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「居ない者は仕方が無い。今、此処にいるメンバーだけでポイントを稼ぐことを考えなければいけない。先ほどの説明はちゃんと聞いていたな?」

ニニギは皆を見渡し、最期にヨウの上で視線を止めた。

「ハイ! 生き残り、ポイントを稼ぐ、ですよね?」

ニニギは大きく頷く。

「各自、チームで挑め。自力では負けていないはずだ!」

『オウ!』

皆の声が重なる。もちろん、ヨウとシジマも皆と一緒に声を上げた。レイチェルは朗らかに微笑み、サイは緊張で死人のように青ざめていた。


それでは、各チームは指定の場所へ移動を開始しろ


アナウンスが空から振ってくる。目を細めると、遙か上空に米粒のような人影が見えた。

ヨウの視線の先に気が付いたサイが、囁くように言った。

「審判のモリアーティー先生だよ……。噂によると、今回の試験内容を全て任されたみたいだ」

「へぇ……。この大会って、個人が決めるんだ?」

「毎回じゃないけどね」

ある者はソフィアライズして、上空を飛び、ある物は駆け足で森の奧へ消えていく。シジマもソフィアライズしたが、彼は飛ばずにヨウ達と走り出した。

「この光輪祭は、他の大会と違って、各寮の寮長が試験内容を持ち回りで決めるのよ。三回戦しかないから、決められない寮も一つあるけどね。前回はブルーレイク・ロッジの学園長が、二回戦はレッドストーン・ロッジのモリアーティー先生が最期の三回戦は」

そう言って、レイチェルはふっくらとした唇の端を上げた。

「もしかして、シノ?」

「そう、副学園長のシノ先生よ」

「それが、うちの有利になればいいけどな。当然、寮長だろうと当日まで寮生に試験内容は話せないからな」

「それでも、その寮の特性にあった試験内容を選ぶから、勝率は上がるみたいだよ」

「なるほどね……」

十分ほど森を駆け、ヨウ達は指定の座標に到着した。ここはまだ森の入り口付近だ。比較的見通しがきくが、ここから先は木々が鬱蒼と生い茂り、見通しも悪くなる。

これから何が起こるのは、ヨウ達はまだ全容を知らされていない。ただ、試験内容はごくごくシンプル。二時間、この森で生き抜くこと。つまり、リタイアしないことだ。敵を倒さなくてもいい、逃げてもいい、隠れてもいい。ただし、相手を殺すことと、森の外へ出ることだけが禁止されている。

ポイントは、前回と同じ。今回も各寮500点与えられ、1チーム100点分配される。『スフィアリアクターが35点、ノーマルが10点』。アリティアが欠席のため、ブラックウッド・ロッジは最初からマイナス35点されている。

「今回は敵を倒すことが目的じゃないから、点は稼ぎやすいか……」

薄暗い周囲を見渡し、ヨウは空を見上げる。木々が覆い被さり、空は殆ど見えない。切れ端のような青空から、光の筋が幾筋も地面に降り注いでいるが、僅かな光ではこの森の闇を払うには至らない。

(それだとしても、望みは薄いか)

暗雲とした気持ちを振り払うように、頭を振って一息つく。

「ヨウ、大丈夫かな?」

視界の効かない森の中を見つめながら、サイが心配そうに呟く。

「条件は五分。勝てなくても、一矢報いることくらいは出来るさ」

「そんな……」

「俺たちノーマルが、リアクター相手に一勝でも出来れば、十分だろう?」

「少なくても、他のチームの足を引っ張るわけにはいかないな」

シジマが強い言葉で呟く。リアクターの彼としても、前回は納得のいかないふがいない結果に終わったのだろう。それは、ヨウモも同じだった。

「みんな、頑張りましょう! きっと、ジジちゃんも何処かで見てるはずだから」

ヨウ達は頷く。今更レイチェルに期待はしていない。実際問題、レイチェルはいないのだ。期待するのでも、失望するのでもなく、自分たちで出来る事をするしかない。


それでは、光輪祭、二回戦を開始する! 各自、健闘を祈る!


モリアーティーの声が空から振ってきた。同時に、地面が動き出した。

「え? なに?」

サイが蹌踉めきながらヨウの肩を掴んでくる。ヨウも驚いたが、すでに二回戦の火蓋は切って落とされた。ヨウはサイの口を手で塞ぎ、身を屈めて周囲の様子をうかがう。シジマもアリティアも、身を屈めて周囲に気を配る。


ゴゴゴゴォォォォ……


獣の咆吼のような音を立て、地面が大きくうねる。これは、ヨウ達を対象にしたソフィアの効果ではない。恐らく、モリアーティーのソフィアがもたらしているのだろう。


定期的に地面は動く。 これを上手く利用して戦いたまえ。


「停止したわ。鳴動時間は一分ジャスト」

アリティアが的確な指示を出す。見ると、彼女はメルメルがしているのと同型の眼鏡を掛けている。レンズには細かい数値と波形が流れている。

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