テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
臣桜
46,926
BrownSugar
2,386
#オフィスラブ
猫塚ルイ

1,050
209
コメント
1件
第102話、読み終わりました。 離婚が正式に成立して、少しほっとしましたね。純也の浮気や妊娠の事情がここまで重くのしかかっていたんだなと改めて感じました。 特に印象的だったのは「普通の幸せ」という言葉。「仕事以外で日々の話し相手がいる」というリュカさんとの穏やかな日常が、これまでの苦労に対する静かなご褒美のように思えて、胸がじんわり温かくなりました。お腹の膨らみを感じながら、彼に見守られている主人公の姿がとても美しかったです。 少しずつ新しい幸せが根付いていく感じが、丁寧に描かれていて素敵だと思いました。引き続き応援していますね。
私
純也
そして
リュカ
三人が鉢合わせた
人もまばらな平日の早朝
静まり返ったファミレスで
白日の下となった離婚協議と純也の浮気
私とリュカにとどまらず
公衆の面前に晒される格好となった純也は
最終的に離婚届に署名した——
***
「……はい、不備はなさそうですね」
「では、当離婚届を受理致します」
その日
提出した離婚届は正式に受理され
その日を以て
公的に私と純也の離婚が成立した
私と純也とリュカが署名をした
その日の内に役所へと出向き
受理印の押された離婚届の控えと
離婚証明書を受け取った
長かったような
短かったような
いずれにせよ
ここまで集中して何かに尽力したことは
思えば仕事上でもなかったかもしれない
自分の人生と
我が子の人生
そして
愛する人の人生
それらを背負った緊張と重圧が
私を後押しし
その重圧に圧し潰されなかった私は
晴れて成し遂げることが出来た
とはいえ
全てが順風満帆だったわけではない
全てが最善な結果だったわけでもない
離婚という結果は得たものの
本来すべきであった合意内容の書面化や
協議での取り決めを
事前に詰めることが出来なかった
それは
純也が話し合いにすら向き合わず
協議に応じてくれなかったのもあるが
私に時間的な制約があったこともある
日々進行する妊娠が
離婚を急いだ理由の一つでもあった
そして
結局私は
純也との妊娠の事実を
純也本人に告げることなく
全てを伏せたまま
離婚を成立させるに至った
決して褒められたものではないが
それを基に拗れる事態は避けられた
共有資産などほぼ無い私たちからすれば
その他は微々たるもの
私の境遇を振り返れば
慰謝料の請求があっても良いかもしれないが
そこまで純也を追い詰めたくはなかった
これから
純也は損害賠償を請求されるかもしれない状況
離婚に至っても
軽微な思いやりは未だに残る
***
ピンポーン♪
ピ♪
ガチャ!
「やあ!どう?落ち着いた?」
「お仕事お疲れ様!」
「ん~……ボチボチかな?」
私は
離婚後すぐに純也と暮らした家を離れ
リュカが用意してくれた
マンスリーマンションへと拠点を移した
会社からも元居た家からもさほど離れていない
この住居を拠点に出社し
空いた時間に元居た家から荷物を運び出している
リュカ宅へお邪魔する手もあったが
落ち着くまではとのリュカの配慮から
当面はここで生活をすることにした
荷物を取りに家に戻る度に
純也に出くわす
純也は未だ出社していない
その度に財産分与云々と
嫌がらせのような言葉を投げかけられるが
基本的に全て受け入れた
そもそも金銭的な共有資産などない
私は
私物意外の何も必要ないし
私物だけを搬出した
水道光熱費やその他諸々
支払っていたのは私だけど
家とその他の契約はほぼ純也名義
純也はそこに留まり
私が出て行くことは難しくなかった
「晩ご飯まだでしょ?お腹空いた?」
「すいた~、ペコペコだよ」
「じゃあすぐご飯にするね」
リュカは
頻繁に顔を出してくれている
同棲とまでは至らずとも
一緒に夕飯を食べる機会が増えた
「体調はどう?」
「ん~、日によるけど……」
「正常な範囲内だと思う」
「妊婦健診は順調?」
「うん、今のところ」
「何かね……まだ気のせいかもだけど」
「少しお腹が膨み始めた気がする」
その日も帰りに寄ってくれたリュカ
腹ペコのリュカと卓を囲み
作りたての温かい夕飯を共にする
仕事以外で日々の話し相手がいる
ただそれだけの普通が
こんなにも尊いことだと知った
これまで純也との経験しかなかった私が
その外界を知り
未経験を経験し
普通を学び
今
その喜びを噛み締めている
「お腹が大きくなり始めたら……」
「仕事とかもどうするか考えなきゃかも」
「そうだね……」
「でももう瑠奈は一人で自由の身なんだ」
「自分が望むように、したいようにすればいいさ」
リュカは
相変わらず強制はせず
私の意志を尊重してくれる
それでいて
私の意志を全力で支えてくれる
こんな人間関係もあるのだと
純也しか知らない自分には至れなかった
大切な人との関係性を知った
「そういえば、不正の損害賠償の件……」
「何か拗れてるみたいだよ」
「そうなの?拗れてるって?」
「うちの購買部の子は当初は概ね全面的に認めてたんだけど……」
「相手側、つまり瑠奈の元旦那さんだな……」
「うち側の手引きに従っただけで、そんな意志は無かったと供述してるみたい」
「その後、うちの子の方も細々否定し始めて押し付け合いの様相を呈してる」
「泥沼化してるのね……」
「その辺の責任割合は請求額に関わることだからね……」
「そこが明確に確定しないから未だに結論に達していない」
「まあ他社が絡んでることだから曖昧なまま一方的な判断出来ないし」
「あの二人の関係も拗れてしまったのかもね」