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#溺愛
桜咲かな
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桜咲かな
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#百合
第十六話 すれ違う文字
その夜も、いつもの時間にサイトを開いた。
すぐにメッセージが届く。
『今日さ、ちょっと聞いてほしい』
『なに?』
『友達と喧嘩した』
彼女は少し驚いた。
いつもなら、
相手の方から学校の話をすることはあまりない。
『大丈夫?』
『まあ』
『何があったの?』
少し間が空いた。
『別に、大したことじゃない』
『そっか』
それ以上は聞かなかった。
しばらくして、相手から別の話題が出た。
『そういえば、昨日言ってたやつ見た』
『ほんと?』
『うん』
『どうだった?』
『普通』
『え、感想それだけ?(笑)』
『いや、面白かったよ』
『絶対ちゃんと見てないでしょ』
『見たって』
『怪しい』
いつものような会話。
彼女も笑っていた。
でも、その少し後。
『まあ、どうでもいいけど』
相手からそう届いた。
彼女は画面を見つめた。
「どうでもいい」。
その言葉が、妙に引っかかった。
『……なんか今日冷たくない?』
送ってから、少し後悔した。
返事はすぐに来た。
『別に』
『そっか』
『うん』
そこで会話が止まった。
いつもなら、どちらかが何かを送る。
今日は、誰も送らない。
彼女は画面を閉じた。
少しして、また開く。
まだ何も来ていない。
理由は分からない。
ただ、さっきの言葉がずっと気になっていた。
「どうでもいい」。
もしかしたら、
自分との会話もそうなのかもしれない。
そんな考えが浮かんで、すぐに打ち消す。
今まで毎晩話してきた。
そんなはずない。
でも、文字だけでは相手の表情が見えない。
冗談なのか。
本気なのか。
怒っているのか。
それすら分からない。
しばらくして、通知が届いた。
『まだいる?』
『いるよ』
『ごめん』
『何が?』
『さっき』
彼女は少し迷ってから、
『ちょっと気になった』
と送った。
『やっぱり』
『うん』
『ごめん。今日ちょっと余裕なかった』
『友達のこと?』
『それもある』
『そっか』
少し間が空いた。
『本当は、話したくなかった』
『私と?』
『違う』
すぐに返ってきた。
『誰とも』
その言葉を見て、彼女はようやく分かった。
自分に向けられたものじゃなかった。
『……よかった』
『何が?』
『嫌われたのかと思った』
送信した瞬間、恥ずかしくなった。
けれど、取り消せない。
しばらく返事がなかった。
やがて、
『そんなわけない』
と届いた。
短い言葉だった。
でも、今度はちゃんと伝わった。
『ならよかった』
『ごめん』
『もういいよ』
『ありがとう』
少しずつ、いつもの会話に戻っていく。
今日あったくだらないこと。
最近気になっていること。
最後には、二人とも笑っていた。
『文字って難しいね』
彼女が言う。
『うん』
『顔見えないから、分からないことある』
『確かに』
『いつか会ったら、こういうのも減るのかな』
相手は少し考えて、
『どうだろう』
と返した。
『分かんないの?』
『会っても分からないことはあると思う』
その言葉に、彼女は少しだけ考えた。
確かにそうかもしれない。
顔を知ったからといって、
相手の全部が分かるわけじゃない。
むしろ、知らないことの方が多い。
『じゃあ、少しずつでいいね』
そう送る。
『うん』
『今日はもう寝る?』
『寝ようかな』
『おやすみ』
『おやすみ』
画面を閉じる。
いつもと同じ「おやすみ」。
でも、その夜は少し違った。
初めて、二人の間に小さなすれ違いが生まれた。
そして、それを二人で解いた。
たったそれだけのこと。
それでも彼女は思った。
仲良くなるって、
楽しい話をすることだけじゃないのかもしれない。
分からないことがあって。
すれ違って。
それでも、もう一度ちゃんと話したいと思えること。
それもきっと、
二人が近づいていくということだった。
コメント
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読んだよん…第16話🌙 「どうでもいい」の一言から生まれる不安とか、相手の表情が見えないもどかしさ、すごくリアルだなって思った。文字だけのやり取りって、こっちが勝手に深読みしちゃうことあるもんね。でも、最後に「ちゃんと話したい」って思える気持ちが、二人をちゃんと近づけてるんだなって……そこがすごく好きでした🥀 すれ違っても、また戻れる距離感が、この作品の優しさだと思う。