テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夕方の音が聞こえる。
それが嫌で耳をふさいだ。
「みーちゃん、今日は調子どう?」
明るい声が聞こえる。
あいちゃんの声だ。
まだ、姿が見えていないけれど、声でわかる。
ガラッと大きな音をたてて、私の病室に入ってくる。
「んー、今日は良さそう。」
そう言うと、あいちゃんは太陽みたいな笑顔を見せてくれた。
こんな風に私が元気だと喜ぶあいちゃん。
あいちゃんだって、病気なのに。
あいちゃんにあのことを言ったら、悲しむかな。
でも、今日は覚悟を決めてきたんだ。
ずっと悩んでいたから、言うのが遅くなってしまった。
「あいちゃん、今日ね言わなきゃいけないことがあるの。」
私の声色から良くないこととわかったらしい。
あからさまにあいちゃんは顔を強ばらせていた。
「、、、何?」
今から言うのは私だけが辛いわけではない。
きっと、あいちゃんも辛い。
「私ね、別の病気になったの。」
息を呑んだのがわかった。
沈黙を破ってあいちゃんが聞く。
「え、大丈夫なの?死んじゃうわけないよね、、、?」
あいちゃんは今にも泣きそうだ。
私が今までかかっていたのは少し体が動かしにくい病気だったけれど、命に関わるようなものではなかった。
「どうだろう、まだわかんない。けど、この病気はね、段々五感が奪われる病気なの。」
とうとう、あいちゃんが泣いた。
私がいなくなるかもしれないことを悲しんでくれている。
でも、泣いている理由は一つではない。
あいちゃんが歌ってくれる歌を私が聞くことができなくなってしまうことも悲しんでいる。
あいちゃんの将来の夢は歌手で、私はいつもあいちゃんの歌を聞いていた。
でも、それができなくなる。
そう思うと、諦めていた自分の命が、自分の耳が急に惜しく、愛しくなった。
星羅
13
白湯
200
#ライトノベル
こはる
840
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。読ませていただきました。 「夕方の音」、すごく胸にきた…。みーちゃんが「覚悟を決めてきた」って言うところ、あいちゃんが泣く理由を自分で考えて、さらに自分の命や耳が愛しくなるラスト、切なすぎる。五感を失う病気って設定がもう重くて、でも2人の空気が丁寧に書かれてて、続きが気になりすぎる。1話でここまで引き込まれるなんて思わなかったよ…。