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その日の授業は、妙に静かだった。
生徒たちは教室に集められ、いつもより長く、きっちりと管理されている。
ミス・サークルは黒板の前からほとんど動かず、
ミス・サヴェルは廊下側の窓を、何度も確認していた。
リンクは違和感を覚えたが、表には出さない。
授業内容自体は、普段と変わらなかった。
――生徒たちが、教室に縛られている以外は。
同じ時刻。
寮では、教師たちが動いていた。
無言で扉を開け、
引き出しを確認し、
ベッドの下、クローゼットの奥まで調べ上げる。
リンクの部屋も例外ではない。
布に包まれた異物を見つけ、ミス・サークルは手を止めた。
「……これは」
ハイリアの盾。
獣神の弓。
古代兵装・弓。
手に取ろうとして、眉をひそめる。
「……重すぎる」
構造は複雑で、素材も見慣れない。
力を込めても、弓はしならない。
盾の重心は、人間用とは思えない位置にある。
ミス・サヴェルが静かに分析する。
「実用品ではないな。構造上、人間には扱えない」
「……レプリカ、か何かでしょうか?」
ミス・ブルーミーの言葉に、ミス・サークルは頷いた。
「だろう。危険性は低いが、校則違反だ。没収する」
教師たちはそれ以上深く考えなかった。
使えない武器は、脅威ではないと判断したのだ。
その判断が、どれほど致命的かも知らずに。
放課後。
リンクは寮の部屋に戻り、すぐに異変に気づいた。
空気が違う。
布の位置が、わずかにずれている。
クローゼットを開ける。
――空。
ベッド下を確認する。
――何もない。
リンクは、無言で立ち尽くした。
(……やられた)
盗まれたのではない。
没収だ。
ポーチに手をやる。
マスターソードは、そこにある。
それだけが、救いだった。
シーカーストーンを起動する。
『ゼルダ』
すぐに返事が来た。
《どうしました、リンク?》
『装備を没収された。 盾と弓だ』
少しの沈黙。
《……教師側が動きましたか。 ですが、あなたの剣は……「彼女」は見つかっていませんね》
『ポーチの中だ。 それと……』
リンクは視線を、机の上に置かれた鍋のフタへ向ける。
《これがある》
ゼルダは、少し間を置いて返した。
《十分です。 あなたなら、取り戻せます》
リンクは短く息を吐く。
《場所は、分かる》
教師が没収物を保管する場所は、一つしかない。
――職員用保管室。
リンクは立ち上がり、外套を整える。
武装はない。
だが、マスターソードがある。
鍋のフタがある。
シーカーストーンがある。
そして何より、
この世界のルールが、もう「正しいものではない」と知っている。
「……行ってくる」
誰に言うでもなく、そう呟いた。
その瞬間、ポーチの中で、マスターソードがはっきりと重みを主張した。
――取り戻す時だ。
奪われたのは、武器だけではない。
選択する権利そのものだったのだから。