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太宰さんが可笑しい
初めの頃は気のせいだと思った。太宰さんが自殺自殺と云っているのは何時もの事だったから。でも可笑しい。太宰さんは、いつもの太宰なら、テンションが高くてすぐに何処かへ行って気付いた時には帰って来てる。そんな太宰さんがテンションが低く楽しそうに笑っていた顔に、暗い表情が表れる様にになった。何処かへ行って3日間。帰って来ない事もあった。
でも探偵社の皆はこう云いだした。太宰は偶にこうなるからみたいな事を。
太宰さんが帰って来ない。3日?そんな期間とは比べ物にならない程長い期間帰ってこなかった。否、帰って来ていない。僕1人でも捜しに行こうと思っていたその時、嫌にいいタイミングで大きな仕事が舞い込んできた。まるで仕組まれたみたいに-
仕事の内容はこうだ。【何度も自殺未遂を繰り返す人が居るんです!助けてください。】
脳裏には太宰さんが浮かんだ。今すぐにでも駆けつけたかった。会えると思ったから、でもその時乱歩さんが
『辞めた方が良い。それ、罠だ。』
冷静になって考えると、どう考えてもそうだ。太宰さんが居なくなってすぐにこんな依頼が来るんだから。罠じゃない方が可笑しい。
僕は受けない。依頼を受けるのは辞めた。そろそろ探偵社の皆も、もう1ヶ月近く帰ってないぞ。拐われたか?と焦った様な声を出した。太宰さんを捜す。明日には必ず見つけると決めて仕事を終え、それぞれ帰って行った。
嫌な予感がしたんだ。今行かなければならないと漠然とそう思った。午前 2時32分。動機で目眩がしそうだった。押し入れから出ると鏡花ちゃんに今行くの?と聞かれた。成程、全てお見通しだったらしい。流石だ。僕は今行くの?という問にうん。とだけ返してさっさと部屋を出た。太宰さんの家に向かう。何故かは分からないが、居るような気がしたのだ。願いは次第に確信に変わっていく。それも、悪い方向に。太宰は部屋の押し入れの中で死んでいた。…いや生きている。生きているが虫の息だ。必死に僕は声を掛ける。
「太宰さん!!太宰さん!!起きて下さい!!!!ねぇ!!」
「どうしてこんな…大量に血が…!!起きて下さいよ!!!!」
そんな僕の悲痛な声…叫び声に近い声が届いたのか、太宰の瞼がゆっくりと開く。覗いたそれは今までに見た事が無い程に黒く濁った色をしていた。
「……あ、…ぁ、…おは…、よ。…う」
太宰さんの声は酷く掠れていて、それでも生きてくれているという実感で涙が止まらなかった。正直何を言っているのか自分でも分からなかったが、きっと喜びに満ちた声だっただろう。
太宰さんの目が徐々に明るくなっていく。その事実にまた泣きそうだ。あの後急いで与謝野さんに電話し、事を説明した。与謝野さんは、『すぐに向かう。下手に太宰を動かすんじゃないよ!』と言ってくれた。そして現在、太宰さんは予想以上の重症だった為本当に後1日でも遅れたら死んでいたそう。もし、僕の勘を信用せず、翌日皆で太宰さんの家に向かっていたら……考えるだけで恐ろしい。幸いにも太宰さんは1ヶ月の治療で事なきを得た。でも太宰さんは悲しそうな表情を浮かべ、その場で寝てしまった。本当にこれで良かったのかな。でも太宰さんが死ぬなんて嫌だ。だから…これは僕の、僕たちのエゴだ
「ごめんなさい」
後日。与謝野さんから皆に太宰の重症の理由、今迄の行方不明は何故かを説明された。
曰く、重症の理由は彼の部屋に落ちていた、ナイフ、カッターハサミ、縄、ライター…等。アレで身体中に傷を作っていたそうだ。敦が見た時は顔と腕しか見れていないが、そこだけでも痛々しくて到底見ていられる様なものでは無かった。尚、本人がやったのだという。
行方不明の件は、本人も分からないそうだ。気付いたら家に居たり探偵社に居たり…と、居なくなっている自覚は無かった。今回は、何時もの様に何時の間にか家に居た。それも大怪我の状態で押し入れに居た。最初は出ようと思ったらしいが痛くて動く事等出来なかった。仕方なく、押し入れ居ると眠くなってしまい、死ぬと本能的に理解したが望んでいた事なので特に惜しむ事も無くすぐに目を閉じ、深い眠りについた。そして、気が付いたら敦くんが居て泣いていた。という事らしい。
それから3ヶ月。何の問題もなく普段の生活を送れている。
太宰さんも暗い表情を見せないようになった。良かったなぁ…