tk「……もう、無理………いらない……」
ふにゃっとした声と共に、拓実はソファにもたれかかる。目元がほんのり赤くて、口元にはうっすら笑み。氷の溶ける音が静かな部屋に響いている。
kg「拓実、大丈夫?顔、赤いよ」
tk「けーごくんが飲めって言ったんやん……」
膨れたように言いながらも、グラスはほぼ空。結局、止めなかったのは自分。そんなところが、可愛くてたまらない。
景瑚はそっと彼の隣に座る。いつもは自分を一歩引いた目で見てくる拓実の、こんな崩れた表情なんて、滅多に見られるもんじゃない。
kg「酔ってんの?」
tk「んー……ちょっと……。でも、気持ちいーの……」
思わず笑ってしまう。どこか気が抜けてて、正直で、柔らかい。
tk「……けーごくんって、ずるい」
kg「え?」
ぽつりと落とされた一言に、景瑚の手が止まった。
tk「なんでも、できるし、人当たりも良くて、明るくて……。俺が、かなうわけないのに……。一緒にいると、期待しちゃう……から」
kg「……拓実」
tk「まぁ、俺なんか、見てないよな……」
そこまで言って、拓実のまぶたがゆっくり下りていく。無防備に寄りかかってきた肩の重みを、景瑚は片手で受け止めた。
kg「……ずるいのは、そっちじゃん」
小さく呟いて、景瑚はそっと拓実の髪に指を差し入れる。
こんなに素直な気持ちを、どうしてシラフのときに言ってくれなかったの。
酔った君が愛おしいのは、本当の気持ちを見せてくれるからだ。
kg「ねぇ、拓実。俺、ちゃんと見てるよ。ずっと、前から……」
返事はない。だけど、その表情が、少し緩んだ気がして、景瑚は拓実の肩を抱く腕に、ほんの少し力を込めた。
――きっと、朝になったら忘れてしまうのだろう。でも、それでもいい。
今夜だけは、この距離に甘えていたい。
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