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余裕のない可愛い貴方

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余裕のない可愛い貴方

4 - 余裕のない可愛い貴方(後編)

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2024年11月02日

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固まったオーターの頭の中に、先程ツララに言われた言葉がよぎる。


『こういう事は軽々しくやっちゃダメだと思う』


『するなら恋人とした方がいいと思うし、誰かに見られてたら変な誤解されちゃうよ?』


(よりにもよってカルドに見られていたなんて。

・・・事情を説明して誤解を解かなければ。)


オーターは誤解を解くために、カルドの方へと向きなおった。


(・・・え。)


向きなおったオーターは、カルドの顔を見て内心、驚きの声を上げた。

カルドがムスッという効果音が聞こえて来るような、眉間にしわを寄せて口を引き結んで拗ねていたからだ。

いつものカルドといえば、落ち着いた雰囲気でスマートに女性をエスコートしている。

そんなカルドが、今オーターの目の前にいる彼はそれとはかけ離れ、好きなものを取られた小さな子供のようでオーターは目をぱちくりさせた。


「あ、の。カルド?」

「・・ラ・・・い。」

「え?」

「ツララ、ずるい。」

「・・・。」

「僕だって・・・オーターからあんな風に抱きしめてもらう事って滅多にないのに。」

「・・・・。」


(これは、もしかしなくても嫉妬ですよね?どうしましょう、こんな事思ってはいけないのに。カルド可愛い。)


思わぬカルドの態度にオーターの口元が緩んだ。

そんなオーターを見て、カルドが拗ねたまま口を開く。


「ちょっとオーター、何笑ってるの?僕今怒ってるんだけどな。」

「すみません。貴方が可愛らしくて、つい。あれはですね・・・」



オーターはツララとの事を説明した。

事情を知ったカルドは「なるほどね」と頷いた。


「彼の冷え性はどうにかしてあげたいね。」

「そうですね。カルドの魔法でどうにか出来ませんか?」

「うーん。僕の炎の魔法は、普通の炎と違って相手を焼き尽くしてしまう危険なものだから、よっぽどの事ではない限り人間相手に使うわけにはいかないかな。」

「そうですか。」

「性能の良い防寒具を使うしか、今のところ解決策はないね。・・・・さて。ツララの事はこのくらいにして。オーター。」

「はい?」

「・・・僕には、してくれないのかい?」


首を傾げながら聞いてくるカルドに、オーターはキュンと胸を高鳴らせた。


(本当に今日のカルド可愛いです!)


「・・・そうですね。はい、どうぞ。」


オーターは微笑みながら両手を広げ、カルドを自身の胸の中に招く。

カルドがそっとオーターの胸の中へと頭を預け、オーターがギュッと抱きしめた。


「どうですか?」

「うん。とても温かくて心地良いよ。ずっとこうしていたいくらい。」


カルドがすりっと頬を擦り寄せる。


「くす。今日の貴方は随分と甘えたさんですね。普段の余裕な貴方はどこへ行ったのですか?」

「・・・こんな僕は嫌いかい?」

「いいえ。普段の余裕な貴方も、今の可愛い貴方も、どちらも好きですよ。」

「そう・・・良かった。もう少しだけ、こうしていて良いかい?」

「はい。貴方が満足するまでいくらでも良いですよ。」

「ありがとう、オーター。僕も好きだよ。」


カルドはそう言いながら、オーターの胸に顔を埋めながら甘え、そんなカルドをオーターは微笑んだまま優しく抱きしめるのだった。








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