テラーノベル
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「あぁ…」
目が覚めた。どこかも知らないホテルのロビー。とりあえずあたりを見回す。
「何処ここ…。」
ロビーのカウンターに呼び鈴があった。
「…これを押すのか?でも、押さない方がいいのか…?」
迷った。迷いに迷って…、押さなかった。もし何かが起きたら面倒だからだ。
近くのソファに腰掛ける。滑らかな赤い生地で、ふわふわで高級そうだ。
改めて見回してみるとだいぶ高級そうなホテルだ。天井にはシャンデリア。入り口からカウンターまではレットカーペットが敷かれてる。床は大理石。高級すぎて、自分が場違いじゃないのかとそわそわし始める。
「…。」
落ち着かないが黙って座っていた。でも…、やっぱり気になって仕方がない。此処は何処なのだろう、お金はかかるのだろうか?だとしたら一般高校生に払えそうにない。そもそもこれは夢なのか?現実なのか?いろんなことが頭をよぎってしまう。
「あれ?」
魁斗は気づいた。資料室の前の香りと同じ、日によって変わるあの良い香りがすることに。今回はフローラル。資料室で寝てしまう前に香った香りと同じだ。
けど、此処にいるだけ暇。何して待てば良いかもわからない。ただ座ってるだけ。暇すぎた。急にこんな高級そうなホテルに来て何したら良いかなんておそらくどんなに頭の良い高校生でもわからないだろう。
そんなふうに暇を持て余してソファに座っていると、カウンターの奥にある部屋、おそらく職員などの準備室とかだろう。そこの扉が勢いよくバンっと音を立てて開いた。
「おっきゃくさーん!」
「!!」
白い髪のオレンジ色の目、表情豊かなイケメン。だが頭のネジがちょっと外れたような奇妙な笑い方。白いゴシックフリルのブラウスに黒色のワイドパンツ。頭から右側だけツノが生えていて、とても人間とは程遠い存在に見える。そんな奴が急に登場。流石にビビる
「ああびっくりさせてごめんごめん!けどちょっとツッコミ入れさせて!?」
「嗚呼、はい…?」
曖昧なままとりあえず返事
「此処に呼び鈴あるでしょ?」
カウンターの呼び鈴を指差しながら話を続ける
「これ押して!?お客さん来てないかと思って油断して外出たらアンタいるんだもんよ!俺びっくり!」
盛大なツッコミ。まあ確かに呼び鈴押さなかったけどそれは警戒であって…、いや、この人(?)に言っても通じないだろう。
「嗚呼、まあすみません」
とりあえず謝っておこう
「謝んなくて良いよ!?別!?」
どっちなんだよおい。魁斗がツッコミたくなった。
バンッ!
扉が勢いよく開く
「おいお前!初めてのお客様だぞ!もっと丁寧に接客しろ!」
黒い髪の水色の目、さっきのやつと同様、表情豊かなイケメン。黒いゴシックフリルのブラウスに白色のワイドパンツ。頭から左側だけツノが生えていて、こいつもまたとても人間とは程遠い存在に見える。そしてさっきのやつと真反対なやつだ。
「えー、けど元気に接客はいいことでしょ!?」
「お前の良いことは迷惑なんだよ!自覚ないのが一番困る!」
目の前で喧嘩される方がよっぽど困る。
「ああ、お客様、すみません。」
「ああ、大丈夫です。」
「大丈夫大丈夫!。」
「ちょっと黙っとけ。」
相性悪いなこいつら
「ああ、お客様。自己紹介遅れました私『ダイス』と申します。こっちのバカは『イノス』です。」
しれっとバカって言われたイノス
「バカじゃないぞ!?」
「お客様の名前は?」
イノスをフルシカトした。そんなことより名前。魁斗は魁斗。だが、思い出すことができない。
「名前…。」
「わかんないよね!?」
手でイノスを押し除けるダイス。そして言う
「まあ名前は覚えていませんよね。当たり前です。此処に来た人は誰も名前を覚えてませんからね。」
「そ、それってどう言う意味ですか?そ、そもそも、なぜ俺は此処に…。」
「ああ!説明してなかったね!えーっとー、車が来てー、ポーンってなった!だから君は今此処にいる!」
「お前は説明が下手なんだよ、黙っとけ。…ああ、少し変なこと言ってるって思われるかもしれないが、驚かずに正直に受け入れて聞け。」
「は、はい」
真面目に話す
「お客様は、4にました」
「え?」
驚くなとも言われたが、流石に驚く。え?4んだ?俺?高校生という若さで?
「まあ流石に驚きますよね。一からお伝えします。あなたは、このホテルキーを調べるために走って帰りましたよね?」
確かに
「はい」
「そして、道路を渡るときに、車が来て轢かれました。車の方もブレーキはかけたんですけどね。覚えてませんか?甲高いブレーキ音」
あのブレーキ音か
「うーん…、まあ、言われてみれば。てか、4んで此処にくるならもっと大勢いるはずだろ?なんでこんなに少ないんだ?」
「職員はまだ私達以外にいますよ。他のお客様は部屋にいるか、出掛けています。で、今あなたが此処に来た理由ですね?まあそれには理由がありますから。」
一応職員はダイスとイノス以外にもいるようだ。なんか安心。
「まず、あなたはホテルキーを持った状態で4にましたよね?」
「はい」
「それが此処に来た理由です。此処は冥界ホテル。一応言っときますが、冥界というのは4者が来る世界です。まぁ、此処のことを簡単に言えば、冥界にあるホテル。ホテルキーを持った状態で4んだ人限定で住むことができるホテルです。」
「ああ分かった。あ、そういえば、天国と地獄はないのか?」
「あぁー、天国と地獄は実は存在していないんですよね。冥界という1箇所だけです。天国と地獄は勝手に生きている人間達が想像しただけであって、実際は存在しません。なんか裏切った感じで申し訳ないですけど…。」
「ああ、まあ存在しないんですね。衝撃です。普通に。まあ大丈夫です。あと、他のお客様が出掛けているというのは?」
質問攻めは申し訳ないと思いながら質問する。
「ああ、それは…」
「それはですね!?此処冥界はホテルだけでなく、街やショッピングモール!テレビ局とか住宅街!裁判所や刑務所、映画館や遊園地!とにかくいろんなものがあるんだ!良いと思わないかい!?」
「おいお前黙っとけって言っただろ。まあこいつが言ってることは本当です。」
「へ、へぇ。まあすごいってことは伝わりました。」
「おお!ならよかった!なぁダイス!?」
イノスは自分の説明で伝わったことをとても喜んでいる。
「五月蝿い。あ、話を少し前に戻すが、名前を決めなくちゃならないんですよ。」
「名前…」
そうだった。名前を忘れているんだ。
「ええ。名前です。うーん、どういう名前がいいですかね…、後悔しないようにしなければなりませんから、悩ましいですねー。」
「じゃあスカイはどうだい!?かっこいい響きだろう!?」
「ああ、お客様すみません…、こいつが勝手…に」
「スカイ…。それが、良いです」
魁斗…いや、スカイが承諾した。ダイスは意外な顔、イノスは嬉しそうな顔をしている。なんでだろう、スカイがしっくり来る。
「おぉ!気に入ってもらえた!?よっしゃ!ダイス!スカイで決定だとよ!」
「そうですか。スカイ。まあ確かに良い名前ですね。ではスカイさん、名前も決まったので次は部屋ですね。」
「部屋?」
ホテルの部屋のことだろう。そういえば、ホテルなのに住めるんだな。
「そう。部屋です。死ぬときに持っていた鍵を貸してください?」
「あ、はい」
ポケットから拾ったホテルキーを取り出す
「えーっと…『1205』ですね。では、今日から貴方は此処のホテルの1205室を使ってください。一応言っときますが12階ですからね。」
それはそう。スカイ分かっている。だが、このようにお客様を気遣うのはダイス特有のおせっかいな優しさだ。
「あぁ、わかりました。」
「分かったならそれで良い!部屋とか色々自由にしてもらって構わないよ!冥界の街並みも探検してもらって構わないし!じゃーあ!あっちがエレベーターだよ!早速部屋見てきなー!」
「お前声でケェんだよ!」
また喧嘩が始まってしまいそうだ。早く部屋に行こう
「で、では部屋見に行きますね」
「ああ、スカイさん行ってらっしゃいませ」
「行ってらっしゃい!」
2人に見送られエレベーターの方にいく。後ろからはダイスがイノスに向かってうるせぇ!って言ってる声が聞こえる。ダイスも十分うるさいな、と思いながらエレベーターに入り12階のボタンを押す。
コメント
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第2話、読みました🥀 高級ホテルのロビーで呼び鈴を押せず迷うスカイの警戒心、すごくリアルでした。そこへツノの生えたダイスとイノスの掛け合いが最高で、死んだ重さを感じさせない軽妙さに救われます。名前を忘れて「スカイ」になる瞬間が静かに刺さりました。1205号室の続き、気になります🌙