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『愛重恋愛-アイジュウ レンアイ-』〜愛が彼を狂わせる〜
第8話 手にかけてしまった愛の印
『友人として…君を止めるのが私の役目だ。君が間違った道に進んだなら連れ戻すのが私の役目…。ベリアン。戻っておいで。』
ガキンっ!!
鎌と槍が交差し合う。
ギリギリ…ッ。
『もう戻るつもりはありません…。一般人と2人の執事を手にかけた…私は主様に近づく者全て狩るんです。』
『主様は…っ、そんなこと望んでない。きっと君に償って欲しいと思ってる。』
『主様は私のことが好きなんです。あの方が私を捨てるなんて有り得ませんから。』
ブンッ!
『っ!!』
『流石ルカスさん、一筋縄ではいかないですね。』
『っ……。』
一方その頃。
裏山へ向かって走る主様を抱えたボスキとハウレス。
『主様…。』
『…なに?ボスキ。』
『…何か企んでるよな。』
『……。』
『頼むから馬鹿な真似はやめろ。何をするかは想像つかねぇけど…優しいあんたなら…きっと…』
『…どんな結末になっても。受け入れて。ボスキ。』
『っ…』
ギュッと主様の腕を掴む。
『ふざけんなよ…っ。』
『主様……?一体何の話をして…。』
グサッ!!
『うぐ…っ!』
『浅いですね…。』
『う、ぐぅ…』
お腹を押えて倒れ込む。
ドサッ!
『残念でしたね。ルカスさん。貴方では私を止められない。』
『ふ…っ。私では…ね。』
『……?』
ルカスさんの指差す方を見たらボスキ君とハウレス君、そして、主様がいた。
『主、様…?どうしてここに…』
『…嫌な予感がしたから。ボスキ、ありがとう。下ろして。』
『…あぁ。』
『…ベリアンがやったんでしょ?私にサインを求めた青年ロレッタさんも。そして……』
『っ、待てよ…そこに倒れてるの…』
『『アモン!!ロノ!!』』
2人は声を荒らげ、倒れてる2人に近付く。
『――。』『――。』
『おい、アモン!起きろよ、おい!』
『ロノ、ロノ…!!』
『…2人とも、もう無理だ。2人はベリアンに…』
『え…?ベリアンさんが…?』
『ロノとアモンのことをこんな目に…?』
俺達はベリアンさんを睨む。
『どうして、ここに…?主様。』
『認めてよ。ベリアン。貴方は…愛の為に殺した。そういうんでしょ…?こんなの…愛じゃない。こんな愛なら私は欲しくない…』
『っ、待ってください、それ以上は――!!』
『ベリアンなんて…大嫌い――っ!』
私は涙を流す。
『は…っ!!』
(そんな、嫌です、私は、私は、貴方のために…ッ!!!!!)
ジャキッ
『ベリアンさん…っ!!どうして2人を…っ!』
『まともだと思ってたのは俺達の間違いだったんだな。ベリアンさん。』
俺達は武器を構える。
『……貴方達のせいだ。貴方達が主様を狂わせたんだ。』
『っ、ベリアン、やめるんだ。これ以上手を汚すのは…っ!!』
私は起き上がり、武器を構える。
『…すぅ…。』
私は息を吸って力の解放の呪文を唱える。
『来たれ、闇の盟友よ。我は汝を召喚する。ここに、ハウレス、ボスキ、ルカスのチカラを解放せよ。』
『『『主様――!?』』』
『…悪魔に対抗するには悪魔の力しかない。ベリアンを止めるにはもうこの道しかないから。』
(…大丈夫。ベリアン。私が貴方を救ってあげる。)
『っ…。貴方まで私を裏切るんですね。いいでしょう…そんな貴方も好きですから。』
私は3人に向かって走る。
ガキンっ!!ジャキンッ!!
カキンカキン…ッ!!
『かは…っ!!』
『ぐぁ…っ。』
『っ、刺された傷が…。』
『悪魔の力を解放したからって勝てると思いましたか?私は2000年以上生きた悪魔執事ですよ。皆さんと会う前に沢山研鑽を積んできました。負ける訳ありません。』
『っ…。』
『さて…手負いのルカスさんから逝かせてあげますね♪2人は後からちゃんと殺してあげます。』
私は槍を振り上げる。その瞬間――。
『…この時をずっと待ってた。』
私は走り、ルカスの前に立つ。
ザシュッ!!
真っ赤な血飛沫が――地面に広がる。
『『『……!!!!』』』
言葉を失い、何も出てこない。
『え――?』
鋭い槍が胸に突き刺さり、私はドサッと倒れる。
『『『主様!!!』』』
3人は武器を落とし私に駆け寄る。
『ふ、ふふ、油断したでしょ…ベリアン…。これが、私の望んだことだよ…っ。』
カランカラン……。
私は脱力し武器を落とす。
『ぁ、ぁ、あああああああ、……っ!!なんで、なんで、ルカスさんなんか庇って、私、は、自らの手で、主様を…っ!!』
(ああ…壊れてしまった。いや…私が壊したのか…。)
『すぐ止血します!!』
ガシッ!
私はルカスの腕を掴む。
『もう…手遅れ…だよ。ルカスなら…分かるでしょう……?』
『…っ。』
ルカスの契約悪魔フォラスの能力は…
命の灯火をみる
(死の淵に立つ人が、助かる見込みがあるかどうか見分ける)
『っ、これが主様の望んだことなのかよ…。』
『ごめんね…ボスキ…彼を止めるのは私の役目…彼を変えてしまったのは…私の、せい…だから…いいの』
『ふざけんなよ…っ。あんたが死ぬ理由なんて…ないだろ…っ。』
『…。ルカス…。私の代わりに…ベリアンを止めてくれてありがとう…』
『何言ってるんですか…私は止めてなんて…っ。』
『ルカスがベリアンを止めようとしてくれたから……私はこうして…うっ。ゲホッ!ゲホッ!』
私は赤黒い血を吐く。
『もう、時間切れかな…。アモンとロノに謝らなきゃね…。』
『主様……そんな…っ。』
『ありがと…ぅ…。』
つぅ……。
涙が頬を伝い…静かに地面に落ちた。
命の灯火が消えた音がした。
『……。』
私は落とした武器を拾う。
『主様の居ない世界なんて…意味が無いです。』
『っ、ベリアン……?まさか…』
『今そちらへ行きますからね。』
ザシュッ!!
私は自らの首を切る。
ドサッ!
『…っ。これが…2人の望んだことなのかよ…』
『どうして、こんなことに……』
『……。』
私は2人の首元を見る。
『お揃いのネックレス…。お互いを縛り…所有してたかったんだね。2人は。そして愛の束縛が強かったのはベリアンの方で…主様はただ純粋に愛していた。ベリアンのことを。これが望んだ結末なんて…嘘に決まってる。こんな…。心中みたいなこと…望んでないに決まってる。それなのに――。なんで貴方は…笑顔なんですか……っっ。』
その後のことは…風のように事が過ぎた。
次回
最終話 間違った結末
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