与後
薬が入る。
数分。
荒かった呼吸が、
少しずつ落ち着いていく。
だが――
完全には消えない。
ド「残存量が多すぎるな」
カ「……まだ、熱い」
ド「分かっている」
額に手を当てる。
カ「……っ」
ド「だがさっきよりはマシだ」
カ「……ああ」
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カピターノは壁にもたれ、
呼吸を整えている。
ドットーレは記録を書きながら言う。
ド「結論。貴様の身体は薬への適応率が異常に高い」
ド「治癒も、興奮も、増幅される」
カ「……今後は使うな」
ド「いや、改良すれば最強の強化剤になる」
カ「却下だ」
ド「実に惜しい」
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去り際。
立ち上がるカピターノ。
だが扉の前で止まる。
ド「どうした?」
カ「……次、同じ症状が出た場合」
ド「来るか?」
沈黙。
カ「……任務に支障が出る前に報告する」
ド「素直で結構」
カ「……だが」
少しだけ振り向く。
カ「お前以外には触れさせん」
一瞬の静止。
ドットーレは――笑った。
ド「クク……独占欲か、それとも実験優先か」
カ「……判断は任せる」
扉が閉まる。
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ド「――残存反応、未だ高位」
ド「次は抑制ではなく……制御実験だな」
ド「逃がさんぞ、隊長」
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