「なぁくんは、俺のこと好き、?」
事後特有の掠れた声で、彼がそう呟く。
「勿論、俺はさとちゃんのこと大好きだよ?」
浮気とか、疑われてしまってるかな。
さとみくんが何故、俺にこんな質問を投げつけてきたのか。
軽く頭が混乱した状態で俺は応える。
「…そっか、」
さっきまで甘々だった癖に、今の彼にその面影はない。
しゅん、と彼の眉が下がったのが見えた。
–––未だに汚れたままのシーツが、俺たちに何処か寂しさを感じさせる。
嫌われちゃったかもしれない、いっつも無理させちゃってるかもしれない、最近構えてなかったかも。
いくら考えたところで、ネガティブな考えばかりが頭に浮かぶ。
ぐるぐると巡る彼の横顔。
なんだか気分が悪くなってきて、気がついた時には完全に思考が停止していた。
枕の右側。
ふとした窓際から、明るい光が漏れ出す。
…もう朝か、
昨日のこともあり、ずっと下がったままのテンションが俺を憂鬱な気分にさせた。
いつも通り。
俺の横で眠る彼の淡い笑顔。
いつしか溢れ出した涙は、さとみくんの頬を湿らせる。
せっかくの美形が これじゃ俺の手によって汚されているみたいだ–––
重い体を必死に起こし、彼を起こさないようにとベッドから降りる。
そういえば 「ベッドは大きい方がいいよね」なんて話して、2人で寝るにはかなり大きめのサイズのベッドを買ったんだっけ。
もう数年前の話、懐かしいなと腑に落ちる。
「…ったく、俺って女々しすぎない、?」
震える呟きが防音仕様の部屋に響く。
今日は生憎仕事も休み。
落ち着かない気持ちを押し潰すようにして、鏡の前で笑顔を作ってみせた。
「…ん、なぁくん、?」
まるで何事も無かったかのように俺の元へ来るさとみくん。
いつもは可愛いと思うけど、今は違う。
愛らしい瞳とは裏腹、苛立ちの連鎖を起こす自分が醜い。
「おはよう、さとみくん」
「んへ、おはよぅ、」
さとみくんは寝起きで重たいであろう瞼を上げてくれる。
…前言撤回、やっぱり可愛い。
どんなことがあっても、こうやって自覚もしていないような行動で癒してくれるさとちゃんは 俺にとって天使以上の存在。
でもやっぱり、昨日の言動の意図だけは聞いておきたい。
「ご飯できてるよ、一緒に食べよ」
こうして2人でご飯を食べる機会は滅多にない。
丁度いいから、この際に聞いておこうかな。
善は急げ…いや、善じゃないかもしれないけど。
廻る考えを止めたくて、取り敢えずと机に料理を並べた。
「さとみくん、覚えてる?昨日のこと。」
未だに意味が理解できていないのか、彼は小さく首を傾げる。
「あの、俺に好き?って聞いてきた時の…」
最後まで言い終わる前に、焦ったかのように俺の口を引き止める。
何であんなこと言ったの、そう問う前に
「あの、ほんとに俺のこと好きなのか確認したくて、!!」
さとみくんは大きめの声で答えてくれた。
さとみくん曰く、俺がリスナーさんにばかり好き好きと言っていたように感じたらしく。
本人にそんなつもりは無かったし、さとみくんにもちゃんと愛を伝えているつもりだった。
「ごめん、さとみくん」
「え、っ…」
俺が謝ると彼は気持ち小さくなったように見える。
そんな所も全てが愛おしくて、思わず
「俺はさとみくんの全部が好きだし、全部が可愛くてかっこいいなって思ってる。
誰よりも大好きだし、だから、俺に好かれてるのかなんて気にしなくてもいい、大丈夫だから、!!」
と重すぎる愛をひたすらに語ってしまう。
…駄目だ、これ絶対引かれた…
なんて思い、ふっと桃色の彼に目を向ける。
熟したりんごみたいに真っ赤に染まった顔が映った。
「あ、え…??
…おれ、なぁくんにそんな愛されてると思ってなくて、」
そうやってまた昨日の行為中みたいに甘々な態度をされてしまう。
お互いに嬉しくなっちゃって、赤面を浮かべる。
「さとちゃん、
大好きだよ」
コメント
2件
うぇぇぇ可愛い尊い^ㅠ ̫ ㅠ^ 最高ですね⁉️😿