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第陸章「血」
2025年12月31日
22:00
暗闇に包まれた部屋の中、スマホからはアラーム音が鳴り響く。この音により布団の中にこもっている誰かを覚ました。
布団から出てきたのは白髪の男性で前髪が長く瞳は一切見えることが出来ない程の陰気さを放っていた。男性は両手を上げ大きな欠伸をすると完全なる犬歯が生えているのが見える。
白髪の男は気だるそうに腰を上げ洗面台へと向かった。顔と歯を洗いアンダーシャツにぶかぶかなズボンを着て、ロングコートを羽織り外に出た。
23:00
あれから約1時間の時間が経ち白髪の男は歩き続けた。何処に寄ることも無く、白髪の男はひたすらスマホを凝視してるが、何も欲しい情報を掴むことは出来ずひたすらスクロールを続けるだけ。
白髪の男が立ち止まると横には公園があり、白髪の男の前髪の奥に潜む瞳の中にはシーソーが映りこんだ。白髪の男はシーソーに座りこいでみた。
「僕もこんなに自由ならな。」白髪の男は初めて口を開き希望を口にした。掠れた白き儚い声でそうなれたらいいな、こうなりたいなと。それがとあるひとつの考えや戯言のように希望を捨て吐く。
その場で1時間スマホを凝視しその場を後にした。
紅黒い男が監視し後を追っているとも知らずに。
24:00
夜の帳が完全に落ちきったこの世の中に、ビルの街並みは段々とその光を失いつつあった。白髪の男はその町を空から見つめる中、高いビルの屋上に身を置き目の前を眺め口を閉じることが出来ない。
「心が虚ろいでも満たされるものは沢山ある。」
「その満たされるものは『他人の血』か?」
白髪の男は驚き、声が聞こえる方を見ると夜の暗闇から現れる黒髪に赤のメッシュが入っている黒い浴衣の男が現れる。
「お前は人間に溶け込んで暮らしている吸血鬼だな。最近、『首筋に噛まれた跡がある』、『吸血鬼に噛まれたみたいな跡がある』という相談が多く上がっていてね。お前だな、その犯人。」紅黒い男の瞳にはターゲットを狙い殺すかのように紅き瞳は白髪の男を見詰めた。
「お前は一体誰なんだ」
「俺は神日本政府所属、『血の神』 赤崎 紅血(あかさき ぐけつ)という者だ。」
「赤、、、崎。あの赤崎家の血筋か。」
「あぁ。お前は新羅家の血筋だろ。もう調べは着いている。名前は新羅 血穢(しんら ちえ)だろ。政府のデータベースで全てを調べさせてもらったよ。」
「民間人のプライバシーとかないのかよ。」
「こうなった以上黙秘権も何も無いね。」
「へっ、」血穢は自分の爪を尖らせ浮かんでいる紅血の元へと駆け寄り、顔をひっかこうとするが紅血はそれをかわし血穢の腹部に手をかざす。
血ノ極(ちのごく)…血羅一閃(けつらいっせん)
紅血から放たれた技は血穢の腹部にヒットし凄まじいスピードで放たれた血の一閃は腹を貫き意識を失い、力が入ることが出来ず落ちそうになる。
「ここはどこだ」冷たい液体に浸る血穢が目を覚ました場所は日本の街中とはかけ離れた場所であり周囲は紅に染まり地はどす黒い液体が滴り続けていた。まるで永遠に続く浅い湖のように不気味な空気がその場を包んでいた。
「ここは俺の神域の中だ。どう抗おうが俺の有利な結果に進む。お前は詰みだ。」
「くっ、がぁぁぁぁぁぉ」血穢は我武者羅に紅血の顔や首筋を自分の爪で切り刻もうとしていたが紅血は神域効果で身体を血液に変わり攻撃は全て無効化される。
「くっそぉぉぉぉぉぉ!!」
「我武者羅に攻撃しようとしても無駄だ。全ては私の体を掠める。」地を殴る血穢を紅血はただただ見下すことしか出来ない。
「これで終わりだ。」紅血の人差し指は紅い光を放ち血穢の額に標準を定め殺す準備は完全にできたが血穢はただそれを見つめることしか出来なかった。
「お前、銃の技ネタしか持ってはねぇのかよ。」
「時間稼ぎか?」
「いや、ただ聞いてるだけさ。」
「無駄だ。」
(やっぱり無駄か。なにか無いかなにか。)
「お前は今、死に至り俺の神域に存在するこの大量の血がお前を飲み込む。」
(そうか、この液体は血か、なら好都合さ。)血穢の脳内では戦略が完成した。今までにないほどの戦略が。
血穢がうつ伏せになると紅血は心無く技を繰り出した。
血ノ極 神血迅閃(しんけつじんせん)
紅血が技を放とうとすると神域全体に異変が起こった。地に浸っている血液は血穢を中心に渦を巻き、血液の量が少なくなる。段々と地の底が見えるようになり神域が解け前までいたビルの上に戻る。紅血は原因不明の神域解除に驚愕を隠せず辺りを見渡すと1人の拳が迫っていることに気がついた。凄まじい速さで向かってくる拳に紅血は反応しきれず攻撃を受け、ビルを貫通しながら遠くへ殴り飛ばされる。
「うぉぉりゃぁぁぁ!!」
重い攻撃で紅血は深い痛手を負ったが神力で再生した。もう一度殴り飛ばされた場所へ駆け抜けようと飛んでいくがその途中で血穢が現れ、再び顔面を殴りまた地面に殴り飛ばされる。2度も強く地面に強く殴り飛ばされたことにより紅血の脳内は脳震盪を起こしていた。再生には少し時間をかけてしまう。自分の身体を立ち上がらせようとするが体が上がらず踏ん張る。
すると目の前に血穢が現れ、立場は逆転したかのように見える。
「変わり果てたな。俺らの家計に伝わる『鬼眼』も持ってるって訳だ。」
血穢の姿は変わり果てて、白髪の輪郭がなく、前髪が逆立つ。赤崎、新羅家の血筋による赤眼が見える。それを紅血は『鬼眼』と呼んでいた。
「『血筋なんてどうでもいい。』って誰しもがいつかそう思うさ。俺だってどうでもいいって思ってる。俺はただ自由に生きれたらなって思うよ。生きる死ぬ関係なしにただ、天を泳ぎ、地を眺めていたいんだよ。」
「そうか。おいっしょっと。」紅血は重たい腰を上げ血穢の目の前に立ち上がり睨み合う。だが出会った時と場の雰囲気は変わり少しふんわりして気がわかる。
「お前の罪状は破棄するよ。その代わりお前は俺の弟子になれ。」
「は?」
「いや、『は?』じゃなくてお前のその力こそ俺に近いものだからこそのお願いだ。まだ罪をチャラにしたんだからそれでいいだろ。」
「実はきついんじゃなかったか?」
「いいや、まだピンピンだ。そうまでしないとお前と交渉なんかできないだろう。」
紅血は負った傷や痣を回復させ、神力は減ったが肉体を完全に再生した。
「それにしても俺の神域に存在してた血を良くも飲むっていう判断に出たな。」
「へへへ、良くやったろ!」
「さすがだ。」
「ささ、早く帰んな。あともう少しすれば神日本政府がここに駆けつけるぞ。」
「どうすればいいんだよ。」
「お前は俺が作った神道を行け。俺は俺の力でお前の分身を作るよ。」
「ほら、早く」血穢のすぐ横に神道が出現し紅血と頷き会いその場を去った。
24:30
パトカーのサイレン音が夜の帳の中を響かせながら紅血は咄嗟に血穢に似た分身を作り出しその場を本来あるべき『結果』にまとめその場を安定させた。
今回の『結果』を知るのは、わずか3名程だけだった。
第陸章『血』終わり