「…もう、終わりにしません?この関係」
少し濁った色をする黄色の髪が、ふと僕の眼に映った。
さっきまで甘く蕩けていたその顔は、今やものすごく真剣な眼差しで僕のことを睨んでいる。
「なに、なんで急にそういうこと言い出すの?
あ、もしかしてエイプリルフール? エイプリルフールなら午前d」
「違います」
人間というものは不思議だ。
自分が信じたくない事程、すぐに話を逸らして誤魔化そうとする。
それは多分、僕の悪い所でもあり、醜い所なんだろう。
また少しずつ春に近づいていった体温が、その一言で一気に冷めてしまった気がした。
「なんなんですか、僕がもう終わりにしたいなと思ったから今ころちゃんに伝えてあげてるんです」
この関係が始まった頃は、確か数年前の冬だった気がする。
その頃はお互いこういった関係に慣れておらず 今のように2人での、プライベートな会話をする時間が少なかったのだろう。
それでも尚「もっと近くにいたい」 至って純な想いを持って、満場一致での同意がきっかけなのだと覚えている。
「…ころちゃん、聞いてましたか?」
「え、ああ、うん」
–––どうやら僕が思い出に浸っている間、るぅとくんの中ではかなり話が進んでいたようで、今の僕が聞いたって分かりはしない言葉を発する。
るぅとくんは話の内容が曖昧と化している僕の姿を見て、1から10まで要約して話してくれた。
そういうとこだぞ、思わず突っ込みたくなってしまうがここは必死に耐える。
るぅとくんは先程まで、ご丁寧に僕に向かって「別れよう」という内容だけを綴っていたらしい。
最初の方は理解が追いつかず 「は?」という言葉しか出せなかったのだが、話の内容さえきちんと聞いていたらなんとなくわかったような気がする。
確かに僕はヤるとき以外はるぅとくんと会っていなかったし、仮に合流してもあまり話すことがなかった。
「はあ、ようやく理解してくれましたか?」
呆れた顔で僕に問う。
「まあね」
「それなら良かったです」
いつもの可愛らしい彼とは一際違い、違和感を覚える。
淡々と僕を問い詰める顔は愛おしいなと思えた。
「じゃあ、そういう事だけの関係はこれで終わりね」
「まあ、そういう事ですね」
勝手にツンデレ染みた返答が返ってくると思い込んでいたが、意外とあっさりとした回答で少し凹んでしまう。
…でも、僕はまだ “そういう事だけの関係” としか言っていない。
本番はここからだと僕は感じた。
「分かった。関係はやめにするから、僕と真剣に付き合ってくれない?」
今までの展開からこの告白は駄目だったかもな、
自分から行った行動の癖、その行為に自信が持てない。
るぅとくんの方をチラッと見ると、真っ赤に染まったいつものるぅとくんの顔。
「…っ、!!!ばかぁ!!!」
『ほんとは僕から言おうと思ってたのに』そう続いたこの言葉は、改めてお互いの気持ちを実感できるような発言だったと今は思う。
「え、」
「ばかばかばかぁ、!!!!」
嬉しい気持ちで胸が満たされて、知らず知らずのうちに涙が零れ落ちる。
それは僕だけではなく、るぅとくんも同じだった。
「ごめんごめん、笑」
…改めて、僕とお付き合いしてください」
最後くらいは、カッコつけてもいいよね、
返事を待つ僕の視線の先の彼は
「…喜んで」
と、涙で震えた声でそう応えた。
コメント
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めっちゃ好きですぅぅ...... ぇ....すこ.....