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タイミング良くホームに入ってきた電車に乗った。
この時間に乗車することはあまりないけれど、意外と人が多くて、座れる隙間はどこにも無かった。
ドアの近くに立ち、窓の外に流れる夜の景色を見ていたら、少しずつ頭が回転し始めた。
スーツ姿の店長は、今日もすごく素敵だった。
思いがけずお誘いを受け、食事をして、そして……
私は、綾井店長に告白された。
もちろん、まだ信じられない。
しかも、一目惚れで、3年間も私のことを想っていてくれてたなんて……
店長の周りには私より綺麗な人がたくさんいるのに、その中でどうして私なのか、どう考えてもおかしい。
私は、やっぱりからかわれているのだろうか?
でも、綾井店長はそんなことをする人ではないのもわかっている。
さっきからずっと体がふわふわと宙に浮いてるみたいで落ち着かない。
答えは急がないと言ってくれたけれど、結局、絶対に返事をしないといけない。このまま、曖昧にしておくことは……できないんだ。
今は仕事に集中したいと思っていたところで、恋愛の悩みなんて抱えている場合じゃない。
いったい、どうすればいいのだろう?
この唇には、店長にキスされた感触がまだ残っている。
その時、なぜか龍聖君の顔が浮かんだ。
3年前のあの日の思い出……あのキスがフラッシュバックしてきた。
目を閉じると、私に笑いかけてくる龍聖君の顔がとても優しくて、何だか泣きそうになる。とっくに私の元から離れてしまった人なのに、まだ私の中に現れるなんてズルい……
ダメダメ!
もう何も考えちゃダメだ――
店長のことが「好き」なのか「好きじゃないのか」。
その問題の答えを出すことはとても困難なこと。今の私にはどんな数学や英語の問題よりもずっとずっと難しい。
そうこう考えているうちに、電車はあっという間に到着し、私は人の流れにのってホームに降り立った。
とりあえず、一旦考えることを放棄する。
早く帰って、お風呂に入って、温かい飲み物でも飲んで、さっさと眠ろう。そんな小さな安らぎを求め、私は、一人暮らしのマンションまでの道のりを足早に歩いた。