「ありがとう。自分のセンスの無さに落ち込む時もあるけど、だからこそ、少しでも皆さんの技術を盗みながら上手くなりたいなって思う。頑張るね」
「そうですね。僕も皆さん、特に……悠人さんの技術を盗みたいです。1歩でも目標に近づきたいですからね。僕も負けないです」
私が忘れかけてた希望―――それを、悠人はもう一度思い出させてくれた。
そして、大きなチャンスを与えてくれたんだ。
そう思うと感謝が溢れる。
「あの……穂乃果さんって彼氏いるんですか?」
んっ!?
あまりに突然で、口に含んだ飲み物を吐き出しそうになった。
「ずっと気になってました。ようやく聞けました」
そんなプライベートなこと、サラッと聞くんだ。
それは……若さゆえ?
「私に彼氏がいるとか興味ある? ないでしょ?」
苦笑いしながら言った。
「……興味しかないです」
「えっ……」
興味しかないってどういうこと?
みんなに相手がいるか確認しなきゃ気が済まない性格とか?
「知りたいですよ」
普段は笑顔が可愛らしい輝くん。
でも今はちょっと男っぽくて、その真っ直ぐな瞳にドキドキしてしまう。
「彼氏って言われても……」
そんなの、答えられない。
悠人と同居してても、まだ付き合ってはいない、でも一夜は共にした……なんて、絶対に言えない。
「ひ、秘密かな。ご想像に任せます」
って、このセリフは美人が言うやつでしょ?
私なんかが言っちゃダメだよね……
自分で言って、かなり恥ずかしくなった。
「意地悪ですね、その答え。いるんでしょうけど……言えない相手……とか?」
「ごめん、もうやめようこんな話。私なんかより輝くんの彼女は? どんな人?」
「いる前提で聞かれても……。いませんよ、彼女なんて」
「嘘……。輝くんみたいなカッコイイ人が?」
本気の驚き。
絶対モテるよね、この系統の顔は。俳優さんやモデルにもたくさんいるよ、このレベルの人。
「穂乃果さんにカッコイイって言ってもらって嬉しいです。とりあえず、今日はそれで満足しますけど、やっぱり……僕はいろいろ、この先も期待してしまいます」
「……? 期待って……?」
「穂乃果さんのこと、もっと知りたいなって。美容師としてじゃなく、女性として」
そこまで言って、輝くんはビールを飲み干した。
「ダメだよ。そんなに一気に飲んじゃ」
「すみません。ちょっと外の空気吸ってきます」
輝くん、どうしちゃったの?
いつも明るくて元気なのに、後ろ姿が少し寂しそうに感じる。
今の、女性としてってどういう意味?
輝くんが私のことを女性として見てるってこと?
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