テラーノベル
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それからも、週に一度はバーに顔を出していた。
大体、金曜の仕事終わり。早い時間に向かえば店はまだ空いていて、静かにお酒を楽しめるから仕事終わりすぐにバーに向かう。
店へ行く前には、必ず雅に連絡を入れることにしている。
«今日店行くから»
«はいはい»
そんな緩い適当な返事を見て、スマートフォンをしまう。
大体昼休みくらいに行くと連絡してから数時間後。
店のドアを開けると、カウンターの中から玲くんと雅が揃って出迎えてくれた。
「あ、夏帆ちゃん。いらっしゃい」
玲くんの優しい笑顔に、仕事の疲れが溶けていく。「玲くん」と私も自然に顔が綻び軽く手を振る。
「おいこら、俺は無視か」
不服そうな雅に少し笑って、いつもの席が空いていたからそこにいつも通りに腰掛けた。
「あんたとは定期的に連絡取ってるでしょ」
不服そうな雅を適当にあしらいながら、いつもの指定席に腰を下ろす。
平日の真ん中に店に来いと呼び出しがかかることだってある。気が向けば行くし、面倒なら断る。断った時には文句のLINEが飛んでくることもあるけれど、特に気にもしない。
再会してからしばらく経つが、私と雅は、心地よい友人関係を築けていた。
雅とそんなやりとりをしていると玲くんの視線がこちらに向く。
「え、俺も夏帆ちゃんの連絡先知りたい。教えて」
私と雅が連絡を取り合っていると知ってか、玲くんもそう言ってスマートフォンを取り出した。
この店とは長い付き合いになりそうだし、何より玲くんの連絡先なら持っておいて損はない。私はすぐにLINEのQRコードを表示した。
「やった、これで俺も連絡できるね」
画面を読み取り、玲くんが眩しさを感じる程の可愛らしい笑顔を浮かべる。
「うっ」
そんな笑顔に胸を抑えて、思わず撃たれたような反応をしてしまった。
まさに疲れた心のオアシス。最近の私の労働意欲は、間違いなくこのイケメンたちに癒やされるために注がれている。
「夏帆ちゃんどうしたの?」
「いつもの発作、放っとけ」
不思議そうに首を傾げる玲くんを余所に、雅が真顔で言い放った。
腹は立つけれど、実際その通りなので何も否定できなかった。
誰よりもイケメンが好きで、イケメンを見ると悶える発作を知っている雅は気にする事も無く煙草を蒸かしている。
何とか気を落ち着かせ、席に着きカクテルを注文し、そこからはいつもの他愛のない時間だった。
玲くんが別の客の対応に回り、雅が他のお客さんに呼ばれるまでの間、私はずっと気になっていたことを切り出すことにした。
「そう言えば聞きたかったんだけど、大学卒業した後、ここを離れて就職したでしょ? 営業の仕事から何があって急にバーなの?」
雅は一瞬だけこちらに視線を向けたが、すぐに手元のシェイカーへと意識を戻した。
かつての彼は大企業に就職し、一年目から営業部で頭角を現していた。その当時は今の私と同じくらい、仕事一筋な姿もあった。毎日忙しく飛び回り、着実に成績を伸ばして、あんなに充実して見えたから、現在、彼がバーテンダーとして働いているのが、少し意外だと思った。
今の仕事が不満そうに見えるわけじゃないけれど、ふとした興味が勝ち、質問せずにはいられなかった。
「玲が店出すって、スカウトされたから」
「ここ、玲くんのお店だったの!? 二人しか居ないなとは思ってたけど…。ていうか、自分で営業向いてるって言ってなかった?」
「向いてたけど、別に続けたくはなかったから」
「何で?楽しくなかった?」
畳みかけるような私の質問に、雅がわずかに眉を寄せ、それから軽く溜息を吐き「本当、変わってないよな。お前」と吐き捨てるように呟いていた。
その言葉の真意が掴めず、私は首を傾げた。
「変わってないって、どういう意味?」
問い返すと、雅の表情があからさまに苛立ったものになる。
「質問が止まんねぇガキかてめぇは! 何でもかんでもなんで、なんで? って、自分で考えろ!」
「言ってくれなきゃ答え合わせ出来ないでしょうが! バカね!」
「その内気が向いたら勝手に言うからもう黙れ!」
結局、最後まで答えは教えてもらえなかった。
昔から何でも正直に明け透けに話す雅が、こんな風に言葉を濁すなんて珍しいと思った。
コメント
1件
読み終えました〜! 夏帆ちゃんと雅の、ぎこちないけど確かに通じ合ってる空気感がすごく好きです。玲くんの「連絡先知りたい」発言には思わず「分かる!」ってなっちゃいました(笑)あのイケメンコンビに囲まれて癒やされる日々…憧れる…。 でもラストの雅の「その内気が向いたら言う」って言葉、すごく引っかかります。何か隠してる? それともまだ踏み込めない過去があるのかな。続きが気になります!
まなこ〜友
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