「この恨みは一生消えない」
グシャッ…!!
数週間前、街から少し離れた所にある施設に、1人の新人研究員が配属された。
〈今日からお世話になります。名前は秘密で、好きなように呼んでください〉
その研究員は紫混じりの黒髪に黒のマスクとTシャツで、研究員の前では絶対にマスクを外さなかったという。
初めは皆警戒していたけれど、彼の仕事の速さに衝撃を受け、すぐに警戒心が解けた。
彼の仕事量はどんどん増えていき、二週間後には極秘の研究内容まで知らされていた。
この時の研究員は誰も、あんなことになるなんて思ってもいなかっただろう。
「そういえば最近、02の様子はどうだ?」
「あまりにも危険過ぎて今は地下室に閉じ込めてるって話してるの聞いたぞ?」
地下室。やっとそれらしい情報が見つかった。
02の捜索を開始して既に三週間が経過したからもうここにはいないと思っていたから、地下室に監禁されていたなんて思いもしなかった。
先週の仕事でマスターキーが手に入ったのはデカかった。
そんなことを考えながら研究所の地下室に向かい、マスターキーで地下室の扉を開いた。
ガチャッ…
〈彼奴等…!〉
地下室にいたのは自分より少し年下の男の子で、手錠や足かせが付けられ身動きがとれない状態だった。
〈こんな酷い扱いしてただじゃ済まねぇぞ…〉
[(誰か、来た…?こっち来t…)]
〈君、大丈___〉
[近づかないで!!]
俺が近づいた瞬間、物凄い形相で拒絶された。
〈(そりゃ怖いよな…酷い扱いを受けてきただろうし。)〉
〈(なんとかして警戒心を解きたいけどどうすれば…あっ!)〉
俺はマスクを外し、全力の笑顔で言った。
〈ボンジュール!ぼんじゅうるだ!どうもでーす!〉
[…?]
キョトンとした表情で見上げている顔を見ていると、ふざけた自分が馬鹿らしくなってきた。
こんなことで警戒心が解けるはずもないと思っていたのも束の間、男の子が沈黙を破った。
[プッ…あははははっ!!笑]
〈!!…ふっはははっ!笑〉
少し安心した。これくらいで笑えるということは、感情が死んでいない証だ。
感情が染んでいないということは、ここに来てからあまり経っていないのかもしれない。
[貴方はあの人たちと全然違うんですね笑こんなに面白い人久しぶりです笑]
〈久しぶり、か…〉
[あの…ぼんじゅうるさんっていうんですか?]
〈あっえっと…〉
確かに俺はぼんじゅうると名乗った。研究者に明かしていない名前。
この子が知っていたら怪しまれる可能性もあるが、信頼関係を築くには必要だ。
〈…そうだよ、俺の名前はぼんじゅうる。君の名前は?〉
[僕はドズルです]
〈ドズルくんか、年齢は?〉
[えっと…今何月何日ですか?]
〈6月末くらいだけど…〉
[じゃあ22ですね、ここに連れて来られてから体内時計が狂っちゃって…]
〈そっか…〉
連れて来られてからあまり経っていないと思っていたが、今が何月何日なのかも分からない程にはここにいたということか。
これだけ話してくれるということは相当信頼もしてくれているだろうし、もうここにいる必要もなくなった。
〈ドズルくん、俺と一緒に逃げないかい?〉
[えっ…逃げるって…貴方はここの研究者じゃ…]
〈俺はここの研究者じゃない、個人的な理由で君を探していたんだ〉
[研究者じゃ、ない…?]
〈信じられないと思うけど、この力を見れば納得してもらえると思うよ〉
俺は眼鏡を外して左目にかかった前髪を掻き分け、研究者を睨み付けた。
〈跪け〉
その瞬間、研究者は頭から地面に叩きつけられ、あまりの勢いに気絶した。
[これって…!]
〈そう、俺は君と同じ”改造人間”だ〉
コメント
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え、ごめん好き💕🫶(?