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私の本性 。

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私の本性 。

1 - 第一話 「知られたくなかった事実」

♥

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2024年12月10日

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最近、布団の中に入るとやけに疲労感に襲われる日が続いた。

別に手間のかかる依頼が或ったとか、仕事の量が特別多かったとかでも無い。

でもなんで疲れているのか、と聞かれても私には答えられないだろう。 私だって疲れている理由が判らないのだ。

おかしい。其んなの一々云われなくても分かっている。判っているけれど、如何することも出来ない。
































***

ピピピ…と聞きたくない音が意識に無理矢理入り込んでくる。


目覚まし時計に手を伸ばし、とめた。重い躰に鞭を打ってなんとか起き上がる。

でも暫く、虚無感に襲われて動くことが出来なかった。



ピピピ…とまた目覚まし時計がなっている。

あゝ、もう十分経ってしまったのだ。疾く探偵社に行かなければ国木田くんの声が大きくなるだけだ。

でも、あと少しだけ寝ていたい。

もう一度横になり、ゆっくり目を閉じた。







「ねぇ、君は本当に人を救えてる?」






やけに通る少年の声でそう云われた。


突然の質問に困惑する。


「君には仲間がいる?」


仲間、武装探偵社の皆のことか。


「じゃあさ、君はその皆を信用出来てる?」


当たり前だ。そうでなければ仲間と呼べないだろう。私 は彼等を、皆を信用している、。


「本当に?」


私は何故か自信を持って「イエス」と答えることが出来なかった。

何故だ、?私は彼等を信用しているはずなのに。


「そんなの簡単だよ。君が心から信用していないからさ」


原因不明の不快感と吐き気が私を襲った。


「まぁ君が自ら人を救う側になったわけじゃないもんね」


少年は淡々と話し続ける。


「知ってる?酸化してるのは世界じゃなくて君自身なんだよ」








































目が覚めた。


起きたことで神経が一気に開通して背中が仰け反る。

冷や汗をかいたのか、布団や来ている服が濡れている。息も少し荒く不規則だ。

いつもなら調整できる心拍数も言う事を聞かない。


はっと我に返り、時計の針が指す数字を確認する。


十時。

本来なら遅くても八時半には武装探偵社に着いていなければならない。

状況を理解し、ちっと舌を鳴らした。

このまま仕事を放ってしまおうか。それとも、と考えていると玄関からコンコンと扉を軽く叩く音がする。


「太宰さん?」


人が良さそうだと感じる声。


「敦裙…」


寝起きの掠れた声でその人物の名前を呼ぶ。

「起きてたんですね、国木田さんが怒ってますよ!」と敦裙は私に武装探偵社に向かう様に促した。


「疾く来てください!」


少しの沈黙を挟んで「直ぐ行くよ」と返事した。

敦裙に起きていると知られたからにはもう行くと云う選択肢しか無くなってしまった。

渋々体を起き上がらせて武装探偵社へ行く準備をする。雑に包帯を巻き、シャツの牡丹をとめ、砂色の外套を羽織る。

家を出て、昇降機に乗り、武装探偵社が或る階を押す。暫くして昇降機の扉が開く。数歩進んで扉の前に立った。扉の取手に手をかける。


手が震えていた。

躰が探偵社に行く事を拒否しているのだろうか。だが、私は行かなければいけない。

覚悟を決めてドアノブを回した。


「グッドモーニング!」


「何がグッドモーニングだ、もう昼だぞ」


国木田裙が無駄に大きい声で叱りつけてくる。


「ッ…分かってるよそんなことー」


そのせいで耳鳴りがした。


「じゃあきちんと時間を守れ 」

二回目の耳鳴り。そろそろ不味いと感じた私は適当に切り上げた。


「まぁまぁ佳いじゃないか、ちゃんと仕事もやるし、ね?」


国木田裙が不満そうな顔をして私の前を去った。ほっと胸を撫で下ろす。

ふと、自分の腕に目線をおとすと包帯にじんわりと血が滲んでいた。


「不味いね…」


私はてっきり誰にも今の状況を見られていないと思ったが、一番見られたくない人、乱歩さんに見られていた。


「だーざーい」


乱歩さんに呼ばれ、直ぐに腕を自分の背後にやった。それからニコリと笑顔を作る。


「何でしょうか」


「一寸此方来て」


早歩きで武装探偵社の中央奥にあるエグゼクティブデスクに浅く腰掛けている乱歩さんの元へと向かった。


「どうしましたか」


ごくんと息を飲んだ。大体、何を云われるかは察しがついていた。


「お菓子買いに行こ」


「ぇ、あゝ佳いですよ」


てっきり其の血は何だ、とか云われると思っていたので安心して肩の力が抜けた。


その場に居た谷崎裙に一言断りをいれてから武装探偵社の外へ出た。


「太宰、其れ何?」


昇降機に乗って少しした時、乱歩さんが私の腕を指してそう云った。

その言葉を聞いて、私は全身に脂汗をかく。


「あー、之は昨日少しぶつけてしまって」


「…へぇ、何処に?」


「机ですよ、気にしないでください」


昇降機が一階に着き、ゆっくりと扉が開く。


「太宰、着いてきて」


上司の云う事にノーとは答えられずに仕方なく着いていく事にした。

体感十分ほど歩いて、何時もの寮に着いた。


「何故此処に?」


「判るでしょ」


その一言で私は更に脂汗をかいた。

不味い。


階段をのぼり、私の部屋の前で乱歩さんは止まった。


「開けて佳い?」


「流石に其れは一寸…」


まぁ開けるんだけど、と云って何処にしまっていたのか細長い針金で器用にピッキングした。

カチャ、と鍵があく。


「乱歩さん、一寸!」


乱歩さんの腕を掴んで何とか中に入るのを阻止する。


「何で?やましいものでも或るの?」


「…否、其のプライバシーの侵害ですよ」


自分でも意味が判らなかったけれど今は其れが精一杯の言い訳だった。


「僕はもう全部判っているけれど」


「ッ…其れでも、」


少し乱歩さんの腕を掴む私の握力が弱まった隙に乱歩さんは腕を振りほどいて中へ入っていってしまった。

中からはツンと鼻につく鉄と胃酸の匂い。

乱歩さんが酷いね之は、と云った。


「乱歩…さん」


「太宰、此の血は何?」


言い訳が思いつかない。否、仮に思いついたとしても乱歩さんには一瞬で見破られるだろう。

何も言えずに立ち尽くしていると、乱歩さんが浅くため息をついて、私に近付いて来た。


「あの血は之と関係が或るのか」


そういって左手首の包帯を少しずつ取っていく。 どんどん血が滲む面積が大きくなっていった。 左手首に巻いてあった包帯が全て取れて、昨日の傷や古傷が顕になった。

「ぁ、乱歩さん…」


貧血と恐怖とも緊張感とも何とも云えない気持ちで呼吸がうまく出来なくなる。

次第に立っているのも困難になって関節が壊れたようにゆっくりと膝から崩れ落ちた。


「太宰、落ち着け太宰」


耳鳴りも酷い。

私の意識は少しずつ遠のいていった。
















長くなって申し訳ないです。


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