テラーノベル
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相席屋を後にした6人は、夜の街のネオンに照らされながらブラブラと歩き始めた。
賑やかな通りの灯りと、人々のざわめきが心地よい背景になっている。
「女の子って楽しいな~」
ひまなつが肩を揺らしながら、のんびりと笑顔で呟く。
「ほんと、服も化粧もテンション上がるわ」
こさめも無邪気に同意し、らんも少し微笑んで頷いた。
いるまは周囲の雰囲気に少しリラックスしている。
みことはすちに寄り添いながら、手を握って歩く。
ふと、すちは小声で呟いた。
「……でも、やっぱりちゃんと守れないとダメだな……」
みことは顔を上げ、すちを見つめる。
「男に戻って、みことによってくる虫を駆除したい……」
すちは少し寂しげに、でも真剣な目でそう言う。
みことは小さく笑みを浮かべながらも、すちの肩に寄り添い、安心している様子を見せた。
ひまなつが楽しげに声を上げる。
「まあ、でも今はこうしてみんなで歩いてるだけでも楽しいじゃん!」
らんも頷き、こさめも笑顔で同意する。
夜の街に溶け込むように、6人は肩を寄せ合いながら、女体化の不思議な体験を楽しんだ。
賑やかな街の灯りと、微かな風に吹かれながら、穏やかで温かい時間がゆっくりと流れていった。
___
夜の街歩きを終え、6人は帰りの電車に乗ることにした。
しかし、電車は予想以上の満員で、乗車と同時にぎゅうぎゅうの状態になる。
「わ……すごい混みよう」
すちはみことの肩に手を添え、押しつぶされそうになる周囲から守ろうとする。
帰宅までの距離を考え、6人はペアごとに車両を分けることに。
すちとみこと、ひまなつとこさめ、いるまとらんがそれぞれ別の車両に乗ることになった。
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すちは扉にもたれ掛かるように立ち、みことをしっかり抱き寄せていた。
満員の電車で体が押し合う中、みことは突然、背後から不快な感触を感じてびくっとする。薄い布越しに臀部を撫でられたり揉まれる感覚に襲われる。
声にならない吐息が零れそうになるのを必死に堪え、ただすちの服の胸元を掴んだ。
「……みこちゃん?」
穏やかな声。
すちは最初、甘える仕草だと勘違いした。けれど、抱きつく腕が細かく震えていることに気づいた瞬間、その瞳に冷たい影が宿る。
みことは声を上げられない。ただ、縋るように瞳を揺らし、唇を噛む。
その姿は、どこか儚げで美しく、壊れてしまいそうだった。
次の瞬間、すちは強くみことを抱き寄せ、背後を遮るように壁となった。硬質な視線で周囲を牽制し、みことの耳元に低く囁く。
「大丈夫だよ。……俺がいるからね」
その囁きに、みことの瞳から堪えていた涙が零れ落ちた。
混雑のざわめきにかき消されそうな声で、みことがかすかに洩らす。
「……すち……」
掠れた声は震えていて、それがすちの心臓を強く打った。
「目を閉じて……次の駅で降りよう」
額をそっと重ね、視界を遮るようにしたすちは、指先でみことの手を包む。その温もりに、みことの強張った肩がわずかに解けていった。
停車を告げる車内アナウンスが流れる。
その一瞬、張り詰めた糸が切れたように、みことの肩がふっと崩れた。すちは腕に力を込め、倒れそうになる身体を強く抱き留める。
「……あと少しだよ。捕まってて」
その言葉に縋るように、みことは小さく頷いた。涙に濡れた頬は紅潮し、どこか幻想的で――耽美な儚さを帯びていた。
停車の衝撃とともに、扉が開いた。
人の流れに押されながらも、すちはみことを庇うように導き、雑踏の外へと連れ出す。
外気が頬に触れた瞬間、みことの身体から力が抜けた。
「っ……」
押し殺していた嗚咽が、堰を切ったように零れ落ちる。震える指先で胸元を掴み、みことはその場に崩れ落ちそうになる。
すちは即座に腕を回し、その細い身体を抱きとめた。
すちの胸に顔を埋め、涙を流し続けたみことの呼吸が、次第に静まっていった。
荒く乱れていた鼓動も、すちの胸越しに伝わる安定した心音に同調するかのように落ち着いていく。
「……すち」
掠れた声で名を呼ぶ。まだ震えを残した声は、消えてしまいそうに弱々しい。
すちは応えるように背を撫で、そっと髪を指に絡める。
「怖かったね」
みことはゆっくり顔を上げた。
涙に濡れた睫毛が揺れ、紅潮した頬に儚さを刻む。その瞳にはまだ不安の影が残るけれど、それ以上に強く宿っていたのは、目の前の人への深い信頼だった。
「……ありがとう」
微かに震える唇からこぼれた言葉は、涙よりも透明で、宝石のように美しかった。
すちは一瞬だけ目を細め、柔らかな微笑を浮かべる。
「俺の方こそ……頼ってくれて、ありがとう」
その言葉に、みことの頬がさらに赤く染まる。
込み上げる感情を言葉にできず、ただ再び胸へ身を委ねた。
すちはその温もりを抱き締めながら、二度と手放すまいと心に刻んだ。
やがてすちは、みことの濡れた睫毛や涙の跡を、そっと唇でなぞるように触れていった。
目元に、頬に――柔らかな口づけが一つずつ置かれるたび、涙は優しく拭われる。
最後に唇が重なったとき、みことは驚くように瞳を瞬かせた。
女体化したすちの唇は、男のときとは違う――驚くほど柔らかく、温もりを深く残す。
唇を離したすちは、穏やかに微笑む。
「ほんと、かわいすぎ」
その笑顔に導かれるように、みことの胸にもかすかな安堵の灯がともった。
みことはそっと手を伸ばし、すちの頬に触れる。
「……俺も」
小さく呟きながら、同じように――すちの目元へ、柔らかな口づけを落とした。
片方の目尻、もう片方の目尻。
そのあと、頬へ。
すちの肌に触れるたび、みことの胸はくすぐったくて、それでいて切ないほどに満ちていく。
唇を重ねられるごとに、すちは目を閉じ、受け止めるように穏やかな吐息を洩らす。
みことはそれを確かめるように、さらにもう一度頬へ口づけをした。
「……ありがとう、すち」
照れくささを隠せない声が震える。
最後にほんの一瞬だけ唇を触れ合わせ、みことは顔を離した。
互いの吐息が混じる距離で、二人は目を見合わせ、自然に笑みがこぼれた。
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