知らぬ間に闇医者√に入ってしまった昨日のことを思い出す。
この世界線に転生して、学力チートでアオハル予定が何を間違ったのか闇医者堕ち。何度考えてもどこの選択肢で間違えたのかわからない。まぁ、わかったところで、過去は変わらない。開き直ってアオハル希望のJC(副業:闇医者)として生きていこう。
前世であんなに頑張って勉強して医者になったのに闇医者か…いや、でも1回で200万だしな。むしろ普通の医者よりも良かったのでは…?
そうこう考えている内に目的の図書館に到着した。待ち合わせ相手を探すが見当たらない。キョロキョロと周りを見回すと、「手塚~こっち!」と大きな声で呼ばれた。視線を移すと髪の毛をぴっちり七三にまとめて分厚い眼鏡を掛けている子がこちらに手を振っている。ガリ勉スタイルの場地くんだった。隣のワンコ系の金髪くんは…拾ってきたのか?君は捨て犬とか拾っちゃう系の不良だし(勝手な妄想)。
「こいつは千冬。今日一緒に勉強すっから」「松野千冬っす。なんか100点取れる裏技教えてくれるって聞いたんで来ました」「…ん?100点?……頑張れば…100点取れるかも…ね…」
ちょっと場地くん!昨日言った点数の倍になってるぞ!!算数のお勉強からやるか??さすがに100点は…厳しいんじゃないかな!!!でも目標は高い方がいいか…よし始めよう。
…100点取れなかったからって殴るとかはやめてね。多分2人ともパンチ力はきっと100kg超えちゃってるんでしょ…。
場地くんが集めてきた過去問に目を通す。引っかけ問題は混じっているが性格の悪い問題を出すようなタイプではないらしい。最期の答案用紙の点数を見て…もう一回見て…3点???一桁どころか一桁前半って…あー…名前書き忘れとか?
場地圭介……………ってしっかり書いてありますね。
むしろどこを正解したのか気になって問題を順に目で追うが…あれ?正解してるとこなくない???さては、裏側にも問題があるんだな!
裏側には可愛い猫ちゃんが描かれてた。その隣には赤ペンで+3。
「……………」「それ上手く描けてるだろ!野良猫なんだけど、俺が行くと寄ってきてな」「……………」「場地さん、上手いっす!」「だろ。今度ペケJ描いてやるよ」「……………」「マジっすか!」「……………ねぇ」「ん??」「場地くんって問題読んでる?選択肢で答えるとこに無理やり文章書いてるし、他の問題で突然記号出てくるし…」「読んでねぇ。だってよ…なんでコイツ俺に命令してんの?「答えよ」とか命令すんじゃねぇって思うじゃん」「確かにそうっすね!流石場地さん!コイツお願いの仕方も知んねぇんっすかね!」
松野君まで同調しちゃったよ…これは松野君も同レベルってことだね。把握。
「んーじゃあ場地くんは誰になら命令されても許せる?」「…マイキーなら」「マイキー?マイケル?…じゃあその人に言われてると思って問題文章読んでみて」
口を尖らせてちょっと嫌そうな顔をしているが、答案用紙を受け取ってくれた。
「おっ答えてやっていいかなって思った!手塚すげぇな!!」
まさか問題を読むとこから解決しなきゃいけないとは思ってなかった。とりあえず一歩前進だ。
意外にも飲み込みは悪くない。さっきの3点?の答案も回答欄は全部埋めていたのは評価できる。わからないからって諦めずに何かしら答えてるだけでも十分だ。これなら…多少の…ほんのわずかな…1ミクロンほどは期待できるかもしれない。
松野くんと一緒なので協力しながら進めてるのは良い点なんだけど、2人ともすぐに脱線する。私が声を掛けて注意すると勉強を再開してくれるが、脱線時間が長くて進捗が悪い。
「2人ともまた話しして手が止まってる…」「わりぃわりぃ。勉強なんかより千冬と話してるほうが楽しいから」
おぃ!!!松野君!キュン!!!!!じゃないんだよ!!!またここでも少女マンガか????
「わかった…じゃあ休憩挟みながらやりましょう。3分間は集中して勉強してください。3分経ったらアラーム鳴らすので、1分間休憩で好きにしてOKです。で、またアラーム鳴ったら3分間勉強してください。それを繰り返します」「3分だけでいいのか?」「なんでそんな時間配分なんッスか?」「ボクシングって3分戦ったら1分休憩で繰り返すから、そういうのなら集中できるかなって思っただけ」「ボクシングと同じッスか」「よっしゃチャンピオン目指すぜ!!」
不良はボクシング好きかなって思っただけなんだけど、3分間はめっちゃ集中するし、この提案は当たりだったようだ。10Rを過ぎた辺りで、松野選手の手が止まり始めた。つられる様に場地選手の手も止まった。そろそろタオル投げ入れたほうがいいかな?休憩も兼ねて話しを聞くと、暗記しようとしても全然頭に入ってこないらしい。
暗記はね~興味ない言葉とか覚えられないもんね。そろそろ良いタイミングだし、2人に声を掛けて場所を移動する。2人を連れてきたのは公園。勉強は終わったと思ってはしゃぐ2人に教科書を突き付けたら思いっきり嫌そうな顔をされた。まだ勉強タイムは終わりじゃないからね。
「暗記なんて何度も繰り返すか、一回で忘れないようなインパクト付けるかしかないの。何度もやるのは嫌だろうから、インパクト作戦で行きましょう」「「????」」
2人ともキョトンとした顔可愛いぞ。同じ角度で首を傾げてるのは狙ってるのか???お姉さんにまかせなさい!大学の時に限界突破しそうな連中と3徹状態で編み出した秘技を伝授してあげよう。
社会の教科書を差し出して、赤線を引いた箇所を指差す。「松野くん、これ読んで」「墾田永年私財法?」「もっと必殺技っぽく読んで」「え??」「必殺技っぽく」「こ、こんでぇんえいねんしざいほぉぉ!」「じゃあ、場地君はキメポーズ付きで今の読んで」「キメポーズ?」「そう、早く!」「こんでんえいねんしざいほぉぉ!!!!」「じゃあ、松野くんはこっちを必殺技っぽく!」「班田収授法?…はぁぁんでん!しゅーーーーじゅほーーー!!!」
最初こそ恥ずかしさがあったが、所詮厨二病全盛期の男子だ。あとは楽しそうに赤線の単語で戦い始めた。
…やっぱり2人ともパンチ力100kg以上あるよね?ヒーローごっこっていうより組手みたいになってる…。巻き込まれる前に帰ろう。
「じゃあ次までに赤線のとこ全部覚えてきてねー」
闇医者認定されてから、往診にも付き合わされるようになった。今日は顔見知りだからと間先生はなしで私だけで行ってこいと言われ、医院の前に横付けされた黒塗りの車に押し込まれた。売られる??JCだから価値はあるかもしれない、しかも闇医者なんて付加価値もあった…ヤバい!!!!そう思ったが、着いた先はヤ○ザさんの事務所だった。良かった。
いや、何も良くないんだけどね。ここの事務所は私が闇医者デビューした時の初めての患者さんのとこで、前回も経過を見に来たことがあるので人身売買はされない…はず。強面だけど優しいおじ様だから…大丈夫だ…よね?
処置を終えると、お菓子の手土産を持たせてくれて車で家まで送ってくれるくらい優しかった。夜は母親が仕事で居ないので、前世のように門限とか気にする必要はないが…さすがに黒塗りの車で家の前まで送られるとご近所の目とか色々と困ると近くの公園で降ろしてもらった。
夜になると薄暗く不良が溜まっているらしい公園なのだが、先程まで本職の方を前にしていた私に怖いものなんて無いとばかりに公園内を突っ切った。林の奥から物音がして覗きこむと複数人が暴れている?違う、複数人にリンチされている!ヤバい!!警察呼ばなきゃ!!鞄から携帯を取り出そうとすると、気配に気付いたのか殴りかかっていた1人と目があった。なにやら怒声を上げながらこちらに近づいてくる…
「きゃ、きゃーーーーー!!!!!」
本当に怖い時には声は出ないらしいので、今は本当に怖い訳じゃないんだな。きっと今の声量なら聞こえたはず。
「お嬢???どうしました???……………てめぇら、お嬢に何しやがんだ?」
予想よりも早く駆けつけてくれた本職の方に一安心する。ぱっと見でわかる本職のドスの効いた声に不良たちはのまれて、蟻の子を散らすように逃げ去っていった。びっくりして尻もちをついた私を抱えて立ち去ろうとするから、袖をひっぱってリンチ現場に向かうように伝える。倒れているパンイチの男の子はかなり殴られているが致命傷はなさそうだ、それよりも女の子の方が気になる。腕から降ろしてもらうと、ここで待っててと伝えてから女の子に近づく。殴打の跡が痛々しいが、それよりも破れられた服が気にかかる。着ていたシャツを脱いで、彼女にかけてあげる。目からボタボタと涙が落ちるのを見るとゆっくりと抱き締めた。ヒクヒクと泣きじゃくる彼女の背中を優しく撫でていると、ビクッと彼女の肩が震えた。本職の方が高そうなスーツを手に私の方に近づいてきていたのだ。
「近付くなって言いましたよね!!」「あっ…でもお嬢の御み肌が…」「ありがとう…でも今は大丈夫だから」
シャツは脱いだけど下にキャミソール着てるし…というか、彼っていつから私の事お嬢って呼んでんだ???彼女の様子を見ると、未遂に終わったようだが男性には恐怖心を抱いているんだろう。心療内科とかは専門外なのでさっぱりわからないが、ボロボロの体で近付いてきた男の子には拒否反応も出ていないようなので、彼に任せて大丈夫かな。とりあえず彼の怪我もあるし、このまま病院に行くように伝えた。彼女にはカウンセリングも必要そうなので、心療内科のある病院がいいだろう。彼女を彼に引き渡すと、2人で泣きながらお礼を言われたので、頭を下げて走って家に帰った。だって本職の人が家に入るまで心配なので送りますって懇願してくるから、妥協案として上着を借りて、家まで走って帰るのを遠くから見ることだけ許可してしまったから……。陸上やってて良かったと思った。
さて、帰宅してから別の問題が出てきた。彼女に服を渡したまま帰宅したので、明日からバイトで着る服がないのだ。白衣っぽいからと白のロングシャツを仕事着に愛用していたのだが、なくなってしまった。
間先生に仕事で着る服は提供してもらえないか聞いてみたこともあったが、金あるんだから自分で買えと言われた。まぁ闇医者の報酬はビックリするような額なんで当然なんですが……白衣とかスクラブってどこで買えるの??前世では職場で提供されてたし、何でも売ってるAMAZ○Nって便利な通販もあったんですが、ここにはまだ無いらしい。
翌朝、母親に相談してみた。医院でアルバイトをしていることは伝えている。もちろん闇医者やってることは言ってない。たぶん受付とか清掃とかのお手伝いをしてると思ってるんだろう。それなら職場に使えそうなのがあった気がするからと言われた。
職場から帰ってきた母親から手渡された服を見るまで、母の職場がどういうところだったか忘れていた。手の中にあるのは、薄いピンクのミニナース服。コスプレ用にしては生地はペラペラではないので、母の店は高級店なのかもしれないと現実逃避した。
「どうせなら白衣よりもこっちの方が可愛いでしょ。ちょっと着てみて」
こっちの母親はふわふわした乙女系の見た目なので油断したが、押しの強さは前世と変わらなかった。
意外と動きにくさはなく、サイズもぴったりだった。が、裾が短い!!!!ワンピースなので腕をあげると丸見えだ!!!
とりあえず白衣を探して購入することは決定事項となった。購入までの間だけなら、裾だけ長さ出せば使えるか…?アキちゃん手芸部だって言ってたし相談してみよう。鞄にナース服を突っ込んで学校へ向かった。
テスト前なので授業は半日で終わった。登校してすぐにアキちゃんを捕まえて事情を説明していたので、放課後は連れられるがままに家庭科室に向かう。さすがに教室には残って勉強している子も多かったので、ナース服を広げる訳にもいかない。
「じゃあキリちゃん、例のブツを出して」「例のブツって…はい、これ」「んー…短いね。どのくらい伸ばしたいの?」「できれば膝下…でも…最低でも見えない位には」「見えない長さとかわかんないから、とりあえず着てみて」
母だけでなく、同級生も押しが強い。流されるがままに準備室で着替えた。アキちゃんが足元にしゃがみ込んでメジャーで色々測っている。
「誰か居るのか?試験前は部活休止だぞ」
ガラガラ~と家庭科室の扉が開いて、現れた人物と目が合う。状況を理解できないのか扉は勢いよく閉められた。そりゃ家庭科室にミニスカナースがいる状況を瞬時に理解出来る人なんていないですよね…。
「部長、ちょうどいいところに!ちょっと教えてください!」
アキちゃんは足元から立ち上がると、ドアの向こうの人物に声をかけた。返答がないので、首を傾げながらドアの方へ歩き、ドアの向こうにしゃがみ込んでいた三ツ谷先輩の腕を掴んで戻ってきた。
「あの、裾の長さ出しなんですが…ここのところが…」「ちょ…ちょっと待って…いっぱい説明して………」
いっぱいと言われたが、掻い摘んで説明した。家計を助けるために、アキちゃんの手を縫った病院でアルバイトさせてもらってて、その時に着る服のお直しをお願いしたい。
「わかった。…それは病院の先生が渡してきたやつ?」「いえ、先生は用意してくれなくて、母に相談したら…コレが出てきました」「病院で強制されてるわけじゃないんだな…それなら…まぁ…」
やけに出所に拘るな…まぁ先生の見た目はかなり胡散臭いから仕方ないけど。
で、ご理解いただけたのなら、もう脱ぎたいんですが……
という私の希望は口に出す前に、アキちゃんの言葉に遮られた。何を話しているのかわからないが、裾をつまみながら直し方を相談してるようだ。
真剣そうな2人に口を挟むのは憚られたが…
「あの…あんまり引っ張られると…見えそうなんですが…」
その言葉に先輩は固まって、一瞬でまた真っ赤になった。さっきまでの真剣そうな顔はどこ行った?
さすがに裾出しだけで長さを確保するのは難しいらしく、部長直々にカスタマイズしてくれるらしい。申し訳ないと思ったが、他に伝手がある訳でもないのでお願いした。
その夜、武蔵神社の境内は普段とは違う雰囲気に包まれていた。
東京卍會の幹部会としてマイキーから集合がかかっており、幹部連中が集まっているはずだ。ドラケンはタイ焼きが食いたいと言い出した総長の寄り道に付き合わされて時間ギリギリに到着した。口元に餡子をつけながら食べ歩きするマイキーの様子を見ながら階段を登りきった。
そこでドラケンがまず目にしたのは、変な言葉を叫びながらヒーローごっこに勤しむ壱番隊の隊長と副隊長だった。
「ろくはら~たんっっだい!!!!!」「なにをっっ!!!ごとばじょーーこーーを召喚してターンエンドっっ!!!!」
全部わからない。何をしているのかも、何を叫んでいるのかも、何がどうなってこんな状態になっているのかも…。近くで楽しそうに野次を飛ばしているスマイリーに「あいつら何をしてんだ?」って聞いてみたが「勉強だって」と帰ってきて…うん、やっぱり何もわからんと頭を抱えた。
こういう時には…三ツ谷!!お前が居ながら…なんだコレは…!
保護者その2の姿を探すと、木にもたれ掛かって座ったまま集中して何かを書いている。それを木の後ろからパーとペーが覗きこんでいる。背後の2人がドラケンに気付くと、笑いながら駆け寄ってきた。
「アイツも勉強か?」
皮肉を込めて溜息混じりに問いかけた。
「三ツ谷ってナースが好きだったんだな」「めっちゃ必死に書いてるし、絶対大好きだよ」
「…ナース?」
誰か会話のキャッチボール出来るやつはいないのか?????????
混沌を極めた幹部会は、マイキーの「眠いから帰る」の一言で解散となったとか。
「ふぁぁ…あっ、手塚さん。おはよう」「三ツ谷先輩、おはようございます」「お直しのやつ、もうちょっと待ってくれる。なんかデザイン決まんなくて」
朝なのに眠そうに欠伸をしている先輩と廊下で遭遇した。試験前だし勉強で夜更かしとかしたのかな?もしお直しので時間取られてるなら本当に申し訳ない…。白衣買うまでの間だけだし…断ってくれていいんだけどな。一度引き受けちゃったから断りづらいのかな、それなら…
「みぃぃぃつやーーー!!!」「お前のために厳選してきてやったぞ!!!!!」
先輩の後ろから突撃してくる二人組は、近付いても勢いを緩めることはせず、そのまま三ツ谷先輩に体当たりをぶちかました。三ツ谷先輩はよろめいたものの倒れることはなかった。体幹強い!しかし体当たりの衝撃で1人が持っていた紙袋の中身が飛び出した。後ろの2人に苦言を呈している三ツ谷先輩の視界には入っていないようだが、私の視界には紙袋から飛び出たナース物のAVと成人向け指定図書が映っている。未成年が見ちゃいけないやつっぽいし、他の生徒が通りかかる前に片づけないとな。しゃがんで全部を拾い集めると、まだ気付いていない先輩の肩を叩いてこっちを向かせる。
「先輩、お直しの件は白紙に戻してくださって結構ですので、夜更かしも程ほどに」
無理させたくないので、こちらからお断りさせてもらおうと笑顔で伝えて、落し物を先輩の手に返却して、教室に向かった。
「へ?なんで?ってコレ何??…えっ????ぱーーーーーちん!!!!ぺーーーーやん!!!!」「は???お前ナース好きなんだろ!!!!」「俺が厳選したから間違いないやつばっかだから安心しろ!!!!!」「マジでぶっ○す!!!!!!!」
主です!今更なんだけど東リベの話書くの結構久しぶりだったよ!
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コメント
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続きが見たくていいね押しまくってるけど、ストックって前のやつを下書きに戻しただけならあと2、3話とかですかね?てことは 新しく書かないといけないことになると思うんですけど、 「今すぐ見たい!質より量」 とかではないので、なんなら量より質なので、! 短めに終わって無理矢理最終回にいくパターンが1番悲しいので! ゆっくり書いてもらって大丈夫です、!