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昼の街。行き交う人。いつもの音。
全部、ちゃんと現実。
でも。
「……ほんとに、いたよね」
小さくつぶやく。
イヤホンを耳に入れる。
流れてきたのは、Mrs. GREEN APPLE の曲。でも――今日は少し違う。
(私、ちゃんと進んでる)
そう思えた。
スマホを取り出す。
メモアプリを開く。
「やりたいことリスト」
そうタイトルをつけて、指を動かす。
・ライブハウスの仕事
・音響について調べる
・好きなアーティストのライブに行く
・音楽の仕事をもっと知る
書きながら、少しだけ笑う。
完璧じゃない。
むしろ、すごく曖昧。
でも――(これでいい)
ポケットにスマホを戻す。
一歩、踏み出す。
次の一歩も、まだ小さいかもしれない。
でも。
あの日の音も、今日の言葉も、
全部――ちゃんと自分の中に残っている。
空を見上げると、雲がゆっくり流れていた。「……よし」誰に言うでもなく、つぶやく。
未来はまだわからない。
でももう――“わからないまま進むこと”を、怖がらなくなっていた。
放課後の街は、少しだけオレンジ色に染まり始めていた。
人の流れに混ざりながらも、美咲の足取りはどこか軽い。
(止まってないやつ..か)
さっきの言葉を、何度も頭の中で転がす。
あの人一ー
Mrs. GREEN APPLEのボーカル、大森元貴。
現実なのか、夢なのか、
いまだによくわからない。
でもーー
(どうでもいいか)
そう思えたのが、一番大きかった。
家に帰ると、リビングからテレビの音が聞こえてきた。
母が夕飯の準備をしている。
「おかえり」
「ただいま」
いつも通りのやり取り。
でも、自分の中は”いつも通り”じゃなかった。
カバンを置いて、自分の部屋へ向かう。
ドアを閉めた瞬間、ふっと力が抜けた。
「…..疲れた」
ベッドに倒れ込む。
天井を見つめながら、
今日のことを思い返す。
面接。
自分の言葉で話したこと。
そして一一あの再会。
(”怖いのにやる人は強い….か)
じわじわと、その言葉が効いてくる。
今までずっと、「怖い=ダメなこと」だと思っていた。
でも、違うのかもしれない。
怖いってことは、ちゃんと向き合ってるってこと。
「….なんか、ズルいよな」
思わず笑う。
あんなふうに言われたら、
前に進むしかなくなる。
そのとき、スマホが震えた。
びくっとして飛び起きる。
(もしかして..!)
急いで画面を見る。
ーーでも、表示されたのは知らない番号じゃない。
メールでもない。
由奈からのメッセージ。
『どうだった!?面接!!」
「なんだ….」
少しだけ拍子抜けして、でもすぐに笑う。
「面接終わった!めっちゃ緊張したけど、ちゃんと話せたと思う!」
すぐに返信が来る。
「えら!!!もうそれ合格じゃん!!」
「それは言いすぎでしょ…」
でも、その軽さがらしい。
少しだけ考えて、もう一度スマホを開く。
メモアプリの「やりたいことリスト」。
さっき書いた項目の下に、
新しく一行追加する。
・音楽の専門学校も調べる
書いたあと、少しだけ手が止まる。
(専門学校…)
今までなら、怖くて考えないようにしていた選択肢。
でも今は、“ダメかも”じゃなくて、”知ってみよう”と思えた。
「…..ほんとに、変わったな」
小さくつぶやく。
夕飯のあと、パソコンを開く。
検索画面に向かって、少しだけ深呼吸。
(”小さいこっちがいいかも”)
カタカタとキーボードを打つ。
「音楽専門学校 大阪」
検索結果が並ぶ。
知らない名前、知らない世界。
でも、不思議とーー
(怖いより、気になる)
その感覚が、ちゃんとあった。
気づけば、時間はあっという間に過ぎていた。
いくつかの学校を見て、メモを取り、気になるところに印をつける。
完璧じゃない。
むしろ、わからないことだらけ。
でも。
(ちゃんと”進んでる感じ”する)
その実感が、何より大きかった。