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#ヒューマンドラマ
#現代ファンタジー
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3人で乗ってきた、ひとりしか乗れないショベルカーを洞窟タイプのダンジョン入口付近に停める。
振り返ると、コンビニから漏れた灯りが煌々と輝いていた。
コンビニからダンジョンまでの距離、およそ200メートル。
小高い山の中腹あたりにあるとはいえ、ダンジョンへは歩いてきたほうが早かったと思う。
徒歩で三十分以上かかる駐車場までショベルカーを取りに行ったからだ。
ダンジョンの開口部あたりには、抹茶をぶちまけたような青々とした世界が広がっている。
そんな苔まみれで青のりパラダイスな光景を目にしたシスターが、
「多~い、お茶!」
と、おたけびをあげた。
つづけて、地面に刺さっている“月曜から土曜日は定休日です”の立て札をへし折ってみせた。
シスターが全力のコマネチポーズで叫んだのには少し引いたが、気持ちはわかる。
住宅街からさほど離れていない場所に、ダンジョンがあるとは誰も思わないだろう。
ゴツゴツとした岩肌。石の種類は不明だが、ほんのり青白い光を放っている。
ダンジョン内には、売店・バッティングセンターなどがあるというウワサだ。
残念ながら、今日は定休日らしいが。
俺は担いでいた“自動販売機”を地面に置いた。
飲料を選ぶのが面倒なため、自販機ごと買い取ったのだ。
魔術師のカネで。
シスターが、おつりの返却口に指をつっこむ。
首をかしげらかと思えば、自販機の下を覗き込んだ。
硬貨は落ちていないと俺は思うが……。
小銭の捜索をあきらめた様子のシスターが、自販機にしがみついた。
ひんやりしているとでも思ったのだろう。だが、熱かったようだ。
1日中、陽光をあびていたから自販機が熱を蓄えているのは無理もない。
シスターは目を吊り上げて自販機にケリを入れている。
おもしろいな、コイツ……。
シスターの行動は、見ている者を飽きさせない。
「おふたりさん。ちょっと聞きたいんだけど、自販機の電源はどうするんだい?」
鼻の穴にプラグをぶっこんだ俺の顔を、魔術師が不思議そうに見てくる。
「言わなかったか? 俺は雷(電気)属性の魔法が使える」
溜まった魔力は様々な用途に使える。
きらいなヤツの大事な記憶を消したり、池などに指を突っ込んで魚を獲ったり。
もう1回、きらいなヤツの大事な記憶を吹き飛ばすなどだ。
電子機器の充電には重宝している。
鼻と肛門はもとより、あらゆる穴から電気の放出が可能だ。
シスターが俺のカラダでスマホの充電をはじめたようだ。
「充電するなら言ってくれ。どうでもいいが、できれば“充電器”を差してくれ」
シスターは俺の肛門にスマホを直接ぶっこみやがった。
どんなプレイですか?
電気の出し惜しみをしているつもりはない。
俺の肛門から繰り出される電圧は鼻より高いため、危険だからだ。
5秒ほどでシスターのスマホが炎上した。
「SNSで暴言吐くと、なぜかアッシのスマホが燃えるんだよね……」
シスターがぼやく。
スマホがファイヤーした原因は、電圧ではなかったらしい。
炎上したSNSとスマホを俺の肛門で消火しないでくれ。
「オッケー! グングル先生。モンスターの情報を教えろ」
肛門から大量のケムリを噴き出しながら、俺はモンスターなどの情報をスマホアプリで確認した。
モンスターの写真を転送すると、ステータスなどの情報を送り返してくれる冒険者用アプリだ。
『もうすこし丁寧に頼んでください』
アプリから警告が飛んでくる。
質の悪い利用者に対抗しようと実装した機能だ。
ガサガサの音声が飛び出てきたのは予想外だが。
大枚をはたいて買ったナトリという女性のハスキーボイス(音声)に設定していたが、お値段以上にナトリだった。
「人に頼むときは低姿勢でいけし。アッシに貸してみ」
シスターが俺からスマホを奪い取り、力の限り地面に叩きつけた。
「スマホは手に持ったほうがいいと、俺は思うが……」
わーったよ。よく見とくし!
軽く咳払いをしたシスターが、ヒビの入った俺のスマホに向かって話しかける。
「ポッチーナックル。勇者の倒しかたを教えろし!」
今日も俺にバトルを挑む気なのか? シスターとは、今まで100回戦っている。
戦績は50勝50敗。
そろそろ決着をつけたいと思っていたところだ。
『あなたの顔面偏差値は、95ヘクトパスカルです』
アプリからの返答が予期しないものだったようだ。
キレ気味のシスターが、俺のスマホを民家の庭へ投げ込もうとしている。
「ちょっと待て。スマホの裏にマジックで俺の名前が書いてある。言ってみればマジックアイテムだ」
「いやいや、アッシの顔面なら『666』なめらかパステルはあるし!」
なめらかパステルって何?
単位なのか、それ?
俺は横文字に弱いが、シスターのほうがヤバかった。
「95ならまずまずだろ。高校なら超進学校レベルだ。気圧なら低めだが」
「バッチリ撮り直すし!」
スマホで自撮りを決め込むシスター。
ダブルピースをして、白目をむいたテヘペロな笑顔をスマホにむける。
シスターの顔は血色のいいゾンビのようだ。
「ドメホルン・リンクル。アッシのレベルを教えろし!」
シスターは化粧品の無料お試しセットが欲しいのだろうか。
いまから使いはじめても美肌になるのは時間を要するだろう。
『モンシスターの生きざまを表示します』
アプリが告げた。
シスターはモンスターという括りらしい。
アプリが気を利かせてモンスターとシスターを合体させたようだ。
俺が作ったアプリだ。自分でいうのもなんだが、優秀すぎる。
ひび割れたスマホの画面に表示されたシスターの情報を3人で覗き込む。
【レベル】 998・5
レベルカンストの1歩手前だ。
異世界にいたころの能力などは、現世でも通用するようだ。
【装備可能な武器】 ドンペリの空きビン・ ドンキのようなもの ・木刀・鉄パイプ・ネコ耳
ほかにも、アイスピック・パイプイス・一斗缶など、全100種の武器っぽい名称が連なっている。
ほぼ凶器じゃねぇか!
【特殊スキル】 凶器乱舞!
バールのようなもの、 ドンキのようなもの、木刀など大量の凶器をブン投げるワザらしい。
【装備可能な防具】 ノーブラ
防具は装備できないということか。
【排気量】 8リットル
シスター(おまえ)はアメ車ですか?
【趣味】 ダイナマイト栽培
趣味に関してはノーコメントだ。
シスターいわく、バストサイズはダイナマイトクラス。
好きな動物はダイナソーだ。
よく使う店は、100円ショップのギャランドゥらしい。
「そこは代走(ダイソー)にしとけ。ダイナ系で統一しろ!」
「アッシはダイナマイトボディーだからね」
「あとはボクがやるから。会話がデッドボール気味のふたりは近くで見ててよ」
バーベルをスマホに持ち替えた魔術師が、喉の調子を整える。スマホに向けて声を発した。
「オッケー! バーベル。リーダーのエロ動画コレクションを全部消して」
もういやだ、このパーティー……。
「なあ、クズ勇者。魔術師のステンドグラスも見てやれだし」
おそらくステータスのことだろう。
「ファッションセンスが壊滅的な魔術師のステータスか? アプリのテストにもなるし、見てやろう。オマエには全く興味はないがな」
証明写真でも撮るかのごとく、魔術師が引き締まらせた顔をスマホに向ける。
試しに魔術師の持っているバーベルを撮影する。
本来であれば顔写真を用いるが、テストが目的だ。
ダメ元でアプリにバーベルの写真を送ってみるか。
「なんか出てきたし」
俺とシスターは、魔術師のステータスが表示されているスマホを覗き込む。
【職業】 まじゅちゅるし(♂♀)
バーベル=魔術師という判定だった。
まじゅちゅるしだと? バグか?
性別は両性ということか?
【装備可能な防具】 タンクトップ、スキニーパンツ、ねじったバンダナ
かなり限定されている。
魔術師いわく、ねじらないとバンダナを装備できないらしい。
「Tシャツ(半袖)を着ると能力が半減しちゃうんだよね。あとね、Vネックじゃないとダメなんだよね」と、魔術師。
首元が丸型のタイプを装着すると、魔術師は即死するようだ。
どうでもいいよ……。
【スキル】 耐火・耐震・安全・快適
オマエは最新の住宅ですか?
ダメだ。俺の頭の中が『?』で埋め尽くされる。
「なあ、クズ勇者。魔術師の顔写真を転送したらどうなるんだ?」
シスターが他人に興味を示すのは珍しい。
「試す価値はありそうだ。結果は予想できるがな」
【職業】 植物性タンパク質(前世)
やっぱりすごいな。このアプリ。
さらに、魔術師のパラメータが表示される。
【実家の総資産】 5千億円
魔術師は金持ちのボンボンでした。
俺の資産(一兆円)には到底及ばないが。
【仕送り額】 200万円/月
これだけで年収1200万円か。
働け、魔術師。
【魔力】 200リットル
キ〇タマに貯蔵されるだけあって、コイツの魔力汁は圧縮されて保存されるらしい。
余談だが、俺の魔力汁は膀胱に溜まることが判明した。
てっきり血尿かと思っていたが、魔法の根源だったようで安心した。
【特記事項】 左の乳首で音量の調節ができます。右はボイスチェンジャーです
やっぱりな。
今度試してみるか。
画面をスクロールし、最後の項目を確認する。
【IQ】 5
見なかったことにしよう。邪神にくらった呪いのせいにしておこう。
当然、俺のステータスを確認する流れが出来上がる。
しぶしぶ、俺の顔写真をアプリに転送してみる。
スマホが吹き飛んだ。
150万円の特注スマホが……。
シスターが横を向いて笑いをこらえているし、ダンジョン攻略でもしますか。