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いまいま、あるところにそれはそれはかわいらしいひよこの姉妹が暮らしていました。妹の「ぴよちゃん」は、元気いっぱいで天真爛漫な子。
そして姉の「ぴーちゃん」は、おっとりした性格で、いつもぴよちゃんのお世話をしてくれる優しいお姉ちゃんです。
しかしある日のこと、事件は唐突に起こりました。世界を支配(?)する魔王の部下たちが、お留守番をしていたぴーちゃんをさらってしまったのです。
「大変ぴよ! お姉ちゃんがさらわれたぴよ!」
ぴよちゃんは小さな体に勇者の剣(おもちゃ)を背負い、お姉ちゃんを救うための旅に出ることを決意しました。
とはいえ、魔王の城は遠く険しい道のりです。
そこでぴよちゃんは、頼れる仲間を探すため、まずは海を渡って「四国」と呼ばれる地域へと向かいました。
ここは四国。緑豊かで、どこか穏やかな空気が流れる場所です。そこへ、一羽の黄色くて丸い生き物がトコトコと歩いてきました。
「ここが四国ぴよ? 誰かぴよの仲間になってほしいぴよ〜!」
小さな体で一生懸命に声を張り上げるぴよちゃん。その愛くるしい姿を、たまたま通りかかった四国の都道府県ヒューマンズの面々が見つけました。
「あれ……? なんか、すごいかわいい生き物がいる!」
最初に気づいたのは香川でした。小柄な体型で、純粋な目でぴよちゃんを見つめています。
「本当だ。どうしたんだろう、迷子かな?」
そう言って首を傾げたのは愛媛です。
四国のまとめ役であり、みんなの保護者枠でもある彼は、困っている存在を放っておけない質でした。
「あんな小さいのが一匹で歩いてるなんて危ねえだろ。俺が様子を見てきてやる」
高知が少し豪快に笑いながら進み出ようとします。
兄貴肌で行動派な彼は、すぐに首を突っ込みたがります。
「待て高知。むやみに近づいて驚かせるな。まずは事情を聞くのが先だ」
少しツンとした態度で、生真面目に制止に入ったのは徳島でした。
四国のブレーキ役として、彼はいつも冷静です。4人がそんなやり取りをしていると、ぴよちゃんがよちよちと彼らの足元までやってきて、つぶらなで見上げました。
「 お兄ちゃんたち、こんにちはぴよ! ぴよは勇者のぴよちゃんだぴよ! 魔王にお姉ちゃんをさらわれちゃったから、一緒に助けに行ってほしいぴよ!」
「え、魔王!? そんな危険な奴に、こんなかわいい子が……!」
香川は本気で心配そうな表情を浮かべました。人の悪意を疑わないピュアな香川は、ぴよちゃんの言葉を完全に信じています。
「勇者、ねえ……。事情は分かったよ。さすがにこんな小さい子を、危ない魔王の城へ一人で行かせるわけにはいかないからね」
愛媛が困ったように眉を下げつつ、優しく微笑みました。徳島も腕を組んで、ため息をつきます。
「…まぁ、放っておくのも寝覚めが悪いし、俺たちもついて行ってやる。」
「 そうと決まれば出発だ! 俺が先頭を歩くから、安心してついてきな!」
高知も早くもやる気満々です。こうして、勇者ぴよちゃんと四国ヒューマンズの、ちょっぴり奇妙な冒険の旅が幕を開けました。
◇
魔王の城へと続く街道を進む一行。高知が前方を歩き、愛媛と徳島がぴよちゃんを見守るように歩き、香川がぴよちゃんの隣で楽しそうに喋っています。
「ぴよちゃん、お姉ちゃんのこと大好きなんだね」
「うん! お姉ちゃんはいつも優しくて、ぴよのご飯を作ってくれるぴよ! だから絶対にぴよが助けるぴよ!」
小さな羽をパタパタとさせて意気込むぴよちゃん。その姿を見て、愛媛は胸の内で
(よし、魔王の城に着いたら、俺たちが全力でこの子を守って戦おう)
と固く決意していました。
徳島も、武器の点検をしながら静かに闘志を燃やしています。
しかし、最初の試練はすぐに訪れました。ガサガサと草むらが揺れ、一行の前に巨大なイノシシの魔物が現れたのです。
「グルルルル……!」
「うわっ! 出たぞ! ぴよちゃん、危ないから俺の後ろに隠れて――」
高知が武器を構え、ぴよちゃんをかばおうとした、その瞬間でした。
「とおーーーっ!!!ぴよ!!」
ぴよちゃんが、ものすごいスピードでトビウオのように跳躍しました。
そして、背負っていた小さなおもちゃの剣を思い切り振り下ろします。
ズドーーーン!!!!!
すさまじい衝撃音と共に、巨大なイノシシの魔物は一撃で地面に沈み、目を回して消え去ってしまいました。
あとに残されたのは、小さくパタパタと着地する、かわいらしいひよこが一羽だけ。
「ふぅ、大したことなかったぴよ。お兄ちゃんたち、大丈夫ぴよ?」
ぴよちゃんは、何事もなかったかのように振り返り、小首を傾げました。
「「「「…………え?」」」」
四国の4人は、完全にフリーズしてしまいました。
今のは見間違いでしょうか。あんなに巨大な魔物を、その辺の木を削ったようなおもちゃの剣で、たったの一撃。
「……なあ、愛媛。俺たち必要だと思うか?」
高知が呆然とした顔で、愛媛の肩を叩きました。
「いや、無い…と思う。俺たちの誰よりも威力が高い気がするんだけど……」
愛媛は引きつった笑顔を浮かべるしかありません。
徳島は驚きを隠せない様子で呟きます。
「真面目に警戒していたのが馬鹿らしくなるな。あの機動力と破壊力……本当に助けが必要なのか?」
「ぴよちゃん、すごーい! めちゃくちゃ強いんだね!」
一人だけ純粋に拍手をして喜んでいるのは香川でした。当のぴよちゃんは、褒められて嬉しそうに胸を張っています。
「えへへ、ぴよは勇者だから強いぴよ! さあ、どんどん進むぴよー!」
トコトコと短い足で再び歩き出すぴよちゃん。四国の4人は、顔を見合わせました。
「……なぁ、これ、俺たちが見守るだけで終わるんじゃねえか?」
「高知、それを言うな。……でも、確かに俺たちの仕事は、この子が迷子にならないように見守るだけかもしれない」
愛媛が苦笑いしながら言いました。
思っていたよりも遥かに強そうな勇者を連れて、一行の旅はまだまだ始まったばかりです。
※結構な頻度で修正、変更をしたりします
コメント
2件
可愛いすぎるw♡