「…はぁ〜〜……」
僕は大きな溜息を吐いた。
その理由は…、喋る相手が居なかったから…。何を言ってるんだと思われるかもしれない、だけど本当のことなんだ。
自分の好きな物が一昔のもの過ぎて、語れる人が同学年には居ない…。話題を出したとしてもそんな昔の話をなんで今更、なんて思われたら……そんなこと思われて嫌われるよりも、何も話さず静かに過ごしてた方が良いと思った。
そんな俺は、絶賛帰り道の途中だ。途中と言っても、教室から出て、靴を履いて、外に出てトボトボ歩いている状況……。
部活も入ってないから、足早に帰宅しようとしていた所。
「このままじゃ俺…ずっと……独り……??」
なんて、当たり前だろと思うような独り言をボソボソと呟いていた。
下校道の横には校庭がある。
校庭のグラウンドには、既に部活を始めてる生徒たちが集まっていた。
「…俺も部活入ろうかなぁ…、いやでも俺動ける自信ないな……」
校庭の方をじっと見つめながら、俺はそんなことを呟いた。
球技系の部活がそこには集まっていた。サッカー、野球、離れたところにはテニス、色々ある。
「…まあ、いいか…帰ろう帰ろう!!」
前を向き直して歩こうとしたその時だった。
「危ない!!!!!」
「え?」
後ろを振り向こうとすると、その視界に映ったのは僕をめがけて飛んでくるサッカーのボールだった。
『う、嘘だろ……!?避けれない…、ど、どうすればっ……むりだ…!!!!』
自分に当たることを覚悟で、ギュッと目を瞑り、頭を両手で守ってその場に立ち尽くした。
数秒経ったが、自分の体に異変はない。もう体に当たっててもおかしくないはずのボールの感覚が全く無かった。ホッと一安心した。だけどどうして…何が起きたのか理解する為に、僕はギュッと閉じていた目を開けた。
「…イッッテぇ〜……!!お前らもう少しあっちで蹴ろよ!!こっち側人通るだろ!!!」
僕の目の前には、ガタイのいい人が立っていた。自分よりも背が高くて、明らかに体育系だろと言わんばかりの体だった。
あんまり見えてないけど、多分…俺の方に飛んできたボールを、その人が片手で止めてくれたんだと思う。
「まッじで、ごめん!!!!大丈夫か?怪我してない?」
「…えっ、あ…大、丈夫…です……」
その人の勇敢さ、格好良さ、凄さに圧倒された。
手が痛いはずなのに、俺の方を見て、自分のことより心配してくれて、微笑んでくれた。
「は〜〜、怪我無くて良かったわ…!!あいつらにはもう一回キツく言っとくから、お前はもう帰りな?」
その人は、ボールを触っていない方の手で、ぽんっと俺の頭に手を置いてくれた。
その人の事を忘れることなんてできない、せめて名前だけでもと思って、その人を呼び止めた。
「あ、ぁ……っ、あの…!!!ぉ、お名前は…」
「俺の名前?俺の名前は、宇佐美リト!!!じゃ、部活あるからまたな!!気を付けて帰れよ〜!!」
そう言いながら、リトさんは走り去って行った。俺のお礼を聞こうともせず、部活に向かっていった。
「……ッ〜〜…!?!?」
僕は思わずその場にしゃがみこんだ。じんわり熱くなった顔を隠して、早まっていく鼓動に焦りを感じる。
どうやら俺は、トキメイてしまったみたいだ。
コメント
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めっちゃ、このカプ好きです、!!