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「到着」
と言いながら、マンションのドアを開錠したのは、さっきまでタキシードを着ていた夫・俊介さん。その手つきが不慣れに見えて、【新婚】という言葉を思い浮かべた私は
「お疲れ様でしたー」
と照れ隠しのように大きめの声で言った。ウェディングドレスから、簡単なワンピースに着替え、ペタンコパンプスに履き替えた私の足取りは軽い。固めたままの髪は重い気がするけれど。
「何もないよね。どうする?ピザでも食べる?」
11時からの挙式と、ランチタイムの披露宴を終えて、夫と戻った新居には段ボールが重なっていた。
何度かここへ来て、すでに家具などは設置してあるけれど、荷物の整理はこれからだ。
「それでいいか。梓の好きなの、注文して」
「いいの?」
私が聞き直すと、彼はスマホを手に、椅子に腰かけて頷いた。私も向かい側に座って、ピザを注文する。
「定番がいい?季節限定みたいなのがいい?」
「どっちでもいい」
「じゃあ、半分にする」
「……」
「俊介さん?投稿?」
「あ…うん」
そう答えた彼は、自分のスマホを私に向けた。そこにはシンプルに【結婚しました】の文字と一枚のウェディングフォト。
そして【#妻のキャリアを応援します #共働き夫婦 #最高のパートナー】という、これまでの彼の投稿にはなかったタグ付けがあった。
―― 夫婦
―― 最高のパートナー
私たちの新しい人生を彩る言葉だ。
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設楽理沙
#不倫
#離婚