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3章:ポポハスの青
27話:共鳴
朝日秀蘭
→痛覚 創造を具現化する能力
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〈注意〉
3章では暴力表現を扱うのシーンがあります。原作より柔らかい表現にし、注意喚起をするのでセンシティブ設定を付けていませんが、苦手な方はお気をつけ下さい。
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ー仕事場・鉱山内部ー ー秀蘭sideー
…あれから何時間経っただろう。
与えられたツルハシはもう鉛のように重く、汗が持ち手に垂れる。
彼もいくら魔法だけでも、この長時間作業で体力が削られているみたいだった。
「お…重い…。」
「あ゛?文句言わずに働け…よっ!!」
「…え?」
看守として居た大人は私の重いという発言を聞くなり突然頬を叩いてきた。
忌子だから痛みは感じないけど、理解が追いつかず困惑してしまう。
「なんなんだ?その目はっっっ!!」
ガンッッ!!
右腹部を蹴られる。瞬きした間に私は地面に伏せてしまってい た。右に左に蹴られ、呼吸が乱れる。痛みを感じなくても体は確実に弱っているみたい。
そういえばあのとき…メイに捕まったとき、なんで痛いって感じたんだろう…。
「他のこと考えてんのか?随分と余裕があるなっ!」
「あがっっ…!」
髪を掴まれ顔を上げさせられた上に、引っ張り揺さぶり、放たれてはまた掴まれる。
怖い…。久しぶりの暴力、暴言に私は体を強張らせてしまう。
ふと横を見る。
(…あ、彼が見てる…)
動きを止めこちらを伺っている。こんな場面を何回も見たことあると言っているような顔で。
その顔の分析をすると共に…祈ってしまう。
お願い…。
「うわぁぁっ!?」
「カハッ…ひゅー…」
願った矢先、看守の手から髪が離れ私は呼吸を整える。何があったのかと看守を見ると看守は宙に浮いていた。
どうやら、死んだ魚の目をしていた彼が少しだけの生気を宿し、浮遊魔法を使ったようだ。
「てめーっ!ざけんなよっ!!!」
と叫びながら看守は手に持っていたボタンを押す。
「ゔっあっ…っっっっ!!!」
途端に彼が苦しみ出し、地面に膝から崩れる。
…彼の首輪から電流が流れているみたいだ。私のピアスがピリリと揺れる。
私のせい…私のせいで…。
ううん、私には何ができる?彼は私を助けようとして…!
!!!!!!!!
「…え、?」
目の前から看守がいなくなり、驚き固まる彼は首を触りながら立ち上がる。はぁ…っと安堵した声と同時に期待と恐怖の目を私に向けた。
「…お前、何したの?」
「っ…。」
言葉が詰まる。
だって私が考えたのは ゼロ化 だった。
意味も知らないのに咄嗟に出てきた言葉を強く考えたら看守が消えた…。私だってどうしてこうなったのか言語化できない。
私は無意識に右の頬…印の位置をテープの上からなぞった。その仕草を見て…
ぺりっ…。
「あっ…!」
「…!お前…!」
彼は私のテープを剥がし、忌子という証明書が曝け出されてしまった。
私の印を見て彼はテープを手で剥がした状態で固まる。時間が止まったように。
どうしよう…。彼にも首に同じマークがあるのには気づいていた。でも聞くタイミングが無かったし…。
見られたという憂慮や黙っていた申し訳なさ、隠していたと思われるかもしれない恐怖など、様々な感情が心に渦巻く。
幾分か間が空いた…。だけどそんな取り留めのない不安を吹き飛ばすように彼は私の顔を覗き込み…
ここに来て初めての彼の穏やかな声や 優しく見つめる二重の目。 不器用に曲がる口角…
…大丈夫かもしれないな。
「ごめんなさい。私…その…」
__私も貴方と一緒なの。