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夜の路地裏。ネオンの光が雨粒に滲んで、世界を曖昧に塗りつぶしている。
yn「……やっと見つけた」
低く、抑えた声。傘も差さずに濡れたまま立つ男に、高校の制服を着た少年——拓実は、肩を震わせた。
tk「来ないで……!もう、関係ないって言ったやろ……!」
yn「俺にとってはまだ終わってない」
黒いコートの裾を揺らしながら歩み寄る男。彼の名は奨。裏社会で名を馳せる、ある組織の幹部——マフィアだ。
拓実は半年前、路地裏で血を流して倒れていた奨を助けた。その日から始まった奇妙な交流。歳の離れたふたりの関係は、誰にも言えないまま、ひっそりと深くなっていった。
yn「どうして、逃げたの?」
tk「奨くんが、あの夜、人を撃ってるのを見たからだよ……!」
拓実の叫びが、冷たい空気を震わせた。
tk「俺が知ってる奨くんは、笑ったり、猫舌だったり、優しくて、俺のこと……守ってくれる人だったのに」
奨は黙って拓実の目を見た。その視線は、どこまでも深く、罪を背負っていた。
yn「俺の本当を、知っても好きでいてくれるなんて……思ってなかった。でも、嘘でもいいから、もう一度、傍にいてほしかった」
ゆっくりと、拓実の頬に触れる手はひどく熱かった。
yn「拓実がくれた日常が、忘れられないんだ。もう俺は、君なしじゃ……」
その言葉に、拓実の涙がぽろぽろとこぼれる。
tk「ずるい……そうやって、俺のことだけは真っ直ぐに呼ぶん」
次の瞬間、拓実は奨の胸に顔を埋めた。雨に濡れた服の冷たさも、奨の心臓の鼓動も、全部混ざっていた。
tk「もう、隠し事なんかせんといて」
yn「うん。拓実の前だけは、全部さらけ出すよ」
嘘が当たり前の世界で、彼は拓実にだけ、真実を捧げる。
路地裏に、そっとキスの音が落ちた。