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夜の校舎は、息を潜めていた。
月明かりだけが廊下を照らし、リンクの影を細く引き延ばす。
没収物保管室の扉を開けた瞬間、彼は理解した。
――ここには、ない。
棚は整理され、記録札だけが整然と残されている。
武装は、すでに別の場所へ移されていた。
その時。
「そこまでです、リンク」
背後から、硬質な声。
振り返ると、
ミス・サークル、ミス・タヴェル、ミス・ブルーミー。
三方向から、逃げ道を塞ぐように立っていた。
リンクは、まだ剣を抜かない。
「話をしたい」
静かな声だった。
「没収された装備を返してほしい」
「争うつもりはない」
ミス・サークルは、一瞬だけ沈黙し、
やがて無感情に告げる。
「校則違反の物品です。返却は不可能」
「……そうか」
リンクは、ゆっくりと背中に手を伸ばした。
「なら、取り戻す」
マスターソードが、月光を受けて抜かれる。
最初に踏み込んだのは、ミス・サークルだった。
巨大なコンパスが、寸分の狂いもない軌道で振り下ろされる。
殺意ではなく、処理。
リンクは一歩も下がらない。
――ジャストガード。
ただの鍋のフタで、コンパスの先端を正確に受け止める。
衝撃を刃で受けず、流す。
金属音が弾け、
サークルの腕にわずかなブレが生まれる。
「……!」
その一瞬。
リンクは間合いに踏み込み、
ラッシュ。
斬るのではない。
打つ、払う、崩す。
足元、脇腹、手首――
動きを奪うための連撃。
最後に、肩口へ一撃。
サークルの身体は後方へ吹き飛び、
壁に叩きつけられて崩れ落ちる。
意識は、完全に失われていた。
リンクは素早く周囲を確認し、
倒れたサークルの近くから古代兵装・弓を回収する。
「次は、私だ」
ミス・タヴェルは、構えからして違った。
重心が低く、
動きに無駄がない。
踏み込み。
回避。
反撃。
リンクが一歩踏み込むたび、
すでにそこにはいない。
(速い……)
剣だけでは、追いつけない。
リンクは一瞬だけ距離を取り、
シーカーストーンを掲げる。
――ビタロック+。
タヴェルの動きが、完全に停止する。
空気ごと固まったような感覚。
リンクは迷わない。
一歩で距離を詰め、
マスターソードを振るう。
刃は、必要最小限の角度で入る。
衝撃と同時に、ビタロックが解除され、
タヴェルの身体はそのまま床へ崩れ落ちた。
気絶。
リンクは息を整え、
保管ケースから獣神の弓を回収する。
「近づかせないって言ったでしょ!」
ミス・ブルーミーは、常に距離を保つ。
投擲。
後退。
再び投擲。
カッターが、月光を反射しながら飛んでくる。
リンクはかわすが、
間合いが詰まらない。
(……なら)
シーカーストーンを切り替える。
――マグネキャッチ。
空中のカッターが、急激に軌道を変え、
リンクの方へ引き寄せられる。
「えっ!?」
そのまま、力任せではない。
リンクは重さを利用し、
床へ、壁へと叩きつける。
金属音と衝撃。
バランスを崩したブルーミーは、
そのまま床に倒れ、意識を失った。
リンクは、壁際に立てかけられていた
ハイリアの盾を静かに回収する。
廊下には、再び静寂。
リンクは剣を納め、三人を見渡す。
誰も殺していない。
誰も壊していない。
「……返してもらえれば、それでよかった」
それだけ言い残し、
リンクは夜の校舎を去った。
取り戻した武装は、
彼の背で静かに重みを主張していた。
だが――
これは、まだ始まりに過ぎない。