※実際の団体、個人とは無関係です。
※ボイドラ時空でお送りします。
※成人向けに準ずる表現があります。ご注意ください。
※その他捏造した設定が多く含まれます。
冬の足音が近づく、がらんとしたカフェ、Zeffiro。カウンター席で足を遊ばせながらセラフは辺りに漂う甘い香りを存分に楽しんでいる。
「ん〜、いい匂い…♪」
「やろ?豆からやっとるからな〜」
「豆ってか、カカオね。」
「豆やん」
普通に売られているチョコレートよりも苦みがある、深い香り、雲雀の手元から漂っては通気口へ消えていく。
ふと、セラフが視線を横へずらすと料理が得意な雲雀のものとは思えない不格好なカップケーキが鎮座していた。
「雲雀〜、そこのカップケーキって雲雀が作ったの?」
そう言うとすぐに雲雀の視線もカップケーキへと移った。それから振り返りながら、奏斗が作ったものだと言われた。
手先が器用な彼とは思えない出来だ、と雲雀もセラフも思わず笑ってしまった。
ただいま、とRoom4’s事務所の窓を開け、中へと入る。いつもならドアを使えと怒鳴るアキラはおらず、来客用ソファーに奏斗だけが座っていた。セラフに気づくと片手を上げておかえりと返される。
どうやら奏斗はアキラから受け取ったであろう資料を読み込んでいるらしかった。セラフがわざとその真隣に座り込むと、奏斗は少し避けるように座り直していた。
「なぁんで避けるの〜?」
「野郎とぴっとり座り合う趣味ないっつーの!」
怒鳴るとまではいかずとも大きな声で奏斗に制止され、セラフも遠くに座り直す。 アキラもいなければ急ぎの依頼もない、またもや珍しい状況に欠伸をするセラフ。
すると、書類やらに紛れて、テーブルの上に綺麗にラッピングされたお菓子のような包みを発見した。
「…ねー、あのお菓子って奏斗の?」
「ん?あー……食べてもいいよ。」
ちらりとセラフと包みを見比べ、気のない返事を返す奏斗を少し怪しみながらセラフが包みを開く、中には小洒落たカップケーキが入っていた。その装飾はどこかで見た覚えがある気がした。
2つあったがそのうちの一つを取り出すと奏斗がなにやら不安げな表情でセラフを見ていた。が、セラフがそれを見返すとすぐに逸らされた。
顔へ近づけると甘いチョコレートのいい香りがして、食欲がそそられる。
ひとくち齧って、欠片が口に入ると甘ったるいチョコレートの味と奥に苦みのある味がした。装飾として飾られていたナッツが食感も楽しませてくれる。
咀嚼しながらカップケーキを味わっていると奏斗が少し前のめり気味にセラフへ話しかけてくる。
「……美味しい?」
「んまい。」
「ふーん…。」
少し照れくさそうな表情をしながら奏斗はソファーの上で片膝を立て、そこへこめかみをつけるような形で座り直した。
セラフがカップケーキを一口、また一口と食べ進めていくのを奏斗はじっと見つめている。
言いようのない居心地の悪さにセラフは耐えかねる。
「……ねぇ、食べづらいんだけど。なんかあるなら言ってよ。」
じっとりとした目線を奏斗へ投げかけると、ハッとしたような顔になり、慌てて奏斗は佇まいを正した。
「えっ!?…あぁ、ごめんごめん!別に、セラフが食べてるとこ見たかっただけ」
ぱっと笑顔を貼り付けた奏斗、その言葉に嘘はないがきっと本当のことも言っていない。そんな気がした。
「嘘だぁ」
「嘘じゃないってば」
「食べてるとこ見るだけでそんな不安そうな顔する?」
純粋な疑問がセラフの口から出ると、奏斗は押し黙ってしまった。それから気まずそうに目を逸らしまた片膝を抱くような姿勢を取る。
一瞬、静かな空気が流れた。だが、うずくまるように顔を隠す奏斗からなにやら言葉が聞こえる。
「…なに?なんか言った?」
「や、だって、それ、俺が作ったやつだから……、反応見たかっただけ……」
本当にそれだけ、とまた俯いてしまった奏斗。髪の毛の隙間から覗けた耳は赤くなっている。
そして、味を再度確かめるように、セラフはほろ苦いカップケーキをまたひとくちかじった。
「奏斗、これ、美味しい。」
「うん、なら良かった。」
そっぽを向いてセラフの方を見ようともしない奏斗へ数cm近づいてみる。近づいた事に気づかない奏斗ではない。
「……ねぇ、こっち見てよ。」
赤い頬が黄色の髪の隙間から覗けている。
指先で髪の毛を避けると赤い頬とは対照的な青い目とセラフの視線がかち合った。
「真っ赤じゃん 」
「うるさ……」
合わさった視線をお互い逸らすことが出来ずに見つめ合う時間が数秒。
それからどちらからでもなく、また距離を詰めて唇を触れ合わせた。ふにっと柔らかい奏斗の唇の感触が自身の唇を通して伝わってきた。
だが、我に返った奏斗はセラフからすぐに離れてしまった。
「…なんで、キスした?」
「わかんない。口が勝手に動いたかも」
「やば、お前」
あえて真面目な顔で問いただした奏斗はきょとんとした顔のセラフに思わず吹き出してしまい、つられてセラフも笑い出した。
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