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「あ、そだ。いつきくん、今日飲みに行くからね?」
「え、強制なの?」
「え?! 俺も参加する!」
「ほんなら、俺だって」
二人が身を乗り出すと、俺の肩を組んでいた同期のだいきが得意げに笑った。
「バーカ。今日は同期会なの。君たち二人はお留守番」
「うわっ、出たよ、同期マウント」
「だいきくぅん、卑怯だぁ」
いっちゃんは本当に呆れた顔をしているし、りゅうせいは今にも泣き出しそうだ。大丈夫かよ……。そんな俺の懸念をよそに、だいきは俺の顔を覗き込むと、小さな声でこう言った。
「……相談があって。途中で泣いたら胸借りるよ?」
そう言って俺の胸をポンポンと叩く。これは、茶化しちゃいけないやつだな。きっと。
「……わかった。俺も前に相談乗ってもらったし。アドバイスとかできるような立場じゃないけど」
「なぁに、コソコソやってんの? じゃあいつきくん、次の日は俺とだからね!! 部下としてだといいんでしょ?」
ちょっと半ギレ気味にりゅうせいが割り込んでくる。……だから俺は金がないんだって。部下と飲みに行って金出さないわけにはいかんだろ。
「だめだよりゅうせい、いつきくんお金ないんだって。その日は家飲み! 3人でいつきくんの家で! 決定、はい解散!」
いっちゃんがその場を取り仕切って、パンッと大きな音で手を叩いた。……わかったぁ、と項垂れるりゅうせいの肩を掴んで、いっちゃんが無理やり押していく。
「……なんで俺、入ってないの?」
「……3人って言ってたね」
切なそうに呟いただいきの顔を見て、ブホッと思わず吹き出した。本当になんて顔してんだよ。こいつはいつまで経っても変わらないな。
「えーん、じゃあ今日は2人で飯も行っちゃう? 若造には到底真似できない美味しいイタリアンに連れて行くぜ? 高級ワインも飲み放題」
「マジで?! だいきやるじゃん、なんか俺得でしかないんだけど」
「いい男だろ? 俺」
「ほんと、いい男。女だったら結婚したいくらいだわ」
俺にもだいきみたいなサービス精神とお茶目さと可愛げがあったら、離婚なんて突きつけられなかったんだろうな。結婚生活3年位で何回外食に連れて行ってあげたっけ。又今度、又今度って仕事の忙しさを言い訳にして、彼女の笑顔を最後に見たのはいつだっただろう。
店に入り、落ち着いた照明の下でワインを傾ける。
「でさ、親が言うの。結婚相手は何人か見繕ってあるから、安心しろって。あげまんばっかり選んでるからって」
「あげまん? 久々に聞いた」
「あげまんを見繕うだよ? 我が親ながら女性軽視だし下品だし」
ほんとに、もう。そう言って眉を寄せるだいきの様子に、俺は思わずふふふと笑いを漏らした。