pnside
夜は嫌いだ。
でも昼間は大嫌い。
静かすぎて、思考が増える。
何もしていなくても、過去と未来が同時に押し寄せてくる。
目を閉じても眠れない。
天井の白が、昼間よりも冷たく見える。
蛍光灯の残光が壁に残って、そこにあの人の横顔が浮かんだ気がした。
“生きてほしい”
“明日はきっと大丈夫だよ”
その言葉が、頭の奥でずっと反響してる。
優しいのに、痛い。
刺さって抜けない。苦しい。
俺はあの人を安心させた。
嘘でも笑って、言葉を選んで、
“もう平気です”って言った。
それであの人は笑った。
その笑顔を見た瞬間、胸の奥が少しだけ温かくなったのに。
その温かさは、次の日には冷たく変わっていた。
もう限界だったのかもしれない。
笑うたび、心が削れていくのが分かった。
息をするだけで、胸が軋んだ。
窓の外の夜が深い。
音が全部遠い。
俺だけ取り残されてるみたいだった。
あの屋上の鍵の音を、何度か夢で聞いた。
夜風の冷たさも、鉄の匂いも、全部覚えてる。
一度だけそこに立ったことがある。
まだ俺が壊れる前。
空が怖いほど広くて、
でもあのとき確かに、“解放”って言葉を感じた。
もう一度、あそこに行こうと思った。
ベッドを降りて、足を床につける。
冷たくて、重い。
腕に力を入れると骨が軋む音がした。
それでも動いた。
動かないと、今にも息が止まりそうで。
扉を開ける。
廊下の光が目に刺さる。
夜勤の看護師が少し驚いた顔をした。
看「どうしたの?こんな時間に」
pn「ちょっと、病室の外の空気を吸いたくて」
笑って言うと、看護師はため息をついて車椅子を持ってきた。
腰を支えられて座ると、体がふわりと浮いたように軽い。
pn「エレベーターホールまでお願いできますか」
一瞬止まる。
でも俺の顔を見て、ためらいながら頷いた。
看「少しだけね」
この看護師も新人らしく、主治医に確認が必要なことを知らなかったらしい。
エレベーターホールの前で「ここで大丈夫です」と言うと、
看護師はゆっくり去っていった。
扉が閉まる音が、やけに長く響いた。
ボタンを押す。
金属の音が肺の奥まで響く。
その音だけが現実だった。
屋上までの階数表示が一つずつ光っていく。
心臓の鼓動と一緒に、ゆっくり、ゆっくり上がっていく。
“これで終わる”っていう言葉が 知らないうちに胸の奥で形を持ち始めていた。
扉が開いた瞬間、冷たい風が頬を打った。
夜の匂いがした。
鉄と雨上がりと少しだけ花の匂い。
空は深く、重たく、息を呑むほど広かった。
あの日見た空と同じ。
でも今はもう、怖くなかった。
リムに手をかける。
包帯の下の指が痛む。
けど、押すたびに体が前に進む感覚が心地よかった。
息を吸うたびに、痛みが薄れていく気がした。
目の前の柵が近づく。
街の光が滲んで、遠くに流れる。
あんなにも小さな灯りなのに、どうしてあんなに綺麗なんだろう。
手を止める。
冷たい風が頬を撫でた。
涙が出そうになったけど、こらえた。
“ここまで来たんだ”
“もう大丈夫”
心の中でそう呟いて。
少しだけ笑った。
pn「ありがとう、先生」
声に出した。
風に消えて、音にならなかった。
夜は静かだった。
自分の鼓動だけが、遠くで鳴っていた。
rdside
ペンを置いた。
無意識だった。
手が震えていた。
嫌な胸騒ぎがしていた。
理由なんてなかったのに、
胸の奥のどこかが、急に冷たくなる感覚だけが残ってた。
時計を見ると、いつのまにか深夜を回っていた。
病室の方から物音がしない。
静かすぎる。
立ち上がって扉を開ける。
白いシーツが乱れていて、 彼に繋がっていたはずの点滴だけがこの部屋の異変を伝えた。
無理矢理点滴を外したのか、空になったベッドの上には彼のものと思われる血が残っていた。
一瞬、時間が止まった。
次の瞬間、血の気が引いた。
rd「……ぺいんと?」
返事がない。
胸がざわつく。
嫌な想像が勝手に広がる。
廊下に飛び出す。
夜勤の看護師にぶつかりそうになって、息を荒げた。
rd「ぺいんとがいない …」
看護師は驚いた顔で言った。
看「エレベーターホールの方に…行きたいって言ってました」
その言葉で、全部理解した。
思考が追いつく前に、体が動いた。
足が勝手に階段を駆け上がっていく。
心臓が喉の奥で鳴る。
頭の中が真っ白で、息がうまく吸えなかった。
屋上の扉の前まで来たとき、
金属の冷たさが手に伝わった。
その感触だけで、息が詰まった。
rd「……ぺいんと」
名前を呼んでも、返事はない。
あるわけが無い。
風が吹いて、扉がかすかに軋む。
手に力を込めて、押し開ける。
夜の光が、一瞬で視界を満たした。
風が白衣を揺らす。
そして、その先に
車椅子に座ったまま、
夜の街を見下ろす“彼”の背中があった。
髪が風に揺れて、肩がかすかに震えていた。
rd「……ぺいんと」
声にならない声が、夜に落ちた。
風が冷たく吹き抜ける。
遠くの街の灯りが揺れて滲んだ。
その光が、まるで涙のように見えた。
コメント
4件
最近忙しくて見るの遅くなってました🙏🏻段々終わりに近づいているのが分かって寂しいです~、!;; れあさんの物語の展開の仕方が毎回想像を超えてきて、読んでいるとひとつの映画を見ているような気分になります🥲🙌🏻💞
え!?仕事早すぎてしぬし物語良すぎて成仏ですっ!!😇♥️(?)マジで主さんこのスピードで書けるの尊敬ですっ✨( * ॑꒳ ॑* )✨次のお話も待ってます!!

続きはや?! てかめっちゃ好みですし好きです! コメント失礼しました!