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数日後。
高峯理央は、眉をひそめながら廊下の掲示板を眺めていた。
「転入生……?」
放課後、クラスのざわつきの中、教室のドアが開く。
「え〜っと、転入してきた鷹取蓮でーす。よろしくー」
「っ……!」
その瞬間、理央の肩がピクリと跳ねた。
見覚えのある顔。忘れられるわけがない。
数日前、自分の首に牙を立てた――あの男。
「なんで……この、学校に……」
驚愕と困惑、そしてほんの少しの恐怖が入り混じったまま、理央は蓮の視線を避けた。
けれど。
「あれ〜、理央! 同じクラスだったんだ〜、運命じゃん」
「……っ、ちょっと、名前で呼ばないでください」
「だめ? 理央って、呼びやすいし、可愛いし」
「静かにしてください……っ」
蓮はそのまま理央の隣の席に腰を下ろし、にっこりと笑う。
「ねえ、こないだの夜、ありがとうね」
「……礼を言われる筋合いなんてありません。……首、まだ痛いんですけど」
「えー、俺そんな下手だったかな〜」
「下手とかあるんですか…!」
理央は椅子をギシッと軋ませ、顔を赤らめた。
──どうして顔が熱くなるんだ。
吸われただけだ。快楽なんて、あれは錯覚で……
「なぁ理央、放課後、ちょっとだけいい?」
「断ります」
「え〜、まだ何も言ってないじゃん〜」
「何にせよ、あなたと二人きりになる気はありません」
ツンと顔をそらす理央に、蓮は口元だけで笑うと、ふいに耳元へ唇を寄せた。
「じゃあさ、理央が“嫌じゃない”って思うまで……俺、毎日口説くね」
「っ……なっ、あなた……何考えて……っ」
⸻
放課後 ―― 学校裏手の人気のない倉庫横
蓮に連れてこられた理央は、強引に壁際へと押しつけられていた。
「やめてください、近づかないで」
「大丈夫。首、ちょっとだけ、ちょーっとだけだから」
「“ちょっとだけ”って言って……前回、どれだけ吸ったかおぼえてな……っ、ん……!」
一瞬、髪をかき上げたと思ったら、すぐさま熱のこもった舌が首筋を這った。
そして――
「んっ、やっ……! だ、め、っ……!」
思い出した。あの熱。あの震える感覚。
また、蓮の吸血が理央の思考を溶かしていく。
理央の膝が崩れる。
「や、っ……ぅ、ぁ……っ」
体中がびりびりする。頭がぼうっとして、息が上手く整わない。
蓮の指が、制服の上から腰をなぞる。
「……理央って、やっぱ腰、細すぎ」
「なっ……どこ、触って……っ」
「ちゃんと食べてる? こんだけ濃いなら、そりゃ血も美味しいよねぇ……」
囁きながら、首筋を甘く吸い続ける蓮。
目の端に滲んだ理由不明の涙がぽとりと落ちるのを、理央は気づかないふりをするしかなかった。