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ロスサントスの警察官である青井らだおは、仕事を終え、クタクタになって帰って来た。静かに出迎えるのは物が散乱した部屋のみ。明日も朝から仕事なので片付ける暇なんてなく、この惨状を見ないふりして眠りにつく。

ああ、忘れたい。何もかも。

そんならだおを密かに見守っている人がいる。

( そんな顔でいつまで一人で戦ってんだよ、クソ兄貴 )



「 俺ラディのこと好きだよ、愛してるよ 」

「 おっ、俺も!俺も兄貴のこと愛してる! 」

過去に犯した過ちが何度も何度も夢に出る。誰かを大切だと思う度、好きだと思う度に思い出してはトラウマが蘇る。

『 兄弟揃ってそんなこと考えないで 』

『 らだおはお兄ちゃんなんだから、貴方だけでもちゃんと生きて 』

( うるさい、うるさいうるさいうるさい…… )

夢は簡単には覚めてくれない。

普段忙しければ思い出すこともないと思って仕事ばかりしているのに、どうして疲れた体に更に追い打ちをかけるんだ。

魘されているらだおの元に一人の男が近づいてきた。

『 兄貴。たくさん泣いて、無理もして、そうしたら俺のところにおいでよ。 俺はいつだって兄貴のこと待ってるよ 』

ラディの声が聞こえた気がした。夢うつつなうちに脳が勝手に幸せを作ったんだ。

もっと、もっとその幸せが欲しい。

寝たらダメだ。この幻が俺に幸せをくれる。まだ今日のままでこの幻を見ていたい。

「 ……ラディ 」

『 なんだよ兄貴 』

「 ラディ…… 」

『 なによ 』

「 好き…… 」

『 …………俺もだよ 』

「 俺早くラディのとこ行きたいよ…… ラディ、ラディ…… 」

『 …………この街だと難しいね 』

「 ラディに……会えないなんて……もう、嫌。 辛い。 死にたい…… 消えちゃいたいな…… 」

『 …………そう。 いいと思うよ、俺は 』

死にたいだとか、消えたいだとか、 たまにでも吐き出しちゃわないと壊れてしまう。

『 兄貴は泣いてても綺麗だ 』なんてラディが言うから、本当にそうなのかもしれないと思ってしまう。一人だと、自然と涙がぽろぽろと落ちる。

俺にはいつも弟-ラディ-がついてる。 だから、前を向いて、明るく、みんなの前では笑顔で過ごせる。

「 寂しくなんかない…… 」

寂しい。

「 悲しくなんか……ない…… 」

……悲しい。

毎晩毎晩、幻覚で見えるラディに一喜一憂し、その度に本音を強がりで塗り重ねる。

『 兄貴、もうやめちゃえば? ……逃げたっていいんじゃない? 』

甘い言葉が聞こえた気がしたんだ。

「 いい、かなぁ 」

一生死なせてくれないこのバカみたいな世界に別れを。

机から何枚もの手紙を取り出す。

この手紙は自室の机の上に。




『 みんなへ

またねなんて書かないよ。

またねは、『また』がある時にしか

使わないからね。

ばいばい。ありがとう。

探さないでね。

青井らだお 』

そうして俺はこの辺鄙な部屋で一人蹲る。

常識がなんだ。

お前らの常識から外れた俺たちを引き裂いて、俺の常識を異常に変えた。

「 ラディ、『 深い青で 』ね 」

『 んっ 』

すぅ、とラディが消えた。


俺は遂に事を起こすと決めた。

この街でお世話になった人、ひとりひとりへ宛てた手紙を、それぞれの家のポストに投函する。

手元に残る手紙が少なくなれば少なくなるほど心が痛む。この街に住む人たちの優しさが沁みる。痛い。

でも、もう決めたことだから。

ラディがいないと分かりながらも続く毎日に苦しんでいた。その度にラディが沢山慰めてくれた気がしたんだ。

『 兄貴、もうやめちゃえば? ……逃げたっていいんじゃない? 』

「 いいかな、大丈夫かな…… 」

手紙を配り終えた俺は西海岸の浜辺に来た。

ザザー…ザザー…と満ち干きを繰り返す波が、大丈夫だよと言っている気がした。

「 今度は、ちゃんと俺が守ってあげるからね、ラディ 」

靴を脱ぎ、ずっと俺のトレードマークでもあった青い鬼の仮面もその隣に置く。くまちゃんや刀、その他全ての思い出も一緒に……

俺は、ラディの居る『 深い青 』を目指して進んだ……………………。







翌日、街は騒然としていた。

自宅のポストに投函されていた手紙を読んで、急いで知人に連絡をしてみれば、知人も、そのまた知人も、同じ状況にいた。

警察署や救急隊、ギャングのアジト、また、レギオンでも会議が行われていた。それは全て『 青井らだお 』についてだった。

最初はみんななにかのイタズラだと思って笑いあっていたが、浜辺にあるらだおの荷物を見つけた市長が、その写真と共に『 追悼 』の言葉をTwiXに投稿したことにより、事は運ばれた。








『 ラディ…… 俺、死んじゃった… 』

『 うん、いいんじゃない? 』

『 ラディの分まで生きるって……誓ったのに…… 』

『 十分だよ、ありがと 』

誰もいない、静かな深い青の中で俺たちはやっと心からの願いを叶えることが出来た。

さようなら、ロスサントス。

さようなら、みんな。

『 愛してるよ、ラディ 』

『 俺もだよ、兄貴 』

また、幸せな今日が始まる。

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