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3章:ポポハスの青
28話:触れて、逃げようと。
朝日秀蘭
→痛覚 創造を具現化する能力
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〈注意〉
3章では暴力表現を扱うのシーンがあります。原作より柔らかい表現にし、注意喚起をするのでセンシティブ設定を付けていませんが、苦手な方はお気をつけ下さい。
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ー仕事場・鉱山内部ー ー秀蘭sideー
「なぁ、お前のこともっと教えて?看守も消えたし、今ならここ安全だからさ。」
鉱山の中は少し肌寒く陰湿だったが…さっきと違って彼の雰囲気が暖かく変わった気がした。 確かに今なら…。
「創造を具現化する…か。」
「うん。それでゼロ化を考えて。…ねぇ、ゼロ化ってなんなの?」
すると彼は顔を上げたまま堂々と話し出した。
「ゼロ化…。ここでの皮肉言葉さ。労働に耐えられなくなった子に使うね。」
「皮肉?」
「死ぬ=使えなくなる。アイツらはそんな子へ労働から解放するため存在を消す、初期化するって意味を込めてんだ。」
彼は亡くなった人々へ情という配慮もせず淡々と、でもどこか恨みを込めた声で説明した。
「存在しない、元からない0。その状態にする。だからゼロ化っていう言葉遊びされてんだ。」
「…えっ、ま、待ってじゃあ…私、っ」
…また私は…、また、ひとを…不幸に…
血の気が引く。私が考えたから、っ、。
「おい。」
私の自責を止めるように彼は私の右頬に触れた。まだテープをつけてないからその印を隠すようにそっと。その手に私の涙が垂れてしまっても彼は退けなかった。
「大丈夫だよ。ゼロ化に適応したってことはあの看守は元から存在する魂が弱かったんだ。お前は…秀蘭は悪くないよ。」
私の名前…覚えてたんだ…。
「…貴方それ、根本的解決になってないよ。」
「ん、そう?」
私は涙を袖で拭く。
「ってか、貴方って余所余所しい。俺、香異 双斗。改めてよろしく。」
私の頬から退けた手を今度はぐいっと前に持ってきて静かに微笑んだ。
双斗…。きっとこの人も本当は優しい人なんだろうな。
「双斗…うん、よろしく。」
私は彼の手を取りアイサツした。
私たちは自分達の檻に戻ってきた。
途中、看守はどうしたんだ?と他の大人に聞かれたが、気づいたらいなくなっていた、時間だから戻ってきた、と彼…双斗のフォローによりなんとか帰ってきたところだった。
「…ねぇ、一緒に外に出る方法って分かる?」
「は…?」
彼は怪訝な顔でこちらを見返す。
「私、仲間が外にいるの。心配かけてるかもだし…。それに、みんなもメイになにかされていたら…!」
「ボスに捕まったならここに来るはずだからお前の仲間は外だと思うよ。…でもなんで一緒になの?」
せっかく話してくれるようになったんだ。ここは言葉を選んでしっかり外に出ることを伝えないと。
「…助けてくれたから。今度は私が一緒に逃げて…!」
「逃げてどうなんの!!」
双斗は声を張り上げた。周りの檻の子は不思議そうにこっちを見てる。それに気づいたのか双斗は少し俯いた。
「…逃げてどうなんの?俺ら忌子のお先は真っ暗で、生きてたってさぁ…」
少し声を震わせてたから、泣いているのかと一瞬思った。
…。
「…私もそう思うよ。忌子で生まれた以上、未来の保証なんてどこにもない。…けど、私を必要とする人がいる。」
__雷電魔法__
「それに、この魔法がなんで私を選んだのか知りたい。」
双斗はさっきよりも声を大きくする。思わず私も肩をびくっとさせてしまった。
さっきの震えた声は泣き声なんかじゃなくて怒りからだったのかもしれない。
謝った方が…。
いや、待って。
「双斗…。貴方、一体何をそんなにここに固執しているの…?」
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