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ダンッ!! 衝撃音が母屋に響く。
盗賊「なあ!やらせてくれよ!」
剣豪「ダメだ。安全そうなダンジョンなら他に探しておくから……」
盗賊「いーや!やらせてくれ!俺は真剣だぜ?」
言い合う声を聞きつけ、風神と雷神が駆け寄る。
雷神「どうしたの剣豪君!?」
剣豪「ああ、雷神と風神か」
盗賊「なあ!聞いてくれよ!金鉱山のダンジョンに行かせてくれって言ってるのに聞いてくれねぇんだよ!」
盗賊が雷神と風神の前でまくし立てる。
雷神「金鉱山って……私達で行こうって言ってたところだよね?」
風神「うん。でもね盗賊君、ここまで言うってことは剣豪君にも何か理由があるんだよ。ね?剣豪君」
剣豪「ああ……こいつ、狩人魔法使い巫女で行きたいんだと。」
雷神「ああーそういう……冬乃が聞いたらどんな顔するか……」
風神「1回狩人君達に聞いてみたら?」
剣豪「うーん……まあ、本人達には聞いといた方が良いか……」
悩む素振りを見せたが、剣豪は風神に向かって、盗賊にはバレないように親指を立てて「ナイス」と伝えていた。しっかりしている狩人ならきっと盗賊を止めてくれる、そう踏んだのだろう。
狩人「……ごめん」
魔法使いと巫女は外出中で、応じたのは狩人だけだった。狩人は話を聞くと、ただ俯いてそう呟いただけだった。
狩人「やっぱり……」
剣豪「分かれば良いんだ。簡単そうなダンジョンは探しといてやるから、また少しずつ慣らしていけば良いんだよ。盗賊もそれで……」
狩人「盗賊君だけに任せるのは良くないよね」
剣豪「……は?」
狩人「剣豪さん、僕からもお願いです。」
深々と頭を下げる狩人を見て、剣豪は一瞬呆気に取られてしまった。だんだん冷静さが戻ってくると、目の前の状況を改めて見た。圧倒的にこちらが不利だ。
剣豪「マジかよ……」
盗賊「なあ!良いだろ?だって金鉱山はダンジョン化して日が浅いし、あんま強いモンスターもいねぇだろ?俺たちの練習には持ってこいだ!じゃあな、外で魔法使いと巫女が待ってるんだ、これ以上待たせるわけにはいかねぇんだ!」
そう言うと、二人はさっさと外へ出ていってしまった。
雷神「行っちゃった……魔法使いちゃんと巫女がいなかったのって外で待たせてたからか……」
剣豪「……風神、あいつらの声とか音とか拾えるか?」
剣豪がいつになく低い声で言う。
風神「うーん……ダンジョンだからあんまり音は拾えないよ。せいぜい私だけしか聞けないかな。」
剣豪「……良い。お前だけでも聞いとけ。ヤバそうだったら逃がしてくれないか?」
風神「わかった。……やっぱり、まだ早いよね。」
剣豪「……まあ、それもあるんだが……雷神、そういえばあいつらに話さなかったっけか?この辺りのモンスターの異常発生。」
雷神「そういえば……でも、あれとは一回戦ってるからその強さは分かって……」
剣豪「それでも行けるとでも思ったんだろう。……確かに前の時あいつらはよくやったよ。でもほぼ相討ちだったってのに……」
ジェネ「どうした?」
そこにジェネラルがやって来た。少しかがんで魔法少女の片腕を首に回している。
雷神「それはこっちのセリフなんだけど……どうしたの魔法少女」
ジェネ「魔法の練習に付き合わされたんだ。それで魔力使い果たしてこのザマだ」
魔法少女「だってぇ……ジェネラル暇そうだったし手伝いがいるなら倒れても大丈夫だし」
ジェネ「お前……まさか最初から俺に運ばせる気でいたのかよ」
するとジェネラルが魔法少女を支えていた手をいきなり離した。
魔法少女「わっ!」
ジェネラルが屈んでいたとは言え爪先しか床に着いていない状態で落とされ、魔法少女は尻もちをついた。
魔法少女「いった……もう!何してくれてんのよ!!」
ジェネ「人をパシっておいてよく言うな……それより、何してたんだ?」
剣豪「ああ。実はかくかく然々……」
ジェネ「……それ本気で言ってるのかあいつら……」
魔法少女「早く行って連れ戻さなきゃ!」
剣豪「いや。いい。二度とあんなこと言わせねぇように「教育」しなきゃなぁ?」
雷神「風ちゃん?声聞こえてるんだよね!?なるべく早めに連れ戻してあげてね?」
風神「うん……でも、今のところ余裕そうだよ?中々やるねぇ……」
盗賊「なんだ、意外と行けるじゃねぇか」
一方、4人は金鉱山のダンジョンを軽々攻略していた。
狩人「やっぱりダンジョン化して日が浅いからまだ強いモンスターはいないんだね」
魔法使い「じゃあさっさと終わらせて帰ろ!無傷で帰ってきてる私達見たらきっとびっくりするよ!」
その時。後ろから魔力の気配があった。魔力弾だ。巫女がガードを張って、何とか持ちこたえた。
?「ん?あいつらから気を付けろって聞いてた顔じゃねぇな。雑魚には興味ねぇんだ。退いてくれ」
見ると、オレンジの道着に身を包んだ金髪の男が立っていた。ジャンプと名乗るその男は、4人にはまるで興味がないといった感じだ。
盗賊「……誰が雑魚だよ!」
盗賊がまず向かっていく。しかし、盗賊のナイフは素手で受け止められ、へし折られてしまった。瞬間移動を多用しながら、エネルギー弾で4人を翻弄する。
狩人「『レイザーフォーテル』!」
狩人の矢がジャンプの撃つエネルギー弾を相殺していく。しかし、速さで徐々に押されていく。
1つだけ、狩人が撃てなかったエネルギー弾が、巫女を狙う。
巫女「『守りの陣』!」
4人を覆う大きなバリアが現れた。エネルギー弾を弾く。しかし、これでは勝ち目は無い。
魔法使い「(まずい……これじゃ全滅……!?いや……これだけ瞬間移動を使ってたら魔力持たないはず……!なら!)『ポイズンミスト』!(ちょっとでも弱らせて動きを鈍らせる……!)」
辺りを毒の霧が覆う。ナイフを素手でへし折るような怪力の持ち主でも、毒には耐えられる訳がない。しかし、ジャンプの動きは少し鈍っただけだった。霧でジャンプの視界を奪ったことで生じたその一瞬の隙を、魔法使いは狙っていた。
魔法使い「狩人君!今だ!(これであとは時間の問題……耐えきれば……!)」
狩人「『爆雷矢』!」
ジャンプ「なっ……!」
避けようにも、動けば毒が肺に入り、体を蝕む。勝ちを確信した魔法使いの背後。シュンっという音と共に、ジャンプが移動していた。ちょうど投げられたナイフを取り、魔法使いに突き刺した。
魔法使い「あ゛っ!!」
狩人「(嘘だろ……!?僕の矢は……!?)」
魔法が解け、晴れた視界に入ったのは、血に塗れ、真ん中で折られた矢だった。矢は正確にジャンプの腹に刺さった。その証拠にジャンプの腹には穴が開いている。しかし、貫通はしていない。その矢が貫通する前に引き抜き、矢を真っ二つに折ったのだ。
狩人「(そんな芸当が出来るのか……!?同じゆっくりだよな……?)」
戸惑う狩人に、緑のエネルギー弾が迫る。
巫女「守りのじ……きゃぁっ!」
ガードもジャンプの足であっさり割られ、反動で巫女も壁に叩きつけられた。
狩人「がはっ!」
慌てて撃った矢も、あらぬ方へ飛んでいったのを最後に、狩人は意識を手放した。そして、その矢はジャンプの手中に収まっていた。矢を盗賊に投げる。それは盗賊の右腕を貫き、盗賊はナイフを取り落とした。
盗賊「うっ……!」
そこに、エネルギー弾を打ち込もうとした時。どさりという音と共にジャンプと盗賊が倒れた。
洞窟の中にも関わらず吹いていた風が強くなった。やがてそこに人影が現れた。冬乃と風神だ。冬乃はただただ言葉を失っている。
風神「大丈夫!?」
風神が盗賊の矢を抜き、回復魔法をかける。冬乃も他の3人の状態を確認し始めた。