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7話
葛葉と距離を調整するようになってから、
ローレンは以前より自由に過ごしていた。
外出も許されている。
屋敷の外の市場へ行き、
知り合いと話し、
一人で過ごす時間も増えた。
それなのに。
戻ってくるたび、
視線は無意識に屋敷の奥を探してしまう。
(……これって)
ローレンは立ち止まる。
前なら、
「必要とされなければ価値がない」
「離れたら捨てられる」
そう思っていた。
でも今は違う。
葛葉は、
近くにいろとも言わない。
離れるなとも言わない。
選択を奪わない。
ある日、屋敷の使用人の一人が、何気なく言った。
「ローレンは、葛葉様のところに戻るよね」
その言葉に、胸が小さく揺れた。
「……戻る、というか」
言い直す。
「俺が、行きたいだけっす」
その瞬間、
自分でもはっきり分かった。
――行かなきゃいけない、じゃない。
――行きたい、だ。
依存とは、
選べないこと。
離れたら壊れると思い込むこと。
でも自分は、
一人でも立てる。
拒否もできる。
外の世界も知っている。
その上で――
葛葉のそばを選んでいる。
その夜、ローレンは葛葉のもとを訪ねた。
扉を叩く手は、以前ほど震えていない。
「どうした」
葛葉の声は、変わらず落ち着いていた。
「話したいことが、あります」
向かい合って座り、
ローレンはゆっくり言葉を選ぶ。
「前は……
離れたら全部なくなる気がしてました」
葛葉は黙って聞いている。
「でも今は、違います」
ローレンは顔を上げた。
「一人でも大丈夫です。
ここを出ることも、できます」
それは、宣言だった。
自分自身への。
「それでも」
一拍置いて、続ける。
「俺は、葛葉様のそばにいたい」
葛葉の指先が、わずかに動いた。
「それは、依存じゃない」
ローレンは、はっきりと言った。
「俺が選んでるだけです」
長い沈黙のあと、
葛葉は小さく息を吐いた。
「……そう言ってもらえる資格が、俺にあるのか」
不安が混じった声。
ローレンは答える。
「資格とかじゃないです」
「俺が、選びました」
その言葉は、重く、確かだった。
葛葉は目を伏せ、
そして初めて、弱さを見せるように言った。
「それが、一番怖かった」
「お前が俺に縋っているだけなら、
俺はまた、奪う側になってしまう」
ローレンは首を振る。
「違います」
「だから、ちゃんと嫌なときは言います」
少し笑って、付け加えた。
「逃げたくなったら、逃げます」
その言葉に、葛葉は苦笑した。
「……それでいい」
二人の間に、
以前とは違う静けさが流れる。
縛りでも、救いでもない。
依存でも、義務でもない。
ただ、
選び続ける関係。
ローレンは、その感覚を胸に刻んだ。
――誰かを選ぶことは、
――自分を失うことじゃない。
それを、初めて知った夜だった。
ご愛読ありがとうございます♪
続きます
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