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わいわいと談笑していると時間は刻々と過ぎていき、外は光がよく目立つようになっていた。
「おお、結構たったな」
「本当だ。もうそろそろおしまいにしますか」
日暮とも結構和気あいあいと話せた気がする。性格は真反対ではあったが、考え方が似ていたもので、不快感を覚えなかった。
「おー、相田ぁああああ!!相手見つけたかァァ……」
「酔いすぎな、落ち着け。」
厄介なのが来た。日暮も僅かに引いている。
「結構飲んだだろ。もう、収拾つかないから終わりにしよ」
おぉぉ……けぇ…、と情けない声を出す。ダメだこいつ。
「あの、結構酔ってきている人もいるので、もうお開きにしましょうか」
そう呼びかける。俺の声に気がついたのか、女性たちは荷物をまとめ始めた。
「連絡先交換などは個人的にしてもらって、かなり酔っている人はできる範囲であれば介抱しますよ」
酔っている人なんて1人くらいしかいないが……今日のお礼として送ってこう。
「あの、相田さん。」
耳に馴染みのない呼び方で名を呼ばれる。振り返ったら日暮だった。
「どうしたの?」
「連絡先交換しませんか?せっかく仲良くなれたので」
合コンの場で友達作りをするのは変な話だが、じゃあせっかくなんで、といいスマホを差し出す。
「連絡先載ってるから登録していて。ちょっと俺は介抱してる」
日暮は淡々と指を動かす。今日のことをよく思い出せば、こいつはのほど笑っていなかった。嬉しくないのか?
女性たちが今日はありがとうございました、と言いながら帰って行った。合コンに来たはずなのに彼女たちとはのほど話していない。俺には早かったか、と思うが、立派な大人でもあるため情けないなとも思う。
「じゃあ、相田。そいつよろしく。また今度なー」
はいはい、と返し、肩に乗った情けないそれを何とか運ぶ。
「大丈夫ですか?」
「ええ?あぁ、大丈夫。足ちぎれてでも送るから。」
大丈夫じゃない気が……と言われ、愛想笑いをする。いつものことだしな、とこぼして重たい体を引きずる。
「仲良いんですね。友達少ないんで羨ましいです。」
内気なのか訳ありなのか…ずっと距離遠いし。
「敬語外しなよ。ずっと他人行儀は好ましくないし。友達は適当なんだよ」
大したことも言えないのに上からものを言う。そういうものなのか、と日暮は言う。なんというか純粋で隣にいるのが気まずくなる。
「あー、俺ら友達だし?!俺の前では敬語いらないから!飲みたい時もいつでも言っていいよ」
「え、じゃあ今日飲みたい。」
…いつでもとは言ったけど。まあ、今日は予定無いし、少しだけならいいか。と思い、俺は全然いいよ。うち来な、と返した。
「あ、でも、こいつ家に返すの手伝ってくんない?結構重くて」
「やっぱり大丈夫じゃなかったんだ。僕が持つよ」
酔いつぶれを家まで送って自宅に着く。日暮も一緒にいる。手を洗い、荷物をまとめる。そして、冷蔵庫に放置気味だった酒を取り出す。丁度よかった。
「はい」
机の上に酒を置く。ついでにちょっとしたおかずも。
「酒余ってたからよかった。じゃんじゃん飲んで!」
「ありがとう。今度お金返すね」
そんなのいらないよ、と返すと日暮は申し訳なさそうにしていた。
「今日、どうだった?合コン」
「楽しかった。相田としか話してないけど」
「なんのために来たんだよ。」
「…恋愛しに。」
何とか話を繋げれるように質問していく。考え方が中学校で稀にいるタイプなんだよな。その性格の割に背は高めだし、顔は綺麗めなイケメン。どこにでも居そうな顔で、身長がちょい低めの俺とは本当に正反対だった。
「恋愛しにって子供っぽいな」
「子供みたいな恋の方が楽しそう」
「まあ、分からなくもない」
開けられた酒を少しずつ、少しずつ細かくわけて飲んでいく。今日あったばっかの人に愚痴を吐きたくはないが、アルコールが回ってくるとついつい吐きたくなってしまう。
「でも、それでおれは振られたからな。恋ってのはしてる時がいちばん楽しいもんな。結果はくだらない」
「そう……。」
「てか、今恋なんてしてらんない!!課題が多すぎる……」
「課題?やってなかったの?」
「いや、追加がどんどんとな……」
来客に対して気遣いもせずに、口から溢れ出る言葉を垂れ流しにする。日暮はあまり酔いが回ってなさそうだ。少し火照っているが。
「追加って信頼されてるってことじゃない?」
酒を顔に寄せ、目線を下にして飲む日暮。まるで神話に出てくる美少年だ。儚げで、美しい。そんなふうに俺は日暮に見とれていた。そうして……意識は……遠、のいて……
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朝のなんとも言えない空気を感じて目覚める。
俺はベットに横たわっていた。その横に、日暮がいた。戸惑いの表情でこちらを見ている。
「おはよう……。昨日のこと覚えてる?」
眠気が一気に覚めた。昨日の記憶ははっきりと俺の中に刻み込まれているのがわかる。まるでフラッシュバックのように頭の中を流れる。
そうして、言葉を発せずにいた。