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🐬「おはよ、まなと!」
教室に入った瞬間、聞き慣れた声が飛んできた。
反射みたいに視線を向ける。
そこには、いつもと変わらない笑顔のそうた――と
その隣に、あの子がいた。
🐧「……おはよ」
少し遅れて返す。
たったそれだけのことなのに、
胸の奥がざわつく。
🐬「昨日さ、帰り一緒だったんだよ」
そうたが嬉しそうに言う。
🐧「あ、そうなんだ」
知ってる。
言われなくても分かる。
でも、こうやって言葉にされると、
現実として突きつけられるみたいで。
🐬「なんかさ、めっちゃ緊張してさ」
照れたように笑う。
その顔を、隣で楽しそうに見てる彼女。
――似合ってるな。
やめろ。
そう思うのに、どうしてもそう感じてしまう。
👧🏻「まなとくん、いつもそうたと仲いいよね」
不意に声をかけられる。
視線を向けると、彼女がこちらを見ていた。
🐧「あ、うん。まあ」
ぎこちなく答える。
👧🏻「よく話聞いてるよ。すごい大事な友達なんだって」
その言葉に、少しだけ呼吸が止まる。
大事な友達
そうだよな。
それ以上でも、それ以下でもない。
🐧「……そうなんだ」
それしか言えない。
👧🏻「なんか羨ましいかも」
彼女が笑う。
無邪気で、悪気なんて一切ない顔で。
👧🏻「そんな風に言える相手がいるの」
――それ、俺も同じだよ。
でも、意味は全然違うけど。
🐧「まあ、長いからね」
適当に返す。
これ以上、ここにいたくなかった。
⸻
昼休み。
いつもなら一緒に昼を食べるはずなのに。
🐬「ごめん、まなと。今日ちょっと」
そうたが言って、視線を彼女に向ける。
🐧「いいよ、別に」
先に言う。
断られる前に。
🐬「また後でな」
軽く言って、二人で教室を出ていく。
残された席。
向かい側の空いた椅子が、やけに目につく。
🐧「……はあ」
小さく息を吐く。
分かってたことだ。
こうなるって。
当たり前だろ。
彼女ができたんだから、優先順位が変わるなんて。
🐧「……分かってるっつーの」
誰に言うでもなく呟く。
でも、納得できるかどうかは別だ。
⸻
放課後。
帰ろうとしたところで、後ろから声がした。
🐬「まなと」
振り向くと、そうたが少しだけ焦った顔で立っている。
🐬「今日、一緒帰れなくて悪い」
🐧「別に大丈夫だよ」
視線を合わせないまま答える。
🐬「いや、なんかさ」
言いにくそうに、言葉を探してる。
🐬「最近ちょっと…話す時間減ったじゃん」
――誰のせいだよ。
喉まで出かかって、飲み込む。
🐧「彼女いるんだから、そりゃそうだろ」
できるだけ普通に言う。
でも、少しだけ棘が混ざった気がした。
🐬「いや、でも」
そうたが一歩近づく。
🐬「まなととは、その…変わりたくねえっていうか」
その言葉に、心臓が揺れる。
期待しそうになる。
でも。
🐧「無理だろ」
すぐに切り捨てる。
自分で。
🐧「変わるに決まってる」
少しだけ、強く言いすぎたかもしれない。
そうたが黙る。
🐬「……そう、だよな」
小さく返ってくる声。
その顔を見たくなくて、視線を逸らす。
🐧「じゃ、帰る」
それだけ言って、歩き出す。
🐬「まなと!」
呼ばれる。
でも、止まらない。
止まったら、全部崩れる気がした。
⸻
帰り道。
一人で歩くこの道が、こんなに長かったっけ。
いつもは、隣に誰かがいたのに。
🐧「……最悪」
小さく吐き出す。
自分が、こんな風に避けるみたいなことして。
でも、どうすればいい。
あんな顔で言われて。
変わりたくないなんて。
🐧「じゃあ、あの子と別れろよ」
思わず出た言葉に、自分で苦笑する。
そんなの、言えるわけない。
言ったところで、どうなる。
困らせるだけだ。
嫌われるだけだ。
🐧「……分かってる」
全部分かってるのに。
どうしても、納得できない。
⸻
その頃。
そうたは、教室に一人で残っていた。
さっきまでまなとがいた場所を、ぼんやり見つめる。
🐬「……なんだよ」
うまくいってるはずなのに。
彼女もできて。
ちゃんと、嬉しいはずなのに。
どうしてか、胸の奥が引っかかる。
🐬「なんであんな顔すんだよ」
思い出すのは、さっきのまなとの表情。
少しだけ、冷たくて。
遠くて。
知らない顔だった。
🐬「……意味わかんね」
小さく呟く。
でも、その“分からなさ”が、妙に残る。
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