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「ふぅ、はぁ……っ」
俺は、急いで走って“ここ”までやって来た。
ここは、いつも俺以外誰も来ておらず、唯一のびのびと出来る場所なのだ。
「最高…!」
そう、ここは…
屋上っ!!!
ここで弁当を食べたり、ゆっくりしたり…
どんな事をしても、誰にも見つからないというのは最高の心地だ。
実は俺、孤独が好きなんだよな。
散々いじめてはいるものの、やっぱりこうして一人でいる方が落ち着く。
邪魔がいない、っていうのもありがたい。
……まぁ、人と関わるのが苦手だからな。
苦手だから、こんないじめまで発展してしまう。
だから、こんな風に思い詰める事があれば、すぐさま屋上に避難している。
「とりま寝よ。」
こういう時は、仮眠をとるのが一番最適だと思う。
俺は、端の方でゆっくり横たわり、しばらく寝ることに……
ならなかった。
「あ、青人くーん!やっぱここかぁ。」
「は…… なんでだよっ……」
俺の目の前には、風南がいた…
急いで駆け上がってきたのか、息を切らしていた。
「なんで分かった?」
「いつもここに居るから!」
「だーかーら、それを何で知ってるのかっ。」
「えぇ… 後追ってたらここに来ちゃうからさ。」
「後追う!?ストーカーかよ…」
「ふふっw」
「いや笑い事じゃねーよ…」
この言葉からして、いつも俺の後を追ってきているに違いない。
せっかく一人でいる時間が出来たと思ったら……
「はぁ…」
「そこまで急いで来る必要ねーだろ。息切らしてるし。」
「いやぁ… ね?」
「ま、とりあえず俺は寝るからな。」
「え、寝るの!?」
「当たり前だろ。寝ようとしてたんだから。」
「ふーん……」
風南は、何か言いたげに一言だけを発した。
俺はそれにグズグズして、鋭い言葉を口にした。
「何か言いたいなら言えよ。早く寝させろ。」
「え?何も無いけど…」
「嘘つけ。何か言いたそー。」
「ううん、何であんな青人くんが、一人で屋上にいるのかなーって 気になっただけ。」
「あー……。」
風南には心を見透かされている気がする。
だから、嘘をつくなんて事、できやしなかった。
「へぇ、そうなんだ!私も結構好きだよ!」
「風南見てたら分かる。」
「え?」
「は?」
「プッww」
「ww」
風南に釣られて、前歯をむき出しにして大笑いしてしまった。
その笑いの波はしばらく引かず、気づけば 休み時間中ずっと風南と一緒にいた。
―――あれ、なんでこんなに楽しいんだろ……
風南から逃げてたはずなのにな……。
「可愛い……」
「え?何か言ったか?」
「いや、何も!」
「??」
何か、可愛い って聞こえたような気がしたけど…
気のせいか。
―――放課後
俺は、誰よりも素早く準備をして 帰ろうとしていた。
これはいつもの事だった。
そして、風南は俺の斜め後ろの方で、じっと大人しく座っているはずなのだが…
今日は、その姿が無かった。
いやそもそも、風南が今教室にいないのだ。
確かに帰って良いとは言われたけど……
風南、あんなに早く準備できる訳無いし…
俺はちょっと心配になって、無意識に学校中を探し回っていた。
「? どこ行ったんだよあいつ…」
「(マジでいねーな……。)」
校舎のほとんどは探し終わったはずだが、風南はどこにも居なかった。
もしや、本当に帰ったとか……??
まぁ、俺も早く帰らないとな…
そう思い、靴箱から出ようとした時だった……。
「ねぇ。いじめはダメって何回言ったら分かるわけ!?しつこいんだけどっ!!」
「ごめんなさ〜〜い!w」
「舐めてんの!?正気!?」
「それは言い過ぎ〜〜ww」
「黙って!!人の心も考えられない奴が、普通の人に 口出しする権利無いから!!」
「! お前うぜーーな、いい加減にしろよ?そろそろ本気出すか…」
「お前 な〜にしてんの?楽しそうだから混ざって良い〜〜〜〜??」
「あっ、……」
「!」
そう、一生懸命注意して 何かを辞めさせようとしていたのは、あの風南だった。
いつもの俺になら何気なくサラッと注意してくるのに、今の風南は別人のような怒り具合だ。
相手が相当悪い奴なのかも知れない。
そんな風南達を見ていられず、思わず喧嘩腰で割り込みしてしまった。
これでは、相手のやる気に火が点いてしまう。
これはミスったな…
そう思ったけど、相手の反応は俺の想像とかけ離れたものだった。
「……チッ、覚えとけよ、お前!絶対許さねーから!」
「それはこっちのセリフだろww」
「っ…… クソッ!」
そう言って相手は背中を丸めて 惨めに去っていった。
「青人くん… 私のこと、助けてくれたの…??」
「! いや、そんなつもりはねーよ。」
「嘘だ〜! だって青人くん、喧嘩嫌いでしょ?」
「は?むしろ好きだわ。」
「ま〜たそう言って。私は全部知ってるんだからね〜〜」
「は、はぁ……?」
一体風南は、何を言ってるんだか。
―――まぁ、全部事実なんだけどな……
というか、なんでこんな事実を 風南が知ってるんだ…?
まだ誰にも伝えてないはずなのに……
もしや、屋上に逃げ込んでた、って事から推測した…!?
めちゃ偏見じゃねーか……
まぁ、どうせ風南には全てを見抜かれること間違いなしだ。
だから、今の内に本当の事を話しておかないとだよな。
「…んーまぁ、喧嘩は正直好きじゃねーかな…」
「だろうね… じゃあ、なんで私を守ってくれたの?」
「いや守っては無いし…」
「守ってくれたよ!あの時の青人くん、すご〜くカッコよかった!」
「!(“カッコイイ”……)」
っ………
___あれ俺、なんでこんなにドキドキしてる…?
カッコイイなんて、そういう意味じゃないだろ…
分かってる、のに…っ
「どうかした?」
「いや、何も…」
「じゃ、もう一回言ってあげようか?」
「…」
「カッコイイよ、青人くん。」
「!!!」