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気づいたら、避けていた。
意識してるわけじゃないのに。
朝、そうたが来る前に教室に入って。
昼は適当に別のやつと食べて。
放課後は、理由をつけてすぐ帰る。
🐧「……なにやってんだろ」
自分でも分かってる。
逃げてるだけだって。
でも、顔を合わせると。
普通に話せる自信がなかった。
⸻
👦「最近さ、まなとどうしたの?」
クラスメイトに言われて、少しだけ手が止まる。
🐧「なにが?」
短く返す。
👦「そうたとあんま一緒いなくね?」
核心を突かれて、胸がざわつく。
🐧「たまたまだよ」
それ以上は、何も言わない。
言えるわけない。
⸻
昼休み。
廊下の端で、一人でパンをかじる。
前はこんなこと、なかったのに。
🐧「……はあ」
小さく息を吐いた、その時。
🐬「まなと!」
聞き慣れた声。
心臓が一瞬で跳ねる。
振り返ると、そうたが立っていた。
🐬「探した」
少しだけ息を切らしてる。
🐬「なんでこんなとこいんの」
🐧「別に」
視線を逸らす。
🐬「教室いなかったし」
🐧「たまたま」
会話が、続かない。
前は、こんなんじゃなかったのに。
🐬「……なあ」
そうたが、一歩近づく。
🐬「なんか避けてね?」
ド直球。
逃げ場がない。
🐧「避けてない」
即答する。
反射みたいに。
🐬「じゃあなんで最近一緒いねえの」
🐧「彼女といなよ」
思ったより強い声が出た。
一瞬、そうたが固まる。
🐬「……は?」
🐧「そっち優先でよくない?」
止まらない。
🐧「わざわざこっち来なくても」
言った瞬間、少しだけ後悔する。
でも、もう遅い。
🐬「……なんだよそれ」
そうたの声が低くなる。
🐧「別に普通のこと言ってるだけ」
強がる。
🐬「普通ってなんだよ」
🐧「彼女いるやつが、他のやつに構ってたらおかしいだろ」
本当は、そんなこと思ってない。
思いたくない。
でも、そう言うしかなかった。
🐬「お前、そういうこと言うやつだっけ」
静かな声。
でも、確実に怒ってる。
🐧「……知らねえよ」
視線を合わせない。
合わせたら、全部崩れる。
しばらく沈黙が落ちる。
廊下を通る人の足音だけが、やけに響く。
🐬「……意味わかんねえ」
ぽつりと、そうたが言う。
その声が、少しだけ遠い。
🐬「なんで急にそんななるんだよ」
その言葉に、胸が締めつけられる。
急にじゃねえよ。
ずっとだよ。
ずっと我慢してただけだよ。
言いたいのに、言えない。
🐧「……別に」
結局、それしか出てこない。
🐬「はぐらかすなよ」
一歩、さらに近づく。
逃げ場がなくなる。
🐬「なんかあるなら言えよ」
言えるわけないだろ。
お前のこと好きだから苦しいなんて。
🐧「……ない」
絞り出すように言う。
🐧「なんもない」
嘘だ。
全部嘘だ。
でも、それが一番マシな答えだった。
そうたが、しばらく黙る。
何か言いかけて、やめて。
🐬「……分かった」
低い声で、それだけ言った。
そのまま、背を向ける。
🐬「もういい」
その一言が、やけに重く落ちる。
遠ざかっていく背中。
――追えよ。
頭の中で声がする。
今ならまだ間に合うって。
でも、足が動かない。
動かしたら、全部終わる気がして。
結局、その日はそれっきりだった。
⸻
放課後。
教室で一人、ぼんやり座っていると。
さっきの言葉が、何度も頭をよぎる。
「もういい」
あんな風に言われたの、初めてで。
🐧「……は」
小さく笑う。
自分でやっといて。
何ショック受けてんだよ。
🐧「……最悪」
机に額を押しつける。
これでよかったんだ。
距離、取れたんだから。
これ以上苦しくならなくて済む。
そう思ってるはずなのに。
胸の奥が、ずっとざわざわしてる。
⸻
その頃。
そうたは、校舎裏でスマホを握りしめていた。
画面には、まなとの名前。
何回も開いて、閉じて。
結局、何も送れない。
🐬「……なんだよ、あいつ」
イライラする。
意味わかんねえ。
急に避けてきて。
突き放してきて。
🐬「なんもないわけねえだろ」
小さく吐き捨てる。
分かってる。
何かあるって。
でも、それが何か分からない。
分からないのに。
このまま離れていくのは、嫌だって思ってる。
🐬「……なんなんだよ、ほんと」
空を見上げる。
答えなんて、出ない。
でも一つだけ、はっきりしてる。
まなとがいなくなるのは、嫌だ。
それだけは、どうしても。