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俺は今、扉の向こう側にいる最後の一人がどんな子なのかを想像していた。

今まで俺が出会い、そして仲間に……いや、家族になった子は四人。

吸血鬼っぽいミノリに、猫っぽいマナミとシオリ、そして変身能力を持ったスライムのツキネである。(サナエはモンスターチルドレンかどうかわからないため、これに含まれない)

さて、水晶の使い方をろくに教わらずに、この世界に来てしまったせいで俺を探し回っていた子はどんな子なのかな?

次に誰が来るかのは今まで通り見当がつかないが、俺に用件があるのは間違いないようだ。

さて、そろそろ扉を開けたやろう。じゃないとさっきから外で立ちっぱなしだろうからな。

俺が扉の方に向かうと。


「待ちなさい、ナオト」


ミノリ(吸血鬼)の声がしたため、俺はゆっくりと声のした方を向き。


「俺に何か用か? ミノリ?」


ミノリにそう訊いた。すると。


「何か嫌な予感がするから、あんたはここで待ってて」


ミノリは俺に忠告をした。どうしてそんな事を言ったのかは分からなかったが、心配してくれているのは分かった。しかし、俺は。


「ミノリ、気持ちはありがたいが、ここは俺に任せてくれないか?」


自分が今、思っていることを正直に伝えた。

ミノリは少しの間、他の三人と話し合っていた。そして、それが終わると俺のところに戻ってきた。


「みんなは、あんたの好きなようにやらせればいいって言っているわ」


「……そうか」


「でも、あたしは反対よ」


「え? なんでだ?」


「あんたがそういう、人が普通やりたがらないことを積極的にやろうとするからよ」


「誰かがやらなきゃいけないことを俺が勝手にやってるだけなんだが……」


「そう……なら、あんたの好きなようにしなさい。けど、やると決めたからには必ず最後までやり遂げるのよ?」


「ああ、最初からそのつもりだ」


「そう……なら、早く行きなさい。扉の前にいる子がきっと待ちくたびれてるわよ」


「ああ、そうだな。ありがとう、ミノリ」


俺はそう言うと、ゆっくりと扉の前へと向かった。さて、扉の前に来たのはいいが、これからどうすればいいんだ?

うーん、まあ、とりあえず扉を開けてみるか。

そう、とりあえずは目の前の扉を開けないことには何も始まらない。

最後の一人がどんな子だろうと俺は決して驚かないぞ! 俺はそう決心すると、扉を開けた。


「…………」


____前言撤回。俺は今、驚きのあまりフリーズ状態になっている。

なぜかって? それは……俺の目の前に『天使』がいるからだ。何? また猫耳の女の子かって? 残念、今回はそうじゃない。

まあ、たしかにマナミ(茶髪ショートの獣人)とシオリ(白髪ロングの獣人)は天使と表現せざるを得ないほどの可愛さだが、今回はそのような比喩ではない。

そう、何を隠そう……今、俺の目の前には『本物の天使』がいるからだ。

俺がフリーズしていると、その子は急に俺を部屋の外に連れ出した。

その直後、その子は勢いよく扉を閉め、俺を押し倒すと、馬乗りになった。

あまりにも一瞬のことだったので、俺は自分がフリーズ状態から解放されていることに気がつかなかった。

だが、その代わりに、俺はその子の姿をはっきりと見ることができた。

まず、その子の目は金色だった。俺の姿がその目に映っていたが、なぜかとても恐ろしかった。

今にも、その目に吸い込まれそうだったからだ。

髪は銀色。光を反射しているせいか、とても眩しく美しく見えた。

後ろ髪はシオリ(白髪ロングの獣人)と同じくらい長く、横髪はマナミ(茶髪ショートの獣人)と同じくらいの長さだった。

中でも印象的だったのは、背中に生えた二枚の天使の翼だった。(真っ白)

とてもその辺の鳥に生えているものとは違って、それは、とても神々しく輝いていた……。

背はミノリより少し高く思えたが、馬乗りになっているせいで、それは分からなかった。

ミノリたちが異変に気づいて出てこないということはこの子の力でそうできないようにしている、と考えるべきだろう。

俺がそこまで状況を把握した直後、初めて自分がフリーズ状態から解放されているのに気づいた。その時、目の前の美少女……いや、美幼女が。


「初めまして、お兄さん。えーっと、さっそくですけど、私は今から、あなたを殺します。だから……動かないで下さいね?」


俺にそう言ってきた。この時、俺は『死を覚悟する』よりも、まずこの子がなぜ俺を殺そうとするのかを考えた。俺とこの子は間違いなく初対面。

俺がこの子の顔を見ているのなら間違いなく覚えている。それは俺が人を名前ではなく顔で覚えるからだ。

よって、俺がこの子に出会っていたら間違いなく覚えている。

というか、こんな可愛い子が歩いているのを見たら、まず男はこの子を見ずにはいられないだろう。

それくらいこの子は可愛いのだ。さて、ここで問題です。

俺はこの状況をなんとかしたいが、この子は俺を殺したい。

こんな時、一体どうすればいいでしょうか? 答えは簡単『お互いが納得できるまで話し合うこと』だ。

何を話すのかはまったく決めていないが、なんとなく解決できると思う。

なんでそんなに落ち着いていられるのかって? まあ、あえて言うなら『慣れ』だな。

さて、そろそろこの状況をなんとかしますか。


「お前に一つ、言いたいことがある」


「何ですか?」


「その……とりあえず退いてくれないか?」


「それはできません」


即答だったが、俺は諦めなかった。


「今の質問は無かったことにしてくれ」


「分かりました。まあ、もうすぐ私に殺される運命は変わりませんけどね?」


「それはまだ分からないだろう?」


「そうかもしれませんね」


よし、なんとか会話はさせてもらえるようだ。俺は少し安心したが、まだ油断はできない。

一つのミスが俺の命に関わるからだ。慎重かつストレートに俺の気持ちを伝える。

下手に小細工を入れるより、こっちの方が生存率は高いと判断した後、会話を再開した。


「単刀直入に訊く。お前は誰の命令で俺を殺しにきた?」


「……それは」


「お前のご主人様に言われたからか? それとも独断でか?」


「…………」


「……答えろ。そうしないと俺はお前を仲間に加えることができない。だから……」


「……うるさい」


「……?」


「私たちの事を道具としか思っていないやつらに何も教える気はありません!」


「ま、待て! もう少し話を……!」


「問答無用! 今すぐあの世に送ってやります!!」


そう言うとその子は拳を掲げた。

その後、俺の腹めがけて思い切り、それを打ち込んできた。

しかし、俺はこの瞬間を待っていた。この子が俺の腕の片方を解放する瞬間を……。

俺はその子の拳が当たる瞬間、逆にその子を押し倒し、抱きしめた。


「な、何をするんです! 放してください!!」


その子は俺を引き放そうと必死だったが、俺はそれでも、その子を抱きしめる腕を緩めなかった。


「俺は、お前たちモンスターチルドレンの事を一度も道具だと思ったことはないし、道具扱いする気もない! むしろお前たちの事を俺は家族だと思っている! だから……!」


俺は必死に自分の気持ちをぶつける。俺はどうなろうと構わない。

だが、この子には世の中には悪いやつばかりいるのではないという事を理解してほしい。ただその一心で俺は言葉を紡いだ。


「だから……俺がそれを証明するまで……俺の家族でいてくれ!!」


俺の思っていることを全て、その子にぶつけた。いつの間にか口の中が、カラッカラになっていて同時に息も上がっていた。

俺が荒くなった息を整えていると、その子はいつのまにか泣いていた。

金色の瞳からこぼれ落ちるそれは、涙というよりダイヤモンドのようだった。

俺は慌てて少女から離れた後、どうしてこうなったのかを考えた。

だが、どうして泣いているのかは分からなかった。

俺がおどおどしていると、その子は泣きながら俺の方に近づいてきた。そして、ギュッと俺を抱きしめた。

俺もその子を抱きしめると、その子は俺の腕の中でしばらくの間、泣き続けた……。

その泣き声は今まで聞こえていた音をかき消してしまうくらい大きく、そして今まで我慢して表に出していなかったであろう『悲しみ』などの負の感情を曝け出したかのようであった……。

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