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8月25日
夏祭りというイベントとも終わり、エアグルーヴの長期休暇も終盤に差し掛かっていた。
終盤に差し掛かるとトレーニングもなくエアグルーヴとも会わない日が続くと何となく会いたい気分になる。しかし何もないのに会うということはあまりできない。なにか無いものか…
エアグルーヴは夏祭りが終わった次の日から何をしていたのだろうか…
エアグルーヴとはもう3年程の付き合いになるが休みの日も大体トレーニングを入れるエアグルーヴがoffの日は何をしているかなど全く想像できなかった。勉強か自主トレでもしているのだろうか?
まだまだ知らないことだらけというわけだ。
そんな事を思っていると見ていたテレビ番組で海のことが取り上げられた。
「海の家オープン中でーす!」
そういえばエアグルーヴとは海に行ったことがある。まぁ夏合宿というトレーニングだったが…
しかしプライベートで海には一緒に行ってことは無い当たり前だか…
「誘って…みるか」
緊張と得体の知れない罪悪感に苛まれながらエアグルーヴに電話をかけてみる。時刻は午前10:40分エアグルーヴも恐らく起きているだろう。
プルルルルツ プルルルルツ
「もしもし? エアグルーヴか?」
「当たり前だろう?どうかしたか?」
「あぁ… そのだな…」
「あぁ」
「あぁ… えっと」
「どうしたんだ?よそよそしい」
「な…なぁ エアグルーヴ」
「?」
「海とか行きたく…ないか?」
教え子を誘うとなると犯罪チックにならないか心配だ…
「海か… 私はトレーニング以外で海に行ったことは無いからな… 連れてってくれるか?実は私も海には行きたいと思っていたんだ」
「ほんとか?! 明後日とかどうだ?」
「あぁ 問題ないぞ」
エアグルーヴとプライベートで出かけるのはこれで2回目になることになる。しかも近所ではなく少し遠い所の海… 海までちゃんといけるだろうか…
電車のルートをちゃんと確認しておこう。
「それじゃ 明後日!」
「あぁ 楽しみにしているぞ」
エアグルーヴの長期休暇が明けるまで仕事がなかった俺もただいま絶賛連休だったので日程調整はすぐにできた。色々準備しなくては… そこはまたエアグルーヴとも話合わなくてはな…
俺に来た遅めの青春はここぞとばかりに咲き誇っていた。学生の時には味わえなかったこの感覚…
「海… 楽しみだな」
その日の夜エアグルーヴに連絡をした。
こんなやり取りをしてその日を終えた。
次の日になり海に行くにあたり必要なものを調べていると水着の画像がてできた。
いわるゆビキニ画像だった。よくよく考えたらエアグルーヴはどんな水着を着てくるか知らない。
トレーニングの時に使う水着を着てくるはずは無い…
まさかエアグルーヴもビキニを?…
都合が良い妄想だけが膨らんでいく…
明日が本当に楽しみだ… 今年の夏は今までのものとは全く違うものだった。いつもの夏は大体トレーニング内容を考え夏合宿の日程を調整・実施 そして出発するなどを行っていた。つまりは仕事づくめだったというわけだ。しかし今年はエアグルーヴの出走レースや夏合宿がないことから仕事があまり無かった。
なのでとても休日らしい休日が多かった。
エアグルーヴともプライベートで交流が増えた。
「楽しい」この一言に尽きた。
そんな事を思いながらその日をすごした。
しかし…
「雨…降ってるな…」
次の日は生憎の雨で海には行けそうになかった。エアグルーヴにも連絡をして中止を伝えた。
「残念だ」
エアグルーヴからはその一言だけが来た。
正直とても萎えた。色々準備していたし、エアグルーヴの水着姿も見たかった。
しばらく雨は続くようだ… 長期休暇が明けるまで雨は降り続けるようだ。
「仕方ないな…」
エアグルーヴには「来年かもな」と送っておいた。
窓の外から聞こえる雨の音に耳を澄ませながらリビングのソファーに寝転がっていた。
長期休暇が明けエアグルーヴも通常授業が始まった。俺も通常業務に戻りトレーナー室に通い詰める生活を再開した。
9月3日
その日は雨が止み雲の隙間から太陽が顔を覗かせていた。夏の暑さはまだ抜けきっておらずトレーナー室は蒸し暑かった。
今日は前日の雨で芝が濡れていて道悪ケースを想定したトレーニングができるのでトレーニング場でタイム計測をすることになっていた。
時刻は15:50 そろそろエアグルーヴが授業と生徒会の仕事を終え来る頃だ。早くジャージに着替えなくては…
しばらくしてエアグルーヴが来てトレーニング内容の確認をしてトレーニング場に向かった
〜〜〜
アップをしてタイム計測をした。道悪だとやはりタイムが落ちてしまう。こんな状況でも走れるエアグルーヴたちはやはり凄い…
「タイムは?」
「良バ場の時より3秒くらい遅いけど良いタイムだよ!やはり走づらいか?…」
「そうだな… 足が沈んで少し走りづらい」
そりゃそうだ。エアグルーヴの足跡がしっかりとトレーニング場には残っていた。
「時間もいい感じだし今日はもう終わりにしよう」
「あぁ」
「ストレッチして帰りなよー」
そう言ってその場を後にしようとすると…
「待て」
「?」
エアグルーヴに呼び止められた。
「なんだい?」
「いや…その…この後は暇か?」
特に仕事もないので帰る予定だった
「いや仕事もないから帰るつもりだったが…」
「行きたい場所がある」
「どこだ? あぁ スーパーか?」
エアグルーヴの買い物の荷物持ちをすることがちょいちょいあったのでそれかと思ったが…
「違う… 海だ…」
そう言うエアグルーヴの顔は少し照れ臭そうだった
「えっ!? 海?」
まさかの場所だった。長期休暇の時に行けなかったをエアグルーヴも気にかけていたのか…
時刻は17:30 まだまだ日は出ているし明るいが…
「まさか… 泳ぐつもりか?」
「泳ぐわけないだろうが! 見に行きたいんだ!」
「あぁ なるほどね いいぞ!行こう!」
俺もエアグルーヴと海に行けなかった事は心残りだったのでとても嬉しかった。
「じゃあ着替えたら連絡ちょうだい」
「分かった 正門でいいか?」
「りょーかい」
トレーナー室に戻りスーツに着替えて正門で待つ。
5分ほどしてエアグルーヴが普段着で来てくれた。
「外出許可は取ってきた 20:00まで大丈夫だ」
「わかった 電車で行くでいいか?」
「うむ」
エアグルーヴと電車に乗るのは初じゃない何度も乗っているが海までいく電車は初めてだ。夏合宿などの移動は全部学園側が用意してくれたバスでいっていた。
海方面へ行く電車は人もあまり乗っていなく席がガラ空きだった。エアグルーヴと俺は席に座り外の景色を眺めていた。外の景色を眺めるエアグルーヴはとても綺麗だった。何をしても綺麗だなぁ…
「何をジロジロみている?」
「えっ いや綺麗だなって…」
「なっ! 何をいきなり貴様は…」
少し照れながらもエアグルーヴは嬉しそうだった。
座っている2人の距離は近かった。今にもくっ付いてしまいそうなくらいに近かった。しかしそれもついにはくっつき肩と肩がいつの間にか密着していた。
心臓の音が激しく高鳴る。エアグルーヴに聞こえてしまってはいないか心配だった。
海までは大体20分くらいで着いてしまう。
もっとかからないかな…
そうこうしていると海が見えてきた。
風がないので波も穏やかで夕日に反射して海がとても綺麗だった。
駅に着き電車を出ると一気に磯の心地よい匂いがしてきた。適度に涼しいそよ風も吹いていて気持ちが良かった。
駅を出て2人ですぐそこにある砂浜に行った。
時刻は18:10 人っ子一人居ない砂浜でエアグルーヴと2人で座った。砂浜の砂は少し温かかった。
海は夕日に反射してとてもキラキラしていた。
「綺麗だな…」
思わず言葉にしてしまう…
「なっ…」
「?」
エアグルーヴの方見るとは顔を赤くして下を見ていた
「どうかしたか?」
「いや… 何でもない 確かに綺麗だ…」
「顔が赤いぞ?」
「夕日のせいだ!」
夕日はちょうど半分水平線から顔を出していた。
波の音がとても心地よい…
「次は…」
エアグルーヴが言い出す
「一緒に泳ぎに行きたいな…」
真っ直ぐ夕日を見つめながらエアグルーヴは言った。
「そうだな… 来年必ず行こうな」
「あぁ」
エアグルーヴから行きたいと言って貰えるとなんだかとてもドキドキした
なにか聞きたいことがあったが忘れた。
俺は立ち上がり靴と靴下を脱ぎスーツのスボンをめくり海の方に向かった
「なにをしている?」
「波もないし足だけ浸かろうかなって」
するとエアグルーヴも靴と靴下を脱ぎ
「私も足だけなら…」
2人で海の波打ち際まで行く
足の裏に感じていた温かい砂の感覚は冷たい砂へと変わっていった。
小さな波が足の甲あたりまでかけのぼってくる。
「つめてぇ!」
想像以上に冷たくて声が出てしまった。
「そこまでじゃないだろう?大袈裟な…」
エアグルーヴが呆れた感じで言った。
「ホントに冷たかったんだって!」
あぁ… なんか青春してるなぁ… そう思った。
「はしゃぎすぎて転ばないようにしないとな」
エアグルーヴが笑いながら言った。
「あぁ そうだ…なッ!」
俺は流れてきていた海藻に足をすべせた。
幸い膝から転んだおかげで濡れたのは膝からしただけだった。
「マジかよ… びしょ濡れだよ…」
スーツが水を吸って重かった
「言ったそばから…」
エアグルーヴはため息をついて言った。
エアグルーヴが手を差し伸べてくれる。
「面目ない…」
その手を取り立ち上がると思いのほか力を込めてしまいエアグルーヴも体制を崩した。
「うわっ!」
「エアグルーヴ!」
瞬時にエアグルーヴを抱きかかえ背中から倒れる。
「エアグルーヴ濡れなかったか?!」
「大丈夫だ… しかし貴様は…」
「あぁ…」
ずぶ濡れだ。しかしエアグルーヴが無事ならいい。
「これでもう冷たくないぞ…」
冗談混じりでエアグルーヴに話しかける。
「すまないな…」
「大丈夫だ エアグルーヴが無事なら…」
「貴様はいつも人のことばかりだな」
海水が染みたジャケットを脱ぎ絞る。ズボンはもう仕方ないから自然乾燥でどうにかしよう…
「こうゆうのもなんか楽しいな」
「能天気な…」
「俺は能天気だよ〜だ」
「開き直るな」
こんな会話もとても楽しい。
日が落ちてきて少し当たりが暗くなってきた。ズボンも乾いてきたのでここらで帰ることにする。
「そろそろ帰ろっか」
「あぁ もう少し待ってくれ」
「?」
そう言うとエアグルーヴは日が落ちていく水平線を目を輝かせながら見ていた。
あぁ本当に… 綺麗だな… つくづくそう思った。
カシャ
思わずスマホで1枚写真を撮る。
バレないようにこっそりと撮ってしまった。
この写真はずっと保存しておこう…
エアグルーヴが夕日から自分に視線を移す
「ありがとう 帰ろう」
「夕日綺麗だったな」
「あぁ」
こんなことを2人でしていていいのか…またこんなことを考えてしまう。バレたらどうなるか…
「明日もいくか」
「何故明日もいく必要がある?」
「そうっすよねー…」
「だが… たまには…な」
「また行こうな 来年も」
「あぁ…」
近くの自動販売機で缶コーヒーを買って電車に乗り込んだ。
電車はまだ空いていた。
席に座るとすぐに眠くなった。疲れているのか分からないがかなり重めの睡魔が俺を襲った。
寝ないようにとしていたが遂には睡魔に負けてしまった。
「…..い …ぉぃ …きろ…」
なんだか聞こえてくるな
「おきろ!」
「うおっ!」
どうやら着いたようだ エアグルーヴに起こされた。
どうやら駅員さんに少し待っててもらった様だ
「すいません…」
2人で駅員さんに謝り駅を後にした。
「ごめんよエアグルーヴ 」
「全くどれだけ眠かったんだ」
「わかんない 突然強い睡魔が襲ってきたんだ」
「どうりで私の肩を枕替わりにしてても起きない訳だ…」
「ええっ?!」
そんなことまで… エアグルーヴには迷惑かけてるなぁ…
「あはは… ごめん」
「別に構わん 私も少し眠っていたからな」
「そうだったのか」
そういえばなにか忘れているような…気が…
「エアグルーヴ」
「なんだ?」
「エアグルーヴはビキニ着るの?」
「はっ?」
「あ」
違う質問をミスった。思い出したことがビキニという単語から連想させてたものだから思わず「エアグルーヴは水着は何着てる来る予定だったの?」が「エアグルーヴはビキニ着るの?」になってしまった。
まぁ水着何着てるくのという質問もヤバいがビキニどストレートに言う寄りはマシだ
「何を言ってるんだ! すけべめ!」
「違う! ミスった!」
思わず苦し紛れの本音が出る
「ミスるだと? 何をどうミスったらそんなデリカシーのない質問ができるんだ このたわけが!」
最後の最後で全部台無しにしてしまうのは悪い癖だ…
俺を叱るエアグルーヴの怒号が少し暗くなった学園の寮までの道に響き渡った。
自動販売機で買った缶コーヒーはなくした。
多忘れたのか知らないがポケットにもないから恐らく電車か落としたのだろう。
エアグルーヴを見送り俺は自分の家の帰途に着くのであったのだ。
「エアグルーヴの… ビキニかぁ…」
風邪の看病編に続く…